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悪の組織、はじめました  作者: enforcer
驚愕! 地球救済作戦!
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驚愕! 地球救済作戦! その15


 セイントの放送が終わり、部屋に静けさが戻る。


「あの野郎……勝手な事を」


 いの一番に口を開いたのは、虎女であった。

 ギリリと歯を軋ませ、鼻を唸らせた。


 憤る虎女に引き続き、我に帰ったのは愛である。


「ちょっと!? 二時間って、どうすんの!?」


 愛からすれば、如何に魔法少女とは言え対処出来る問題ではない。

 絶大な力を持っているとは言え、物事には限度が在る。


 多少の怪物でも遅れは取らないが、世界中を何とかしろと云われれば、答えは不可能であった。 


 ともかくも、愛はアナスタシアへ顔を向けた。


「こんな所でボーッとしてられないでしょ!! 私行くから!」

 

 本気に成れば、愛は自前の移動方法を持っていた。

 以前にも、その手を使って良の窮地に駆け付けたのだ。


「落ち着け」


 逸る少女に、アナスタシアがそう静止を掛ける。

 が、血気盛んな少女ともなれば【はいそうですね】と言える程に素直でもない。


「落ち着け!? 何云ってんの? 別にあんた達になんかしろなんて云ってないけど?」


 何とも勝ち気な少女に、女幹部はフゥと息を吐く。


「で? 何処へ行くの?」

「え? いや、だから」

「セイントが何をしようというのは知っている。 奴は、世界中に化け物を放すつもりらしい」


 らしいと言うアナスタシアだが、まだ確証がない。

 加えて、部下を抱えている彼女はおいそれと簡単に何かを決める訳にも行かなかった。


 但し、それはアナスタシアの都合に過ぎず、愛の都合とは関係が無い。


「だったらやっぱりヤバいじゃん! どうにかしなきゃ!」

「だから、何処へ行き、何をする? それがホントにわかってるの?」

 

 年の功と言う言葉通りなのか、アナスタシアは愛よりも落ち着いて居た。

 血気に走り出しそうな小娘を、大人の女が止める。


「んもう! じゃあどうすればいいの!? 呑気にしてたって……」


 今にも駆け出しそうな焦る愛を、ドゴっと鈍い音が抑えていた。

 音の正体は、虎女の拳が壁を抉った音である。


「……んなことわかってるよ。 あたしだってさ、今すぐ首領を探しに行きたいよ? だけどさ、何処へ行けば良いの?」


 虎女からすれば、セイントの事はどうでも良かった。

 世界をどうこうしようが、それ自体に興味等は無い。


 ただ、良の行方は知りたかった。


 悔しげな虎女の声に、博士が「今は、何も出来ません」と答えていた。


   *


 組織の地下基地にて、皆が悩む中。

 遠く離れた地では、別の事に悩まされている良が居た。


『……んぬぅ……ぐああ……おおお……』

 

 怪しい呻き声が、雪の下から響く。 

 もしもそれを誰かが聴いたなら、すわ幽霊かと驚くだろう。


 が、声の主は幽霊ではなかった。

 

 降り積もる雪が、ゴバッと散らばる。

 装甲に包まれた腕が突き出し、更に穴を広げていく。


 どれくらいの時間そうしていたのか、そんな事よりも、ともかくも地上を目指す。


 程なく、蛇に似た兜が雪を掻き分け躍り出た。


『あー、死にそう』


 兜から漏れ出る声は弱々しい。

 それでも、良は必死に雪から身体を出す。


 一連の作業だけでも、楽な事ではなかった。


 何とか地上へと出た迄は良い。

 が、それからどうすれば良いのか、何もわからない。


『何処だろ、此処……電話したら、繋がるかなぁ』


 変身を解除すべきかを、良は迷っていた。

 雪に埋もれた状態から脱出するだけでも、大事である。


 それでもと、良は変身を解いた。


 身体を覆う装甲が無くなり、吹き荒ぶ風が直接良を叩く。


「……さみぃなぁ」


 ボソリと良はそう言うが、当たり前である。

 そもそも今の良を取り巻く気温は氷点下を遥かに下回っていた。


 ボコボコと沸いた熱湯ですら、熱源から離された段階で一気に冷え、凍り付く。

 その筈が、良が平然として居られるのは、改造のお陰だろう。


 ともかくも、良はポケットへと手を伸ばすと、スマートフォンを取り出す。

 モノは試しにと弄るが、直ぐに【圏外】だと分かってしまった。


 分かっては居たが、実際に見せられると気が滅入る。


「うわぁ、まじかよ……」


 呻き声を上げながら、良は身を起こす。

 セイントに叩き付けられたからか、背中がきしんだ。


「あの野郎、手加減なんてしてねぇんだろうが」


 何とか、自分を奮い立たせ様と足掻く。

 何事も気からであると、良は信じていた。


 雪に手を着き、膝を立たせる。


 いつもであれば、ヒョイと腕だけでも立ち上がる事が出来る筈の良だが、今は、重病者の如く動きが遅かった。


「よぉし、ではと……どっちへ行きゃあ良いのかな」


 辺りを見渡しても、見えるのは雪原のみ。

 一応、遠くには山も見えなくはない。


 が、方角すらもわからない以上、どちらへ行けば良いのか、そんな見通しすら立って居なかった。


 とは言え、救助を待っているつもりは良には無い。  

 誰かがいつか来てくれる、そんな保証など無いのだ。


「前か後ろか、右か左か」ボソリトそう言うと、歩き出す良。


 歩く良だが、自分が如何に馬鹿げた真似をしているのかは分かっては居た。


 地図も無く、前を歩いてくれる案内人ガイドも居ない。

 加えて、方向を示すコンパスも無ければ、空には厚い雲。


 もはや、生身の人間ならば絶望的的な状況である。


 それでも、良は諦めては居ない。

 何も無くとも、誰も居なくとも、たった一人でも歩く。

 それは、意味の行動ではないのかも知れない。

 

 ただ、無謀だとしても、そうしたかった。


 吹雪が吹き荒れる中、ただ、歩く。

 余りの寒さ故か、身体が悲鳴を上げ始めていた。


「あー、寒いよなぁ。 でもさ、あんまり寒く感じてないんだなぁ」


 身体に付いた雪が溶けるが、直ぐに凍る。

 次第に、重さは増していた。

 

 当て所なく歩く内に、良の膝が勝手に折れてしまう。

 ドサリと、前のめりに倒れた。

 

「くっそう……膝のヘタレ野郎が」


 動こうとしない自分の脚に悪態を尽きながら、良は頭を上げる。

 まだ死んでは居ないと、腕が前へ伸びた。


 腕を頼りに、前へと這う。


「運が良いんだか悪いんだか、こんな姿見られないのがマシかなぁ。 あーでも、やっぱりちょっと手を借りたいかぁ」


 やっている事に、意義など無いのだが、それでも、良は前へ行きたかった。

 行き先など無いとしても。


 腕の感覚が鈍り、視界がぼやける。


「マズいぞ、ひじょーにまずい」


 今や良の視界には、うっすらと蛍の様に光る何かまで見え始めていた。


「えぇ、お迎えが来ちまったのか? それは参るな」


 そう言うと、良は上げていた頭を落とした。

 下が雪の為か、頭はやんわりと受け止められる。


「まずいぞ、なんか……すっげー眠たくなってきた」 

 

 瞬きしながら、良は一人呟く。


 ふと、胸の内側の声が聞こえてしまう。


【なぁ、もう良いんじゃない?】


 その声は、良にとってみれば非常に魅力的なこえだった。


「良くないだろ」

【どうして? お前が頑張ったってさ、何にも変わらないでしょ?】

 

 答えは、直ぐに頭の中で聞こえる。


「まだだ」

【死に物狂いで頑張ってもさ、限度が在るだろ? ほら、過労死しちゃう人だって居るんだぞ】


 眼を閉じたくなるが、良は歯を食いしばる。


「死んだ後の事は、死んでから考えるわ」


 そう考えると、意外な程に頭が冴えた。

 良は、頭を上げると、肩も上げる。

 脚も腕も云うことを聞かないのであればと、別の方法を模索した。


 思いを馳せれば、腕や脚に頼らずとも動く生き物は沢山居る。

 

 また、ズリズリと雪の上を動く良。

 そんな良はが、何かに照らされた。


「あん?」


 何事かと身を反転させれば空が見える。

 なんと、空から一条の光が降りて良を照らしていたのだ。 


「待て待て待て、まだお迎えは要らねーよ」


 良はそう言うが、既に周りを薄ぼんやりと光る何かが舞っていた。

 それは、あたかと迎えに来た天使に見えてしまう。 


 フワリ浮かぶモノは、良の身体に留まった。


「おい、こら、まだだってまだ、やることが在るんだよ」

 

 良は焦った。

 まさかこのまま自分は何処かへ連れて行かれてしまうのか。


 意外かも知れないが、良の想像は間違っても居ない。

 その証拠に、なんと空から良を掴まえる為に大きな手の様な何かが降りてきたのだ。


「ぐぇ!?」

 

 金属で造られた手は、がっちりと良を捕まえる。 

 そのまま、スルスルと持ち上がる良は、空を割って現れた何かの中に吸い込まれていった。


   *


 以前にも、悪の組織にさらわれてしまった経験が在る良。

 ふと、目を覚ますと、身体が動かない。


「うん?」


 何とか首を起こすと、どうやら何かに寝かされているのはわかった。

 素っ気ない台は、ベッドとは呼べない。


 どうやら照らされて居るのは良を乗せた台だけなのか、辺りは見えては居なかった。


「へ? 此処、何処?」

 

 思わず焦る良の耳に『おや? 起こしてしまったかな?』と声が聞こえる。


 そんな声に、良はハッとしていた。


「だ、誰ですか!? どちら様です?」


 とりあえずは、敢えて強気に成らず、下手に出る。

 いざという時は、相手の隙を窺おうとした。 


 良の問いに、コツンコツンと軽い足音。

 硬い何かと靴がぶつかる音。


 音の方を見てみれば、段々と爪先から姿が見えてくる。

 恐る恐る窺うと、其処には良の見知らぬ人が居た。


『なんと云えば良いか、まぁ……守護天使、かな? それと、動き回っただろう? お陰で、探し出すのに苦労したよ』

 

 そう言うのは女である。 

  

「あ、はい、さいですか」


 妙に引っ掛かる感覚に、良は首を傾げていた。


「あれ? あんた、前に確か、何処かで……いや、えーと」


 自分を疑う良の声に、女は何とも言えない微笑みを浮かべていた。


『今は、休むんだ。 全身がガタガタだからな』


 そんな声に、良はガクンと意識を飛ばしていた。

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