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悪の組織、はじめました  作者: enforcer
油断大敵! 忍び寄る影!?
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油断大敵! 迫り来る影!? その8


 変身を果たした者達が居並ぶ姿は、壮観であった。

 普段とは見慣れた姿を変え、戦うべく構える。


『さぁてと……おっ始めるか!』


 良は自分と仲間を鼓舞すべく声を張り上げた。


『じゃあ』「お先!」


 誰に言われるでもなく、先ずはと飛び出すのは蜂型と虎女。

 動きの素早い二人だからこそ、下手に固まるよりも動かく方が都合が良いのだろう。


 対して、動きその物が速くない良は、どうしたものか攻め手を考えた。


『見えないんじゃあなぁ』


 下手に飛び出すと、四方八方から何をされるか分からない。

 とは言え、固まっている事も難しい。


 何せ、相手からすれば獲物が群れているのだ。

 誰から襲うか、入念に吟味が出来る。


 が、ソードマスターが一太刀で怪人を切り捨てたせいか、次がなかなか現れなかった。


 悩む良に、大型のシャコが近付く。


『首領、如何致します?』


 ワシャワシャと顔が出来る動く様は、正直怖い。

 が、漏れてくる声はアナスタシアのソレである。


『打って出るか』

『しかし……』


 同じ様に悩んでいるで在ろう蝦蛄シャコに、良の兜が向く。


『今来ている連中はたぶん、斥候か偵察って所でしょうよ。 でも、もう本隊も来ている。 下手に合流でもされたら、目も当てられないよ』


 良の考えに、シャコが頷く様に縦に一回揺れた。

 恐らく、同意を示してくれているのだろうが、何せ顔からそれは分からない。


『では、私が首領に代わり出ます』


 アナスタシアの声に、良は思わず『え』と声を漏らす。

 が、そんな良の肩に細い手が置かれた。


 手の主は博士であり、必死な目が兜を見ている。


「良さん。 此処は、アナスタシアさんに任せてあげてください」


 首領は何も言わないが、兜からウームと呻きは聞こえる。


「大丈夫ですよ。 アナスタシアさん、良さんよりも頑丈ですから」


 女性への誉め言葉として【頑丈】は果たして適当か。

 それはともかくも、良がシャコを見れば、また縦に揺れていた。


『では! 行って参ります!』


 見た目の華やかな色合いはともかくも、アナスタシアは出陣した。


 二人の大幹部を見送った良ではあるが、その足も動く。


「篠原さん?」


 掛けられる魔法少女の声に、良は首だけを横へ向けた。


『悪い、川村さんは、此処を護ってくれないか?』

「それは、構わないけど……でも」


 愛の声に、良は片手を上げてみせる。


『だってよ、女だけを戦場の真ん前に突っ込ませて、テメェは偉そうに後ろに引っ込んでるとかさ……そんなの、俺の主義じゃないんだよ』


 自分の主義を語ると、良も大幹部に続いた。


 場に残されたのは、大幹部と少女二人。


「なんか、手持ち無沙汰かなぁ」


 せっかく良の応援として駆け付けた川村愛。

 どうせなら、良に自分の格好いい所を見せ付けたい。


 が、頼まれたのは防衛という地味な役目。

 

 憮然とする少女に、剣を戻さない壮年が笑った。 


「そうでもないさ」


 軽い声に呼応する様に、三人の周りに変化が起こる。

 何も無い筈の空間でも、よくよく見れば其処は僅かに歪む。


 そんな歪みが解け、姿を現す怪人達。


「げっ、気持ち悪!」見た途端、率直な意見を漏らす愛。

 

 対して、侮蔑を掛けられた怪人は嗤っていた。

 嗤い声が辺りから響く事から、相手は相当な数が居るらしい。


『へっ……残ったのはしょぼくれた爺に小娘かよ? つまらんな』

『さっきのはまぐれ当たりさ』

『良いじゃん? どっちもまだスレてねぇみてぇだしよ?』

『サッサと爺片付けて、二人を持ち帰って遊んでやろうぜ』


 下卑た嗤い、欲望を隠さない声。

 それを聴いたからか、博士は唾を飲み込む。


 対して、同じ少女でも愛は顔を能面の様な無表情へと変えていた。


「同じ改造人間ってもさ、格とか在るよね?」


 ゆったりとした動きで、杖を回し始める愛。

 そんな少女の背中に背中を合わせる壮年も、剣をゆったりと構えた。


「まぁ、世の中ピンキリと言うだろう?」 

「じゃ、コイツ等は?」

「ふぅむ……そうさな」


 壮年が悩むと同時に、相手の怪人達は姿を消した。

 カメレオンとも似ているが、その擬態カモフラージュは更に上である。


『馬鹿が! 見えないだろうが!』

『サッサと死ね!』


 博士は見えない相手に顔を彼方此方へと慌てて振る。

 対して、魔法少女とソードマスターは動じない。


「ムン!」「マジカル、ソード!」


 掛け声はともかくも、壮年と愛はほぼ同時に動いていた。

 壮年の剣は空気を切り裂き、同じく、杖を剣へと変えた愛も倣う。 

  

 前後にて、同時に袈裟懸けに振るわれる剣。

 

「姿を隠せても、気配はバレバレでな」

「まぁ、よく見ればチャンと見えちゃうし」

 

 瞬く間に、怪人二人は真っ二つに成って地面へと落ちる。

 

『おい! どうなってんだ!?』

『こんなのが居るなんて聴いてねーぞ!?』


 慌てる怪人の声に、壮年は剣に付いた液体を振るい拭い去る。


「やはり、最上ピンではなく最低キリではなぁ」

 

 感想を述べる声に、愛もうなづいた居た。


「ホント、篠原さんと比べるとね」


 上役から言われて来ているだけの怪人は知らないのだ。 


 単に見れば二人だが、其処に居るのはただの二人ではない。

 どちらも、歴戦の猛者で在ると。


   *


 一方、大幹部であるアナスタシアもまた、藪の開けた場所にて佇んでいた。

 ただ突っ立って居る訳ではない。

 

 気配は十分に感じている。

 が、脚で劣る以上、追い回すと言うことは難しい。


『貴様も怪人だろう? 何故上の指示に従わない?』


 掛けられる声に、シャコのヒゲがピクピクと蠢く。


『ソレは、誰の事だ?』


 問い返すシャコに、周りの空気が揺らめいた。


『貴様も幹部であろう? なら、分かる筈だ。 命令と在れば、それに従うのだ、と』


 グルグルと周りを回っているで在ろう声に、シャコからは笑いが漏れていた。


『そう、その通り。 だからこそ、私は首領に従うのだ』

『とりつく島も無しか? 一人片付ければ、貴様にその立場が舞い込むぞ?』

 

 誘う様な声だが、アナスタシアは動じない。


『並みのキャリアウーマンならば、そうするだろう。 金に目が眩み、容易く人を裏切る。 が、生憎と私は、人を捨てた悪の女幹部なのだ』


 まだ何も交えて居ないにも関わらず、アナスタシアの声には勝ち誇る様な含みが在った。


『『『ならば、貴様も裏切り者と共に死ね!』』』


 シャコ女の周囲から、同時に声が掛かる。

 そして、敵が襲い掛かった。

 

 何かが当たった様に、シャコが揺れ始める。 

 姿は見えていない。 が、確実に攻撃は始まっていたのだ。

 鈍い音と共に、衝撃がシャコの殻を叩いていた。


『フハハ! 怖かろう! 見えない恐怖とは!』


 聞こえた声に、シャコの腕が動く。


『フン!』


 僅かな気合いと共に、打ち出されるパンチ。

 そのパンチの仕組みは、所謂【デコピン】と大差は無い。

  

 溜めを作り、打ち放つ。

 が、組成から構造まで違う者が行えば、その威力も違った。


 銃弾程度では倒せない筈の怪人の頭が、アナスタシアのパンチで文字通り飛ぶ。

 主を失った身体は、泳ぐ様に両手を動かすとそのまま倒れた。


『ば、馬鹿な!?』『何なんだ!?』


 驚いているで在ろう怪人に、シャコが体を向けた。


『もうお終いか、下級怪人風情が。 私は、大幹部アナスタシアで在るぞ!』


 如何に相手が見えないとしても、その相手が近付いて触れてくれるならば話は違う。

 

 アナスタシアの怒りを示す様に、その身体も色を変える。

 甲殻類が茹で上げられたらかの如く、真っ赤へと。

 

『この醜い姿を首領に晒させた罪は! 償って貰う!』


 怒声と共に、忠義を尽くすシャコは猛然と相手に腕を振るった。


   *


 同じく大幹部たる虎女。

 その姿も戦い方も、アナスタシアとは違っていた。


 相手は自らの体に当たる光を屈折させ、姿を消している。

 つまり、ほぼ透明なのだ。


 にもかかわらず、虎女はまるで相手が見えている様に攻撃を避けていた。


『何故だ!?』『どうなってる!?』 


 攻撃を仕掛けている筈の相手の焦りに、虎女の艶やかな唇が笑う。


「ほんとさ、つまんないだけど? もしかしたら、遊んでない?」


 ふと、相手の本気を疑った虎女。

 以前に良と戦った時とは全く違い緊迫感が欠けていた。


 事実、虎女には相手が実は見えている。

 見えていると言っても、視覚ではない。


 肌に当たる空気、漂う臭い、虎の毛をそよがせる風。


 それら全てが、カンナには視覚と同等以上に相手の動きを教えてくれる。


 獰猛な虎とは言うが、実の所、虎は同族よりも慎重とすら言えた。

 無駄に威嚇をする事もせず、無理に力を誇示しない。

 が、その力は最上位とも言える。


『ええい! 死ね!』

  

 業を煮やした相手の大振りな攻撃。

 それを、寸で掠める様に避けながら、虎も腕を振るった。


 当たる刹那、虎の腕からは爪の如き剣が突き出す。

 良には弾かれたソレは、容易く相手の顎の下へと突き刺さっていた。


「女の子に死ねとかさ、ほんっとにサイテーなんだけど? なんで優しく出来ないかなぁ?」


 つまらないモノでも見せられたかの如く、冷たい声を放つと敵を振り捨てる。

 そして、虎女は残った相手へと顔を向けた。


「ね? あんたもそう思うでしょ?」

 

 虎に睨まれた怪人は、自分が隠れて居る筈なのに恐怖を感じていた。

 光学迷彩クロークは機能している筈なのに、虎の頭は確実に自分を向いている。


『ひ、ひぃいいいい!?』

 

 怪人とは言え、命は惜しい。 慌てて踵を返し、逃げを打つ。

 が、怪人知らなかった。


 虎に取って、数メートルなどは距離とも呼べない。

 ましてや、向き合う事もせずに背中を見せるなどは愚の骨頂だろう。


 事実、虎女はひとっ飛びで相手にのし掛かっていた。


 倒されたからか、相手の迷彩が剥げ落ちる。

 姿を見せた相手に、虎女の頭がゆらりと揺れた。


「つーかまーえたぁ……」


 妙に楽しげにそう言うと、虎は腕を振り上げる。

 程なく、森に悲鳴が散った。

 

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