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悪の組織、はじめました  作者: enforcer
油断大敵! 忍び寄る影!?
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油断大敵! 迫り来る影!? その11


 現れた改造人間3人と戦い、辛くも勝利を得た良。 

 だが、未だに戦いその物は終わっては居ない。

 

 基地を離れたまま戦い続けるか、戻るべきか。

 その二つから、良は一旦戻る事を選択していた。

  

 下手に戦線を拡大した場合、それは余り良い結果を生まない。

 そもそも良にとっての最優先の目的は、基地と仲間を護ることにある。


 力任せに戦い続ける事ではない。


 基地へと戻る道の途中、良は、嫌なモノを眼にしていた。

 誰がやったのか、それは問題ではない。


 見えるのは、爆発した様な痕跡と転がる骸である。

 

 爆発の理由は、なんとなく分かった。


 そもそも改造人間という技術を、外へ流出させない為の処置として、戦えなくなった改造人間はその場で破棄されているのだろう。

 

 爆発の跡だけ、其処に誰かが居たという証明でもある。

 

 また、単に転がる骸にしても、惨いの一言であった。

 首から上が無い者、何かに突き刺され穴だらけな姿。

 どれ一つとして、綺麗な死に様ではない。

 

 倒れている者が仲間ではない事は幸いだが、同時に、良は無益な戦いに意味が見いだせなかった。


『くそったれが……玩具じゃねぇんだぞ』


 走りながら、良はそう漏らす。 

 死んでしまえば、如何に改造人間と言え生き返らない。


 死に損ない程度ならば、また再生の道も残されては居る。

 が、完璧に死んで居れば、それは終わりを示していた。


    *


 後少しで、基地が見える所へ差し掛かる。

 そんな良の耳に「構えて!」と声が聞こえた。


 そんな声に、良は思わず『おいおい! 俺だって!』と声を出す。


 森を抜け出して見れば分かるが、既に基地の入り口周りには防衛線が敷かれていた。

 詰まれた遮蔽物に、武器を構える構成員達。


 とは言え、現れたのが良だからか、皆が武器を下ろす。


「篠原さん!」

「良さん。 心配しましたよ」


 構成員達に混じって、そう言うのは愛と博士である。

 よく見てみれば、辺りには戦いの跡も窺えてしまう。


 一応、布が掛けられては居るが、その下に何が在るのかは明白であった。


『……大丈夫か?』良が恐る恐る尋ねる。


 それに対して、魔法少女と博士はウンと頷いた。


「当ったり前じゃない? 私が居るんだし」

「はい、此方の被害は殆ど無いですね」


 如何にも自信満々といった愛と博士。

 二人と構成員達が無事である事は、良も安堵できる。 

 が、やはり気が重かった。


 何の為に、此処へ来た者達は死んだのだろうか。

 無論、単純に考えれば【誰かに命令された】からだと推察は出来る。


「良さん?」


 掛けられる声に、良の兜がピクリと動いた。


『……おっと、そういや、爺さんは?』


 正確な呼称は在るが、本人から【止めてくれ】と言われている。 

 良の声に、博士はチラリと辺りを窺った。


「あぁ、ソードマスターなら、少し一人で遊んでくるって……」


 博士の説明に、良は成る程と思った。

 個人が強い場合、下手に混戦するのは好ましくない。  


 ましてや、大幹部達の白兵戦によって戦う事を好む。


 銃撃戦とは違い、乱戦に成れば成る程仲間を巻き込む可能性が在る以上、下手に近場で戦うよりも、離れた方が良いとも言えた。 

 それでも、良は博士へ眼を向ける。 


『とりあえず、皆に一旦戻る様に言ってくれるか?』


 拡大しつつ在る戦線を戻すべく、頼む。


「はい! 今すぐ!」


 首領としての良に、博士は直ぐに通信機へと走った。

 そんな博士を見つつも、愛が良へ近寄る。


「どうしたんです?」

『いや、このまま戦い続けるってのも難しいだろ? だから、最悪全員で此処を離れる算段も着けとかないと』

 

 設備は惜しいが、命には変えられない。

 そんな良に、愛はフッと微笑む。


「見た目は変わっても、そういう所、変わりませんよね」

『ん? そうかな』 

「そうですよぅ」


 眼を細め、フフンと笑う愛に、良はウームと唸る。

 続けて愛が何か言う前に、博士が顔を上げていた。


「連絡つきました! 皆、一旦戻ってくるそうです!」


 報告を受けた良は、静かに頷く。

 返事が返ってきたという事は、幹部達の無事を示していた。 


『そうか、それなら良かっ……た』 


 言いながらも、良は何かを見て言葉を濁していた。

 良の目線に気付いた愛も、それを辿る。


「なんです? んん?」

 

 すると、愛にもそれが何なのかが見えた。


「え?」見たもの対して、少女は驚きを隠さない。


 二人が見つめる先では、その場に相応しくない者が居た。

 傍目には、妙に小さく見える。


『なんだ彼奴は?』「こど……も?」


 見えるそれは、突如として奇声を張り上げた。

 一見する分には、蛙に見えなくもない。

  

 体毛は無く、全身が辺りに隠れる様な色合い。

 それだけでなく、ギョロっと蛙の様な大きな眼。


 金切り声とも言えなくもないが、耳障りが良いものではなかった。


『なんだ、この野郎は!』


 良が出ようとした所で、構成員達が前に出る。


「止まれ!」 


 銃を構えて引き金に指を掛けるのを見て、良は手で止めた。


「首領?」

『いい、俺が出る』


 部下に撃たせれば、それでも事は済んでしまう。

 だが、今まで骸を見過ぎたせいか、良はこれ以上それを増やしたくはなかった。


 遮蔽物からパッと飛び出し、一目散に走ってくる怪人に向かう。


『おい! 其処で止まれ! コラ!』


 良がそう声を掛けても、小柄な怪人は止まらなかった。

 姿を変えているせいか表情は窺えない。


 ただ、必死さは伝わる。


『あぁ、くっそ!』


 仕方なく、腕付くで止めようとする。


 が、その小さな怪人は、なんと殴り合いに持ち込む訳でもなく、良に抱き付いた。

 相手の意図が見えず、良は慌ててしまう。


『なんだなんだ!? おい! 何しやが……』


 言い終えるよりも速く、小さな怪人は僅かに光ったと思った途端。

 良を巻き込んで爆発した。


 バンと大きく響く音に、誰もが驚く。


「し、篠原さん!?」「良さん!!」

 

 良が爆発に巻き込まれたのを見て、愛と博士は目を見開く。


 如何に愛が魔法少女とは言え、何かをする間もなかった


 もうもうと広がる粉塵。 それは、次第に晴れていく。

 爆発こそ大きかったが、良は其処にまだ立っていた。


「あー、びっくりしたぁ」「良さん! 大丈夫ですか!?」


 二人の声は聞こえてこそ居る。 だが、良は動けなかった。

 多少装甲は煤が着いたものの、破られては居ない。


 爆発による損傷は無いが、それ以上に良の動きを止めたのは、相手が自爆したという事実だった。


『……なんだ、今のは?』


 そう言いながら、良は身体を見る。

 破壊不能の装甲を纏っているからこそ、ビクともしない。

 加えて、再改造による強化も在る。

 

 が、地面に転がるモノを見て、兜から見える目の部分が窄まった。


 怪人が死んだからこそ、変身は解けたのだろう。

 見えるモノ。 それが人の一部であった。


『そんな……』

 

 恐る恐る、ソレを良は拾い上げる。


 手の中に在る誰かだったモノの一部を見て、良はバッと顔を上げると、森に響く程の大声で、良は吠えた。


 何かを言って居る訳ではない。


 ただ、胸に蟠る何かを吐き出そうと叫ぶ。 

 その遠吠えは、愛や博士ですら耳を塞ぎたく成るほどに切ないモノだった。


 暫くして、顔を落とす良だが、その肩は震え、膝が崩れた。


『……なんなんだ? 此奴は、何の為に此処までする?』


 怪人がわざわざ遠出をしてまで、自爆した理由が良には分からなかった。

 恐らくは何かしらの理由は在るのだろう。


 が、それを尋ねるべき者はもう居ない。

 一部は残っているが、それは言葉を喋らない。 


『ちきしょう!? 汚いぞ! 出て来て戦え!』


 何も居ない何処かへ向かって、良は吠えた。

 全く意味が無いとしても、そうせずには居られない。


『俺が気に入らないなら、姿を現せよ! 腰抜けが! 隠れてコソコソと陰湿な真似をしやがって!』


 一人喚く良を、愛と博士、構成員達が見守る。

 敢えて止めないのは、その怒りが理解出来るからだった。


『テメェは戦わない癖に! こんなガキまで引っ張り出して爆弾にするのか!?』


 敵が用いた手段。 

 それは正に【人間爆弾】と呼ぶのが正しい。


 それが何処の誰なのかは、この際問題ではない。

 銃撃戦に耐えられる様に身体を改造し、敵陣深く入り込んで爆発させる。


 下手なミサイルよりも安価で、確実な【誘導兵器】に、良は怒っていた。

 

 そんな武器を使ったで在ろう、何者か。


 自分達以外にも、組織が居るとは知っていた。

 が、余りに理不尽なやり方に、良は怒りを隠さない。


『こんな事に何の意味が在るってんだ!? くそったれが!』


 そして、更にそれを裏から操っているで在ろう何者かに向かい、良は必死に吠えていた。


 だが、如何に吠えた所で返事は無い。

 それどころか、一つマズい事態を招いている。


 ガサガサと四方八方から聞こえる音に、愛も博士も構成員達ですら気付いた。


「不味いって、あんなに叫んじゃ」


 慌てる愛に、博士が唇を噛む。


「私、良さん引っ張って来ます!」


 そう言うと、博士は愛が「ちょっと!?」と止めるのも聞かず走り出していた。

 

 生身の自分がそんな事をすれば危ないと言う事は、博士も分かっている。

 それでも、良の元へ駆け寄っていた。


 理屈ではなく、感情が身体を動かす。

 良に駆け寄ると、博士は腕を掴み、グイグイと必死に引く。


「首領! 良さん! 立ってください! 立って!」


 博士の必死な声に、良も立ち上がる。


『すまん……取り乱した』


 我を忘れて喚き散らした事を詫びる良に、博士は必死な目を向けた。


「今は、自分の事を考えてください! 悔やむのは後です!」


 掛けられる激励に、良は静かに頷いていた。


『あぁ、そうだよな』


 博士の言う通り、戦いは終わっては居ないのだ。

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