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悪の組織、はじめました  作者: enforcer
驚愕! 地球救済作戦!
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驚愕! 地球救済作戦! その6


 セイントの怪光線から辛くも生還した改造人間、篠原良。

 組織の首領である彼は、部下の手を借り、何とか基地へと帰還していた。


 最近は専ら首領専用に成りつつある台にて、良は博士の診断を受けている。


「なぁ、どうだ? 博士?」


 動けない以上、専門家に頼るしかない。

 問われた博士は、眼鏡をクイと上げつつ、フゥと息を吐いていた。


「一応、首領のお身体は無事です。 装甲の隙間から入り込んだ熱のせいで冷却機ラジエーターが緊急起動。 で、蓄電が切れた、という所でしょうね」


 博士の診断に、良は「そっか」と声を漏らす。


 良は生還した。

 

 が、それは、相手が見逃してくれただけに過ぎない。

 つまり、あの場にて良は殺されて居ても不思議ではなかった。


「ちっきしょう……なぁ、彼奴は何なんだ?」

 

 セイントの正体を探るべく、博士に問う。

 が、問われた博士は、ウーンと唸ると首を横へ振った。


「わかりません。 幹部の中でも、あの人は謎が多過ぎるんです」

「マジかよ、そういう所はホントにガバガバなんだな」


 良の声に、博士は手元のタブレットを弄った。

 組織専用のモノであり、様々な情報が其処には集約されている。

 が、全てではない。


「セイントに関しては、前の首領も情報を載せてないんですよ。 ただ、世界征服に役立つから、としか」


 聞こえた声に、良は顔をしかめた。


「要するに、何もわからん……って事か」


 悔しげな良に、博士は苦い顔を浮かべる。


「すみません、首領」


 詫びる博士に、良は笑って見せる。

 どの道、顔と首以外はろくに動かせない。


「良いって、別に博士のせいじゃないだろ?」

「でも」

「ソレよりも、なぁ、何とか急速に充電は出来ないのか?」

「え?」


 戸惑う博士に、良は縋る様な目を向ける。


「もしも、またあの宇宙人野郎が何かしたとしても、俺は動けないだろ? だから、なんか手っ取り早いのは無いのか?」


 必死な良に、博士は悩む。


「在りますけど……その」

「ほんとか? なら……」


 良が【早速頼む!】と云う前に、部屋にアナスタシアが駆け込んで来た。

 本部に帰ったからか、今の彼女はビジネススーツではなく、いつもの格好である。


「首領! 大変です!」

「いや、俺も、今大変なんだけど?」

「そんな事よりも! 今すぐ見て欲しいモノが在るんです!」

 

 良の「そんな事って」という嘆きなど取り合わず、女幹部は部屋に備え付けのリモコンを弄った。

 部屋の天井から、大型のディスプレイが下りてくる。


 アナスタシアの操作で、画面が点った。

 其処に映し出されるのは、セイントである。


─……あー、世界中の皆様。 おはようございます。 こんにちは。 こんばんは。 大変恐縮ながらも、今から、皆様には少し残酷なお知らせをしなければなりません─


 ソレは、良にとっては日本語に聞こえる。

 が、別の場所で見ている者には、その人が用いる言語に聞こえていた。


 セイントの顔を見るなり、良が顔をしかめる。


「あの野郎……って、アナスタシアさんは、なんで知ってるんですか?」

「先程、奴から電話が在りました。 首領に見せろ、と。 今のこの映像は、どうやってかはわからないのですが、インターネットを用いて全世界で同時に放送されている模様です!」


 女幹部の説明に、良は呻きながらも、画面を見た。

 

─現在の地球は大変病んでいますね。 まぁ、生きる為に他者を食べる、という事は仕方の無いことだとは私も分かっています。 ですが、己の欲求を満たすために他者を貶めるのは、違いませんか? それが許されるなら、どの様な残虐な行為も許される、という事でしょう?─


 そう言うと、青年はポンと手を叩く。

 何かの合図なのか、画面が切り替わっていた。


 見えるそれは、どこかの街にも見えなくもない。

 

─今現在、在る場所を映して居ます。 見えてますかね? まぁ、ちょっとした大型の旅客船、というところですか。 ま、大事なのは、これからの事です。 あ、お願いしま~す─


 セイントの軽い声は、合図なのだろう。


 映像で分かるのは、至る所に在る換気口らしきモノがバタバタと音を立てて開く様であった。


 無論の事、見えている人々は何事かと驚く。

 

 そんな人達に、換気口から飛び出た何かが襲いかかっていた。

 映像越しとはいえ、生々しい悲鳴が轟く。


「なんだ、あれ?」良が目を凝らせば見える。


 人々に襲い掛かるモノは、一見すると猿にも見えるが、違った。

 頭髪から背中、そして、下半身を毛が覆う。

 が、見える顔は知っているモノではない。

 

 醜悪を絵に描いた様な、異様な化け物。


 それが人を襲って居た。


 特徴的なのは、その化け物は集団的な行動をする所だろう。

 一人の人間に対して、必ず一体では相手をしない。


 特に、相手方大人の男性の場合は、わざと正面の一体が目くらましとなり、背後から数匹が襲い掛かるという効率的な戦い方をしていた。


─来い、化け物! くそったれが!─


 男性が、その辺で拾ったで在ろう角材を振り回す。

 が、やはり目の前しか集中していない男性の背後から、数匹の化け物が襲い掛かる。


 あっという間に、男は悲鳴を上げていた。


─だ、誰かぁ!? ひぃいい!?─


 襲われた者が女性の場合は、金切り声があがる。 

 が、その場では殺すつもりは化け物には無いのだろう。


─嫌! やだ!? 放せ!? だ、誰か!? いやああ!?─


 化け物は顔を見合わせると、女性を殺さず、何処かへと引き摺って行ってしまった。


 何人かが慌てて助けようとはするが、多勢に無勢では手が出せない。

 下手に出そうモノなら、返り討ちという事も映されていた。


 阿鼻叫喚の最中。 映像が揺れる。


 どうやら、誰かが撮影をしているらしい。

 時折、殺されてしまったで在ろう遺体が生々しく映し出されていた。


─今、皆様の前では大変痛ましい映像が流れているものと思います。 ですが、これは貴方達もしている事ですよね? 自分の為に他者を殺して、糧にする。 それだけです─


 解説ナレーションのつもりか、セイントは語った。

 その口振りは冷たく、かつて世界の為に戦った者という声は無い。


 目を反らしたくなる様な残虐な中、動いていた映像が止まる。


 画面に映されるのは、複数の大人が互いに背中を庇い合い、同時に全方位を警戒する様であった。


 同様の衣服から察するに、彼等は従業員なのだろう。


 襲い掛かる化け物を一人が叩けば、周りがそれを援護カバーする。


 そうして身を守る集団には、化け物は近寄らなかった。

 寧ろ、危険だと判断したのか遠ざかる。


 狩られてしまう者も居れば、助かる者も居た。

 

 それらが映し出された後、映像が切り替わる。

 大型の画面には、セイントが映った。


─さて、今見せたのはほんのデモンストレーションでした。 あの場に付いて言えば、大型の客船ですので、周りに被害は出ません。 御安心を。 そして、これからが大事な事です。 皆様に、在るお願いを致します─


 スッと息を吸い込むと、青年は目を開いた。


─世の中には、酷い人が多過ぎませんか? 戦争で金儲けしている人、他人を辱める輩、富を独占する人達、伴侶を裏切る者、家族を虐げる者。 そんな人達に、生きている価値が在るとは私には思えません。 なので、皆様─


 そう言うと、画面の青年は三本指を立てて見せた。


─3日間の猶予を貴方達にあげましょう。 3日以内に、今私が言った全員を殺して、吊してください。 そうすれば、地球は少しは綺麗に成りますよ。 まぁ、当事者が自ら首を吊ってくださっても、それはそれで結構ですが─


 青年は、手を下ろすとニッコリと微笑んだ。

 異性を魅了するほどの笑みなのだが、今は不気味にしか映らない。


─私の要求が通らない場合、残念ながら、先程の映像の様に此方から手を打たせて頂きます。 御安心ください、必死に家族を護れば、貴方は助かるかも知れませんよ? では、3日後に─


 セイントの言葉が終わると同時に、画面は暗転した。

 

 アナスタシアと博士が驚き戸惑う中、ギリギリという音が響く。

 それは、良が発する悔しさであった。


「ええい! あの野郎!? めちゃくちゃ云いやがって!」


 吠えたと同時に、良は博士へ目を向ける。


「博士! 頼む! このままじゃ何が起こるかわかんねぇ! だから、動ける様にしてくれ!」

 

 懇願する良に、博士の顔は浮かない。


「首領、その、本気……なんですか?」

「ああ! 本気も本気! オオマジだぜ!」


 首領が命令をすれば、部下である博士は従わねば成らないだろう。


「わかりました。 アナスタシアさん、首領を、うつ伏せに」

「……承知した」


 博士の浮かない声に、アナスタシアの声も暗い。

 そして、ひっくり返される良も、不安が募った。


「え? ちょっと? あの? なんで服捲るのかな?」


 うつ伏せにされ、何が起こっているのか、良は見えない。


「すみません、首領」


 何故か詫びる女幹部。 それは、良を余計に不安にさせた。


「アナスタシアさん、せめて、そっぽ向いてあげて」

「わかっている」


 背後から聞こえて来る声に、良の目が忙しく泳ぐ。

 しかしながら【急速充電】を頼んだのは良本人なのだ。


「首領、危ないので、動かないで」


 そう言う博士が持ち出したのは、充電用の器具である。

 遠目に見れば、一般的な充電器具にも見えるが、大きさは桁違いだった。


 怪しい器具が、良へとゆったりと向かう。


「おいおいおーい? え? 何してんの? ちょ……あ」


 博士による充電が行われる際、アナスタシアは、背中を向けて顔を手で覆っていた。

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