表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪の組織、はじめました  作者: enforcer
油断大敵! 忍び寄る影!?
65/112

油断大敵! 迫り来る影!? その5


 大幹部の意外な面を見た良は、ホッとした気分であった。

 

「なんか、意外っすね?」

「うん? 何がかな?」

「何て言うか、案外……こう、俗物っちゃ失礼っすけど。 もっと、堅い人だと想ってましたので」


 良の声に、壮年はフフンと鼻を鳴らす。


「それを言わせるなら、君もそうさ。 もっと色惚けだと想ってたが、案外硬い頭しているようだね」


 意趣返しとでも言いたそうな大幹部に、良は苦く笑う。


「あー、まぁ、はい」

「で? 首領、此処だけの話だが、誰が一番なんだ?」

「ちょ、勘弁してくださいよ」

「良いじゃないか、別に話しても減るもんではないだろう?」

「参ったな……」


 笑い合う首領と大幹部。

 その間には、上司と部下という線引きは無い。


「これでも昔は鳴らしててな。 だから、首領を見ていると気を揉んでしまうんだよ。 若いのに、勿体ないとね」

「いやー、そうっすけど」


 暫くの間、良は壮年と話をし、釣りを楽しむが出来た。 

 それは、戦いに疲れた良に取っては穏やかな時間と感じる。

   

 どうせなら、このままのんびりと過ごしたい。

 だが、そんな良の元へバタバタという足音。


 せっかくのゆったりした時間なのにと、良は振り向いた。

 すると、駆けてくる姿が見える。


「「首領!」」と、ほぼ同時に声を出すのは女幹部と虎女。


 二人の姿に、同じ大幹部は軽く笑っていた。


「そら、噂をすればなんとやらだな」

「そうっすね」


 二人の会話はともかくも、辿り着くなり、良は捕まった。

 右に女幹部、左に虎女。


 在る意味では両手に花だが、どちらかと言えば有名な【捕まった宇宙人】の様でもある。


「な、なんすか?」


 焦る良に対して、二人もまた、真剣名顔である。


「大変なんです!」「早く!」


 要件が何なのかを話す事もなく、二人は良を連れ去ってしまう。 

 

「すんませーん! また後で~……」


 長く伸びる良の声に、壮年はやれやれと首を横へと振った。


   * 


 あっという間に地下基地へと連れ戻された良。

 改造人間二人掛かりでは良と反抗が出来ない。

 

 とは言え、何か用があるからこそ、良は連れ戻されたのだ。

 

「ちょちょ、大変って言ってたけど、なんか在ったのか?」


 基地に漂う雰囲気から、流石の良も何かを感じ取る。

 首領として尋ねると、博士が前に出た。


「首領、先ずは此方をご覧ください」


 博士の声に合わせて、天井からいつもの大型画面が降りてくる。

 程なく、画面が灯った。


 映し出されるのは世界地図である。

 とは言え、地図を見せられても良には何がなにやらであった。


「えーと? もしかしたら、また、どっかで何か起こったのかい?」


 首領の問いに、博士が手元のタブレットを弄る。

 すると、それは地図にも反映された。


 地図の彼方此方に、ポツポツと点が浮かぶ。

 それらは、その国の首都を示しては居ない。


 よくよく見れば、小さな点が蠢くのも見えるが、良にしてみればそれだけの事であった。


「んーと? なんか、動いてるなぁ」

 

 とりあえずはと、見たまま告げる。

 それに対して、博士は浮かない顔であった。


「私が御説明を」そう切り出すのは、アナスタシアである。  


 画面の前に立ち、指先で地図の大きい点を指し示す。


「これ等は、私達以外の組織の基地の位置です」

「えぇ? もしかしたら悪の組織ってこんなに居るの? 暇な奴等だな」


 思わず、良は反応してしまったが、ソレも無理は無い。

 地図上で確認出来るだけでも、十以上の点が存在する。


 つまりは、それだけの数の組織が地球には在ると言うことを示していた。

 

「首領、真面目に願います」


 普段以上に真剣なアナスタシアに、良も渋々と頷いた。


「で、何が大変なんだ?」


 問われた女幹部は、今度は地図上に蠢く小さな点を示した。


「此方の点ですが、今動いていますね?」

「あぁ、それで?」

「本来、我々以外にも同じ様な者達が居ることは確認されていました」


 アナスタシアは言葉を一旦止めると、良を見た。


「ですが、数多の組織は互いに干渉をせず、関わりを持たないと言うのが、今までの暗黙の了解だったのです」


 説明を受けた良は、もう一度地図へも目を向けた。

 女幹部の言葉通りならば、何処の組織も勝手に活動し、他の組織は関わらないという事だろう。

 が、見えているモノは違う。


「だったら、変じゃないか? まるで全員が示し合わせたみたいに動き出した様な気がするぜ?」


 良が意見を呈すると、アナスタシアは頷く。


「そうです、首領。 其処が大変なんですよ。 他の組織がどうして動き出したのか、私達には分からないんです。 そのわけが」


 世界中で一斉に動き出した組織。

 それを訝しむ女幹部に、良もまた、目を細めていた。

 

「……まさか」


 ぼそりと出された良の声に、一斉に目が向く。


「首領?」

「いや、俺が寝てた時さ、暴れてたって言ったろ?」 


 良の不安げな声に、女幹部は「えぇ」と頷く。


「あー、何て言うかさ、俺……夢にも見てたんだよ」

「どんな夢?」


 虎女に問われた良は、鼻を唸らせながら思い起こす。


「こう、変な話なんだけどさ。 夢なのに、夢じゃないって言うか。 それで、夢の中でさ、俺は変なんに捕まっててさ。 で……」


 思わず口ごもる良に、場に居る者の目が向けられる。


「で? なに?」


 続きを促す虎女に、良は渋々ながらも口を開いた。


「それが、変な奴が出て来てさ、俺から何もかも奪い取ってやる……とか言うから、ちょっとムカついてぶん殴ってやろうかと」

 

 恥ずかしいからか、少し小声の良。  

 それでも、聞こえた博士と虎女は、何とも言えない顔を覗かせる。


「ま、まぁ、夢ですよね? ね、アナスタシアさん?」

 

 場を和ませたいのか、博士は話を振る。

 虎女も目を向けるが、当の女幹部は渋い顔をしていた。


「どうしたの? なんか苦いモノでも食べた?」


 茶化す虎女に、アナスタシアは首を横へ振る。


「そんな事はしていない。 だが、こんなに話を一度だけ聞いたことがある」

  

 在る意味、古株の彼女だからこそ知っている事もあるのだろう。 

 

「組織司るのは首領。 更に、その裏には誰かが居るらしい、と」

「誰よ? その裏ってのは?」


 カンナが問うが、応えは出ない。


「だから言ってるだろう? 私も知らない。 以前の首領の裏にも、誰かが居たのかも知れないんだ」


 聞こえた話を、良は吟味する。


 以前の首領とは殆ど面識も無く、言葉も少ししか交わしていない。

 具体的に言えば、その姿すら見たこともなかった。


 だが、だからこそ【裏の何か】に取っては、都合が良いとも思える。

 

 出される指示を疑わず、自身の考えを持たず、ただ実行するのみ。

 しかしながら、そんな操り人形と良は違った。


 意にそぐわないのであれば異を呈し、相手が気に入らなければ打ち倒す。


 それは、支配者にとってみれば鬱陶しい存在と言えた。


「じゃ、俺はもしかしたら、その誰かさんに喧嘩売っちゃったかな」


 事を起こしたとは言え、良にその自覚はなかった。

 そもそも、夢の中で出会って話しただけである。


 誰もが押し黙る中。 博士が何かに気付いた。


「あ! 良さん、地図を!」


 唐突に聞こえた声に、皆が一様に反応して地図を見る。

 すると、地図上の点に動きが在った。


 今までは、基地の周りで小さな点がちょこっと動いていただけだった。

 その筈だったが、今違う。


 大きな点から離れた小さな点は、一斉に動き出していた。


「お? なんだなんだ?」


 慌てる良の横で、博士がタブレットを弄る。

 弄るのだが、細い指は直ぐに動きを止めてしまう。


 それだけでなく、博士は顔を青くしていた。


「そんな……うそ」


 要を得ない博士の声に、アナスタシアがバッと片腕を伸ばした。


「どうした! 明確に説明しろ!」


 緊張感故か、アナスタシアはいつもより女幹部らしい。

 そんな声に反応したからか、博士はゆっくりと頭を上げた。


「間違いじゃないなら、小さな点は全て此方へ向かっているかと」


 脅えたのか、博士の声は震えていた。


 報告を受けた良は、地図へと目を向ける。


「おいおい、冗談だろ?」


 組織一の頭脳の声に嘘は無いらしい。

 確実に、小さな点が少しずつだが動き出していた。


 その様は、首領である良だけではなく、アナスタシアとカンナにも見えている。


「馬鹿な、どうして?」


 狼狽を隠せないアナスタシアとは反対に、虎女は不敵な笑みを浮かべていた。


「はっはぁ……要するに、言うことを聞かないあたしらが邪魔ってんでしょ?」

「どういう意味だ?」


 納得出来ないという女幹部に、虎女は片目を窄めて見せた。


「どういうって? アナスタシア、あんただってこの前張り切っちゃったじゃない? まぁ、あたしもだけどね」 


 虎女は具体的には言わないが、誰もがわかっている。


 本来ならば、悪の組織は人道的な立場とはいえない集団だろう。

 寧ろ、本質的には人に仇なすモノといえる。


 その筈が、良が率いる組織は本来の役目を放棄し、全く逆の事をしでかしていた。


 然も、それは全世界へと動画として広まってしまっている。

 今更ながらに、弁解出来る立場ではない。


「くっそう!? このままでは!? 首領! しゅ……」


 先ずはと、アナスタシアは良へ指示を仰ごうとした。

 が、良の顔を見た途端に言葉を止めてしまう。 


「……きたねぇ真似しやがるぜ。 影に隠れてるだけあってコソコソと、自分は安全にってか? 随分とチンケな野郎だぜ」

 

 口元は笑って居るが、その目には怒りが窺える。

 凡そ普通の生活を送ったのでは有り得ない表情。


 女幹部は勿論、虎女も博士ですら、良の顔に見入っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ