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悪の組織、はじめました  作者: enforcer
驚愕! 地球救済作戦!
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驚愕! 地球救済作戦! その18


 今や、世界中の街という街で大混乱が起こっていた。


 事が起こるまで、自分へ被害が及ぶまで、結局の所人は信じようとはしなかった結果でもある。

 そして、いざその時が来ても、心構えさえ出来てないのだから対処も何も無い。


 極一部の者はそれなりに用意を怠らなかったが、それは、世界中から見れば微々たる数だろう。


 寧ろ中には、この騒ぎを好機チャンスとして活用してすら居た。


 何せ止める者も居ないのだ。

 平然と鍵を叩き潰し、ガラスを破り、機械を壊し、略奪をする。


 それを止めようと軍を出す国も在れば、責任逃れの為に何しない国も在る。

 

 阿鼻叫喚を撮影しようとする者も居たが、襲われては逃げていく。


   *


 そして、在る国の一つでは、愛と博士が現場に駆け付けていた。


「あー、もう!? こんな時に篠原さん何処行ってるの!?」

「わ、わかりません。 何か、機材が在れば」


 二人は良を想うが、そう簡単には来られない事情が在る。

 が、そんは事情などは化け物が考慮する必要がない。


 化け物は、人間が他の生き物の事情を考慮しない様に、次々に人々を狙っていた。

 勿論、抜け目ない怪物は美味そうな小娘二人にも目を付けている。


 相手を弱いと決め付け、ジリジリと敢えてゆっくりと近付く。

 それは、あたかも相手の反応を楽しんでいる節すら在った。


「えい、こうなったら」


 仕方なしに、愛は自前のバッグから杖を取り出す。

 衆人環視の目もあるが、今更そんな事を考慮している場合でもない。


「へ……」


 いざ、愛が変身しようとする時、近場の怪物を何かがなぎ払った。


 目を剥く博士と愛。

 二人の窮地へ駆け付けたのは、バイクに跨がる青年と、後から追い付いた虎女である。


 化け物を払った二人は、互いに睨み付け合っていた。


「久し振りだな? ブレードタイガー」

「あんたもしつこいね、ミツバチちゃん? そういうのは嫌われるよ?」


 一触即発の空気を見せる虎女と青年だが、空気が変わる。

 フイと青年が愛を見た。


「この前は、どうも。 そう言えば、彼奴は? 居ないの?」


 妙に馴れ馴れしい声に、愛は博士を背中へと庇った。


「助けてくれるのは、まぁ、ありがたいけど」


 訝しむ声に、青年は苦く笑った。


「ま、一応、正義の味方だからな。 女の子は護らないとね」 


 そう言うと、青年はバイクのエンジンを唸らせる。


「ほら、とっとと逃げなよ! 此処は危ないぜ!!」


 聞こえた声に、博士の顔が曇った。


「貴方は……」


 思わず、博士は思い出す。

 その青年は、かつて自分が改造手術を担った事を忘れてはいない。


 対して、博士を見ていない青年の口からは、フフンと笑いが漏れていた。


「とにかく! 邪魔はするなよ!! 見せ場なんだからな!」


 そんな声と共に、バイクのアクセルが捻られる。

 前輪を持ち上げる程の力で、金属の塊が走り出していた。


 青年の声に、愛と虎女が地団駄を踏む。


「たく! 何を偉そうに!?」

「なんなの!? この前首領に負けたでしょうが!」 


 愛と虎女は叫ぶが、それは届かない程に青年のマシンは速かった。


「お、お二人とも! そんな事より!」


 博士の焦った声に、愛と虎女も唸るが怒りを胸にしまい込む。


「確かに……」「……今はだけは、ね」


 お互いに頷き合う魔法少女と虎女。

 そして、博士は何処かに居るであろう良を思う。


 すると、三人の前を何かが通る。

 一瞬だけ足を止めるが『失礼』と直ぐに去ってしまう。


「ん? えぁ!?」「ちょっと!?」「良さん!?」

 

 一瞬だが、三人は同じモノを見ていた。


   *


 皆が案ずる篠原良だが、その彼は空の上の人である。


 無論、故人という比喩ではない。


 修復と再改造が終わったからか良は小部屋から客室へと通されていた。

 差ほど広くもない機内だが、人が少なければ広く感じる。

 

 機内のど真ん中には、わざわざ合い向かいの応接間。

 その質は決して簡素ではなく、趣すら在る。


 そんな場違いとも言える席にて、良は名も知らぬ誰かと目線を交わす。


「えーと、とりあえず色々、ありがとうございます」

『前にも云ったが、礼には及ばないよ』


 答えるのは、良が知らない女性だった。

 実際には知らない筈なのに、ヤケに懐かしい。


「あの、失礼ですが、何処かで会いましたっけ? もし、忘れたってんなら、俺のせいですから」

『覚えてないのも無理はないよ』


 女は残念そうに云いながらも、良に淹れ立ての紅茶を差し出した。


『どうぞ』

「あ、ども」


 紅茶の礼を贈る良だが、またしても違和感が在った。

 以前にも、全く同じ事をした様な錯覚だけがある。

 が、それが何なのか分からない以上、説明は出来ない。


「えーと、でも、どうしてなんです?」


 良の問いに、女性は首を傾げた。


『何がだい?』

「何度も尋ねてすみません。 でも、どうしてかがわからなくて」


 良が尋ねると、女性は何とも言えない顔を覗かせた。

 懐かしむ様でもあり、同時に寂しげな笑顔。


『同じ事を云うのは好きではない。 が、今度だけはそれを気にせず伝えよう。 私は、君に返そうとも返しきれない恩があるんだ』

「えぇ? そうっ、すかね? あー……」


 何とか女性の事を想い出そうとする良。

 だが、頭の何処を捻っても答えは出ない。


 まるで其処だけがすっぽ抜けた様に、何も思い出せなかった。


「すんません、なんか、思い出せずに」


 詫びる良に、女性は首を横へと振る。


『詫びる必要も無いよ。 云ったろう? 私はただ、君を恩返しをしたいだけなんだ』

「いや、でも」

『大丈夫、私は君を……篠原良を憶えて居るよ』


 相手からそう言われると、良は何故だな胸がキュウッと苦しくなった。

 嫌な苦しさではない。 ただ、物悲しさだけが募る。


「えーと……」

『ところで、君を戻すのにもう暫く掛かる。 ゆったりとしていてくれ』


 良が相手の名を問おうとした途端に、そう言われてしまった。

 ゆったりとしてくれと云われても、良にはゆっくり出来ない事情も在る。


「お言葉は有り難いんですけども、あんまり時間が無くて」

『大丈夫だ』

「はい?」

『君の為の露払いは、既に送ってある』


 紅茶を優雅に飲む女に、良は首を傾げていた。


   * 


 各地にて、化け物が現れては人を襲い出す。

 無論、中には抵抗を見せる者も居たが、全員がそうではない。

 特に闘うべき者が居ない場所などは悲惨の限りである。


「ひぃいいい!? だ、誰かぁ!?」 


 荒れた街の中を、死に物狂いで逃げ走る。

 そんな少年を狩る事を楽しむ様に化け物が追う。


 それは、人と獣の立場が逆転した姿とも見えた。


 醜悪な声を上げ、化け物がいよいよ少年を仕留めに掛かる。 

 その刹那、何者かが邪魔に入っていた。


 左手刀に右肘打ち、上段回し蹴りに回転を生かして中段横蹴り。


 瞬く間に、四匹を打ち倒してしまう。


 倒れた化け物の頭を踏み潰しつつ、何者が立ち上がる。

 その姿は、良の変身したモノに酷似していた。


「あ、あんた、誰?」

 

 絞り出される声に、正体不明の者は片手を上げて構える。


『故あって、我が名も姿も現す事、叶わず。 我が身の恥故に、ソレを晒す事あたわず。 されど、友の姿を借り、義によってこの場へと馳せ参じた。 している!!』 


 妙に時代劇掛かったそんな声が、世界中でほぼ同時に発せられた。


 発せられた声もまた、良のソレに非常に似ている。


 人々の窮地に駆け付けたで在ろう、謎の怪人。

 その動きは、まるで統率された機械で在る様に無駄が無い。


 怪物を千切っては、叩き伏せる。

 背中へ組み付かれても片手で掴み投げ捨てる。


 正に、八面六臂の活躍を見せる怪人だが、一番の特徴は、その数だ。


 何処からともなく現れ、その数は凄まじい。


 いったい何処からそれだけの軍団が湧いてきたのか、誰も知る由もない。


 ただ言えるのは、何者かが前もって時間をたっぷりと掛けて用意していたという事だろう。


 ともかくも、人々は目の当たりにする。

 全員が逃げ出す中、敢えてその流れに逆らい、怪物へと向かう者の姿を。


『掛かって来い化け物共! 相手に成ってやる!』

  

 謎の怪人は、勇ましく叫ぶと構えを取った。

 頼もしい姿に、歓声が飛ぶ。

 

 そして、その元と成った良は、呑気に空の上で在った。


   *


 暫く後、良の合い向かいに座る女がスッと立ち上がる。

 薄い布で創られたゆったりとしたドレスが、フワリと揺れた。


『お茶の最中で悪いが、そろそろだよ』

「え? あ、はい!」


 言葉を掛けられた良は、一気にカップの中身を身体へ収める。   


 丁重にカップをソーサーへと戻すと、良も立ち上がった。


「すみませ……いや、ありがとうございます」

 

 そう言いながら、良は女へ手を差し出した。

 一瞬、女は良の行動に目を丸くするが、直ぐに手を取る。


「今は、これぐらいしか出来ないんすけど」


 如何にもすまないという良の態度に、女は微笑む。


『良いさ。 君に恩を返せれば、それだけでも満足なんだ』


 女と良は、両手を重ねて硬い握手を交わす。

 理由がわからないが、良にはそうしたい何かが在る。


「それでと、着陸は、何処へ?」


 もう直ぐ着くと云われた良だが、何処へ降りるのかすら分からない。

 恐る恐るな良に、女はウンと唸った。


『何を云う? 飛び降りれば良いじゃないか?』


 さも当たり前という女に、良は思わず「えぇ?」と呻いた。


『案ずるな、その為に強化も用意もしている』

「あーいや、まぁ、そうなんすけども……」

『男だろう? 度胸だよ』

「……はぁ、そうっ、すね」


 先程までの安堵は何処へやら、良の胸には不安が湧いていた。

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