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悪の組織、はじめました  作者: enforcer
驚愕! 地球救済作戦!
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驚愕! 地球救済作戦! その23


 突如として現れた巨人。

 それは、船に乗っている良にも見えていた。


 以前、セイントから【本気に成れない】と云われたが、此処に来てようやく良も言葉の真意を悟る。


『はっ……そりゃあ本気に成れねぇ訳だな』


 見える巨人は、マトモに喧嘩にも成りそう相手ではない。

 無理に戦おうとすれば、踏み潰されて終わり兼ねなかった。


 そして、良が向き合う船員達もまた、巨人の参上に目を引かれている。

 それは、絶好の機会であった。


 掛け声を押し殺し、相手の懐へ飛び込み、そのまま船外へ投げ捨てる。

 

 相手を殺さず、戦力を奪うには、在る意味海の上は絶好の場と言えた。

 掴んでは放り、また次へ。


 が、いつまでも相手も呆けては居てくれない。


「くそ! 躊躇うな、光線銃レーザー熱線銃ビームも使え!」


 そんな声を合図に、船員達は通常の火器を使うのを止め、奥の手を出す。


『あぁ!? レーザーにビームだぁ!?』


 驚く良へ、船員達も果敢に立ち向かう。

 彼等にしても、自らの果たすべき目的の為に必死であった。


 本来ならば、巨大な怪獣用の武器が躊躇い無く使用される。

 

 放たれる光線に熱線、それを、良は腕で受け止めた。

 凄まじい熱気に、良は呻く。


『ぬぅ!?』

「良いぞ! 利いてるぞ!」


 武器を放つ側の高揚した声に、良は頭を上げた。


『はっ……こんなモン、彼奴が出すのに比べりゃ屁でもねぇぜ』


 良の声に嘘は無い。

 以前にセイントから浴びせられた怪光線に比べれば、小火器が放つ熱は耐えられた。

 無論、相手側の出力の違いも在るだろう。

 同時に、良の体は強化されていた。


   *


 船員と改造人間が戦う間にも、事態は止まらない。 

 船の艦橋では、セイントのかつての配下達が巨人を睨む。

 

「このままでは船が進みません! どうします!?」 


 その報告に、配下は舌打ちを漏らす。


「構わん! 奴に向かって全砲門を向けろ!」


 そういう声には【昨日の友は今日の敵だ】と言う含みが在った。

 この作戦に荷担した者達にしても、もはや帰る道は捨てている。


「全砲門、向けます!」


 復唱と同時に、操作を行う火器管制の声。

 操作を受けた船の全ての武器は、前方の巨人を向いた。

 

 武器が向けられる最中、巨人の目は艦橋の配下と目が合う。

 大きさこそ比べるのも馬鹿らしいが、互いに互いを見ていた。


 かつては、背中を護り合い、共に戦った。

 しかしながら、それは既に過ぎ去った過去である。


「一斉射撃! 撃てぇ!!」


 そんな号令を合図に、船の火器が一斉に火を噴いた。


   *


 小さいモノは機関銃、迎撃用のバルカン砲。 

 大きいモノは速射砲にミサイル、そして大口径の砲。


 それら全てが、巨人へと火を吹き出す。


 当たり前だが、多少精度が低い火器ですら、動こうとしない的には当たる。

 そして、その的が大きければ尚更だろう。


『グァアア!?』


 銃撃や砲撃を避ける事も出来ない巨人からは、苦痛を訴える様な叫びが漏れた。


 それでも、巨人は船を止めたまま動かない。


 少し前までは、配下の【地球救済作戦】に乗っかった巨人。

 だが、今はその約束を捨て、耐えていた。


 良と出会い、何度か逢う内に、いつしか巨人は思い出していた。

 ずっと昔、自らも人を護ろうとしていた時の気持ちを。


 無論、地球上の人間全てが善良である等とは巨人は信じて居ない。


 それでも船を止めるのは、良を含めた者達の為である。


 如何なる状況に晒されても、なお立ち上がり前へ進む。

 その意志は、生き物が進化しようとする根元でもある。


 それを護るのと同時に、かつての仲間への贖罪の意味を込めて、巨人は敢えて避ける事もしなかった。


   *


 近場でド派手な花火大会が始まってしまった様な爆音。

 それは、良にも聞こえている。


 チラリと目をやれば、音の正体は見えた。


 船を止めた巨人は、今やその船が吐き出す全ての武器を受けている。

 その火力は恐らく町一つぐらいならば灰燼に帰すだろう。


 ソレほどの攻撃を受けても、動こうとしない巨人。

 馬鹿らしい様を見て、良は兜の中で舌打ちを漏らしていた。


『バッカ野郎が……』

 

 本心からセイントを馬鹿にしては居ない。

 それでも良は、見える巨人の愚直さを痛感していた。


 本来ならば、人を裏切ってソレを滅ぼす側に回ろうとした筈の者が、後から人を護ろうとする。


 単純に言えば掌返しとも取れてしまう。

 逆に言えば、あの巨人は寧ろ義理堅さを全身で現していた。


『うぉああ!』

 

 良もまた、防御を捨てて前進する。

 放たれる光線や熱線は、同然の様に身体を焼いた。


 が、生身では灰に成りかねない武器を浴びても、良は耐えられた。

 身体を覆う装甲は、辛くも相手の攻撃を防いでくれる。


 防御を捨ててからの良の動きは速い。


「うわ! やめろぉあああ!!」「だぁあああ!?」 


 良が船員を放り投げる度に、声が上がる。

 その途中、救命ボート成りが有ればそれも外へと捨てた。


 本来なら、相手の生死など考えるのは無意味であろう。

 が、良もまた、見える巨人と同じく義理堅い性格をしている。


『たくよう、面倒くせぇ事ったらありゃあしねぇ』


 そう悪態を漏らすものの、戦い方は変えなかった。


   *

  

 一方、良が目指す艦橋でも、激しさは変わらない。

 あくまでも動こうとしない巨人へと、容赦の無い射撃が続く。


「あくまでも人の味方をするのか!? 何故だ!? それに何の意味が在った!?」


 撃たれる巨人の目を見ながら、かつての仲間はそう叫ぶ。


「あんな軽薄な連中を助けて何に成る!? どいつもこいつも自分の事しか考えてない! そんな馬鹿共の為に仲間は戦い死んでいった!」

 

 声を出しながら、配下は窓際へと寄る。

 それは、ギリギリまで巨人へと近付く為だった。


「何故だ!? あんただってそれを知ってるから作戦に参加してくれたんだろ!? それなのに!! 何故今に成ってそんな真似をするんだ!?」


 叫ぶ元地球防衛隊。

 その声には、何処か【もうやめろ】という含みが見え隠れする。


 彼にとって、今回の作戦は仲間同士で戦う為に決行した訳ではない。

 今まで無為に散った同僚へと報いる為に人と戦う事を決めていたのだ。


「……残弾切れです!」


 火器管制官の報告と共に、船からの攻撃が止む。

 撃たれるのを耐えていた巨人が、顔をゆったりと上げた。


 窓を介しても、目が向けられているのは何となく伝わる。

 お互いに、思う所は在るのだろうが、言葉は交わされなかった。


 巨人を見据える配下は、悠々と腕時計を確認する。

 スッと顔が上がるが、其処には透き通る様な笑みが在った。


「残念だったな。 頑張ってる所悪いが、そろそろ時間だろう?」


 何処か残念そうな声と共に、巨人が『ヴッ!?』と呻く。


 巨人の目は三つ在るのだが、額の位置に在る目が明滅し始めていた。

 船を抱えている筈の巨大な腕からも、力が抜けたように抑えが外れ掛ける。


「長いこと一緒だったんだ。 せめて引導位はやるさ」


 そう言うと、配下は片手を上げる。


「船首を開け! 殺獣光線砲、用意! 奴の額を狙え!」


 下される命令に、艦橋内の隊員の内何人かが振り向く。

 

「本気ですか……いや、そんな」


 命令に従えないのか、僅かな反目を示す火器管制官。

 其処へ、配下が近寄った。


 腰から拳銃を引き抜くと、従わない者へと平然と向ける。


「頼むよ、撃たせないでくれ」


 銃口を頭に突き付けながら、頼む声。

 脅されたからか、その顔には恐怖が浮かぶ。


「も、もう直ぐ、彼奴は消えて居なくなります! ですから!」

「……そうか?」


 納得して居ないのか、配下は拳銃の激鉄を起こした。

 その光景は、同然巨人にも見えている。

 

 やめろ言わんばかりに、頭が左右へ揺れていた。

 その揺れに、配下も気付く。


「ほう? だったら放したらどうだ? それとも、偽善者には無理か?」


 かつての仲間を脅す声に、巨人は何も出来ないのかと俯く。

 そんな中、艦橋のドアが外からこじ開けられた。 


『そうも行かねーんだなぁ……あっちも都合ってもんがあんのさ』


 ドアを蹴破り、中へのそりと入ってくるのは良である。 


 響く声に、巨人の頭が上がるが、巨人の身体は度重なった攻撃によろめいてしてしまう。

 急に抑えを外された船は、大きく揺れた。


 並みの人間には耐えられない揺れであっても、良にとっては好都合と言える。 

 素早く駆け寄り、見える拳銃を毟り取っていた。


『ドリャ!!』「ぐあ!?」


 突き飛ばされて倒れる配下を見ながら、良は拳銃を力で捻る。

 ただの置物と化したソレを放った。


 鉄の塊が、硬い床に当たってガツンと鳴る。


『さぁてと? お舟止めてくれるかな?』


 余裕を演じる良ではあるが、実のところ全身に焼け跡が酷い。

 それでも敢えて余裕ぶるのは、相手の降伏を願っているからだ。


『嫌なら良いんだぜ? 俺はちょっくらエンジン潰して来てやるからよ?』


 良の声に、機関主はもはやこれまでとレバーを下げる。

 推進力を失った船は、揺れが収まっていた。

 

 順調に進む筈の計画は、遂には頓挫してしまう。


 しかしながら、相手も死ぬ気であれば話は違った。

 痛めた片手を抑えながらも、その眼は力を失っては居ない。

 それだけでなく、低く抑えた笑いが漏れていた。


「……今まで、多くの侵略者の計画を潰したが、潰されるというのは、こういう気分なのか」

『負け惜しみなんか要らねーぜ?』


 良の声に、セイントの配下は片手を上げた。

 その手には、筒型の何かが握られている。


『なんだそりゃ? 往生際の悪い奴だな』

「コレか? もしもの時の、作戦プランCだよ」


 そう言うと、配下は親指に力を込めた。

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