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悪の組織、はじめました  作者: enforcer
油断大敵! 忍び寄る影!?
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油断大敵! 迫り来る影!? その9


 大幹部達と同じく、打って出た良。 が、なかなか相手と出会さない。


『あれぇ……なんでだ?』


 何となく、何かが居る様な気はするのだが、姿は無い。

 長らく戦って居たせいか、良の感覚も鋭く成っていた。

 

『おいコラ! 隠れてねぇで出て来やがれ!』


 探せないのであれば、相手から出て来るよう仕向ける。

 すると、何処かで「ひぃ!」という僅かな声が聞こえた。


『うん? なんだ?』


 僅かな声では在ったが、人の声である事は分かる。

 このままでは埒が明かないと、良は音のした方へと進んだ。


 薮を掻き分け、其処から出る。

 その途端に、良に光が浴びせられた。


「だ、誰!?」


 鋭い声は、怯えを含んでいる。

 向けられる光は、懐中電灯か何かだろう。


 多少眩しくも在るが、改造人間の目ならば見えなくはない。


 そして見えたのは、若い女性であった。


『えーと、怪しいもんじゃありませんよ?』


 とりあえず、相手を落ち着かせようと良は手の平を見せた。

 自分の格好に付いては、良もよく分かっている。

 装甲に包まれた人間など、ざらには居ない。

  

 良は出来るだけ紳士的に話し掛けたが、相手の女性はより取り乱す。


「ひぃいああ!? いや! 誰かぁ!?」

『おいおいちょちょ、ホントに大丈夫だって!』


 まるで強姦魔にでも間違えられそうな良は、慌てた。

 その甲斐在ってか、座り込む女性はウンと呻く。


「あれ? もしかしたら、動画に出てた人?」


 ポンと出された声に、良はウーンと呻く。

 世界中で大量に出回っている以上、見知らぬ誰かが良の姿を見ていたとしても不思議ではない。


『はい、そうっすけど?』 


 肯定の意を示すと、女性は胸に手を当てて懐中電灯を下ろした。

 

「良かったぁ……ハイキングしてて、道に迷っちゃって、スマホの充電切れちゃうし、ホントに気が狂いそうで」


 何とも不幸な話だろう。

 が、兜のお陰で見えていないが、良の目は相手を疑っていた。


『そら、大変でしたね……』


 ハッキリ言えば、見える女性は普通ではない。

 偶々山に来て迷った、という事例は無くはないのだが、問題が在る。


 それは、女性の服装だ。


 何処で聞きかじったのかは定かではない。

 が、見れば見るほど不自然この上ないだろう。


 先ず、山に登ったと言う割には、女性の履いている靴はデザイン重視のモノであり、山を歩く登山靴とは言えない。


 更には、衣服にも問題が在る。

 

 何処のブランドが作ったのかは分からないが、不自然な程に装飾が為され、全くと言っても良いほどに汚れて居ない。

 加えて、過剰な迄に胸が強調されていた。

  

 見れば見るほど、異様な点が多過ぎる。


 髪型ヘアースタイル、装備が無い、何もかもが怪しい。


「あの、すみませんけど」

『え? はいはい、なんすか?』

「もし、宜しければ、おぶってくださいませんか? ほら、下山したいし」

『あー……』  

 

 この時点で、良は相手がただの人間ではないと悟った。

 そもそも、知らない山の中で、いきなり出逢った誰かに【背負え】という。

 もしも、女性が助けを呼んでくれとでも言えば、まだ違っただろう。


 相手を見下ろしながら、良は肩を回す。


『おい、姉さん。 三文芝居はその辺にしときな』

「えっと? どう意味ことですか?」

『どう、だ? あんたさ、ふざけてんの?』 

 

 良は近付かず、相手を指差す。


『こんな山の中で、そんなチンドン屋みたいな格好して、無駄に谷間出して、頭に羽みたいにしてさ、不自然この上ないだろう?』

 

 良の歯に衣を着せぬ意見。

 それを聴いた途端に、女性の顔が変わった。


 如何にもひ弱そうな色は消え失せ、鮫の様な顔へと変わる。

 ゆらりと立ち上がると、女は舌打ちを鳴らした。


「……っ……ニッポンの男はこういうのが好きって云うからこんな格好してあげた来たのに」


 一気に低くなった相手の声に、良は肩を竦めた。


『まぁ、好みっては人によるさ。 それと、だ』


 自分を睨む女から目を離さず、息を吸い込む。


『さっきからよ、殺気丸出しでコッチ見てんだろ? 出て来たらどうだ!』


 軽い挑発を込めて声を張り上げる。

 すると、良の左右の藪からガサガサと誰かが出て来た。


「へぇ、姉さんの色仕掛けに引っ掛からないとか、やるじゃん?」

「少しは、修羅場潜ってるんじゃないの?」


 姿を見せたのは、先ほどまで良に声を掛けていた女と似ている。

 違いと言えば、肌の色や衣服の細部だろう。

 ただ、共通して誰もが性的な部分を強調していた。

 

 三方を囲まれ、良も流石に左右へ首を少し向ける。

 

『へっ、やっぱり隠れて居やがったな? 本気出したらどうだい?』


 如何に敵とはいえ、女に手を出すというのは良の主義ではない。

 で在れば、早々に相手の変身を促す。


 それは、戦略的には何の意味も無いが、良の人となりを示していた。


「はっ! 随分余裕綽々じゃん!」


 最初に良と顔を合わせた時とは別人と成る女。

 彼女が張り上げる声に、他の二人も構えを取った。


「じゃあ、遊んであげるわ!!」


 相手の声に、良は自分の失敗を感じていた。

 何がどうであれ、見える3人は敵なのだ。

 つまり、律儀に変身を待ってやる必要などは無い。


 誰を最初にするにせよ、とにかく相手に突き進み、殴り潰せば、最低でも1人は片付けられただろう。


 が、時既に遅し。

 

 良がどうするべきか迷う内に、相手は変身を終えてしまっていた。


 アナスタシアの様な重装甲でもなく、良の様に中量級でもない。

 虎女であるカンナと似て、装甲が少ない軽量型の3人の改造人間。

 

 変身を終えるなり、3人は構えた。


『さ、遊びましょ?』

『感謝しなさいよ!』

『私たちに遊んで貰える男は居ないんだから』


 身長の差から考えると、三姉妹とも言えなくもない。

 全員が、何らかの虫を想わせる姿。


 大きい順に、ハナカマキリ、派手な羽を持つ蛾、女郎蜘蛛という見た目。


『へ! 3対1ってか!?』

 

 見える姿はともかくも、良は内心焦っていた。

 相手は自分を殺しに来ているのだが、果たして、自分にそれが出来るのだろうか、と。


 良の正面に位置する蟷螂女が、腕から生える鎌を擦り合わせる。


 如何にも、相手の隙を今か今かと窺っている様だが、良は、その場から真後ろへと跳んだ。 

 良が居た場所へと、残りの二人が一斉に襲い掛かるのが見える。

 

 腰から下を蹴り出す様に前に振り出し、空中にて後ろへと回りながらも着地する良。

 ようやく、3人を前に置いていた。


 素早く立ち上がり、腕を上げて構える。


『へ! 正面の1人が囮に成って残りがやるってかい? 随分と古い手を使うじゃないか!』


 良の声に、蟷螂と蛾が体を震わせた。


『なんですって!?』『この野郎!?』


 憤る二人を制する様に、一番小柄な蜘蛛が腕をあげた。


『姉さん達。 ちょっと、任せてちょうだい』


 そう言うと、小柄な蜘蛛はスタスタと歩き出す。

 素早く間合いを詰めるというモノではない。

 

 本当に、そのまま歩いていた。


『なんだ? 小細工しようってか!!』


 良は声を張り上げるが、小柄な蜘蛛は気にした様子は無い。

 それどころか、平然と近寄って来てしまう。


 その距離は、腕を伸ばせば届く程に近くなる。


 ギリギリ腕が届くかどうかという所で、蜘蛛は足を止めた。


『ふぅん?』


 値踏みする様な声に、良は思わず身体を硬くする。


『な、なんだよ!』


 良の声を聴いたからか、蜘蛛は腰に手を当て、フフンと笑った。 

 数ある眼が、良を見据える。


『報告は聴いたけどさぁ、あんた、ホントに女に手は出せないんだ?』 

 

 嘲る様な声に、良は思わず呻く。

 何かを良が言うよりも速く、女の前蹴りが良を襲っていた。 

 

 地面に跡を付けながら、後ろへずり下がる良。

 装甲のお陰で致命傷ではないが、思わず腹を抑える。


『テメェ!? このやろ……』『あれれ? 女の子殴るんだ?』

 

 試す様な声に、良の声は遮られてしまった。

 一番小柄な蜘蛛に続く様に、他の二人も続く。


『まさか、ホントにこんなバカが居るんだ?』

『へぇ、見上げたもんじゃない? 敵じゃなきゃ良かったのにね?』

 

 良を格下に見たのか、女達は饒舌である。

 対して、良は今までにない事態に焦っていた。


   *

 

 襲い掛かられたならば、対抗したくなる。

 自らに降りかかる火の粉ならば、払いのけたくなる。

 

 が、良にはそれが出来なかった。


 女達の速度スピードだが、御世辞にも速くはない。

 寧ろ、虎女と比べると【ノロい】とすら言いたくなる。


 だが、その手数は三倍であった。

 

 突き出される攻撃を手で払い、当たるのを避ける。

 それだけでも著しく手間が掛かる事は明白だろう。


 どうせなら、さっさと相手を捕まえたくもあるが、コレが難しい。


 何とか、腕の一つを掴もうとはするが、他が邪魔をして来る。


 曲がりなりとは言え、女達も改造人間であり生身ではない。

 彼女達も、それなりの場を潜り抜けて来たのだろう、その連携は、良も舌を巻きたくなる程である。


『あー!! この野郎!?』叫びはすれども、手が出せない。


 そんな良へ、三体同時の蹴りが襲った。

 一発自体は軽くとも、それが三発同時となれば話は違った。

 

 重い筈の良の身体は浮き上がり、そして地面を抉りながら止まった。


『あっは、超チョロいんですけど!』

『バッカじゃん!』

『くそ雑魚ナメクジってんでしょ? ニッポンでは!』


 仰向けに成った良へ浴びせられる侮蔑。

 だが、そんな声を聴きながらも、良は妙な感覚を感じていた。


『くそったれがぁ』


 悔しい、憎い、情けない。

 そんな感覚は、以前に味わった感覚と酷似している。


 以前戦った大幹部であるセイントに思い切り叩き付けられ、動けなくなった。

 その時も、良はやはり同じ様に感じる。


 弱さ故に、自分を護れない。

 

 そして、その時痛感していた。

 自分すらも護れない奴は、他人を護ることも出来る筈もないのだ、と。


 再改造され、強化された良は、下半身を海老の様に丸める。


『よっ、と!』


 そして、丸めた身体を逆に回してヒョイと立ち上がった。 

 蟷螂女姉妹を向く兜の目が、赤々と光る。


『待たせて悪いね』

 

 身体をポンポンと叩いて埃を払うのだが、そんな良の声からは、抑揚が消えていた。

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