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悪の組織、はじめました  作者: enforcer
驚愕! 地球救済作戦!
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驚愕! 地球救済作戦! その5


 大幹部である青年が唱えた恐るべき計画。

 それは、地球救済の為の作戦である。


 しかしながら、それを【はいどうぞ】と良は言えなかった。

 

『冗談……じゃあないんだよな?』

 

 念の為に確認を取ると、青年は頷く。


「えぇ、勿論です。 こうしている間も、世界中で悲鳴が渦を巻いていますので。 もうね、人類の為に戦うとか、うんざりしていたんですよ。 でも、私としては、星を発つ前に、最後の大掃除をしようかと思いまして」


 青年は一端言葉を止めると、ウーンと唸る。

 ただ、直ぐにポンと手を鳴らした。


「あぁ! ほら、この国の言葉では云いますよね? 発つ鳥、跡を濁さず、と」


 青年の声を聞いた途端、良は前に出ていた。

 床が抉れる程の勢いで飛び出す。


『させるかよ!?』


 改造人間ならではの素速さで跳び掛かる良。

 それに対して、青年は涼しい顔で片手を上げた。


 本来ならば、生身の人間程度では改造人間を止められない。

 如何に変身して居らずとも、その力の差は歴然の筈だった。


 ぶつかる首領と大幹部。

 改造人間には生身では勝てない


 が、実際には良の方が吹き飛んでしまった。


『ぅおお!? なんだ!?』


 前へ飛び出した筈が、良は真逆の方へ飛ぶ。

 その勢いは凄まじい。


 ガシャンと派手な音を立てながら、ビルの壁を突き破って飛び出してしまうほどだった。 


 良が飛ばされのを間近で見ていたアナスタシア。


「首領!? そんな!」


 飛ばされた良の心配をしつつも、アナスタシアは青年の方を見た。


「セイント……あんた」ギリギリと歯を軋ませ、青年を睨む。


 女幹部に睨まれても、青年の余裕は崩れなかった。


「私はね、一度たりとも、自分からは仕掛けた事は在りませんよ? 今も昔も、これからもね。 でも、今は、首領から仕掛けて来た。 で在れば、降りかかる火の粉は払うでしょ?」


 青年は、話ながらゆったりと立ち上がる。

 

「出来れば、同僚の女性は叩きたくないので」


 青年はそう言うが、既に闘気を纏っていた。

 仕掛けて来るので在れば、遠慮はしない。

 言葉ではない意志がアナスタシアにも伝わる。

 

「どうぞ? 変身為さるのであれば、お待ちしますが?」


 青年はそう言うが、アナスタシアは躊躇が在った。

  

   * 


 大幹部同士が向き合う中。


 セイントに飛ばされた良は、飛び出しただけでは止まらず、近くのコンビニエンスストアに突っ込んでしまっていた。


 派手に飛び散るガラス。 倒れる商品棚。

 そして、呆気に取られる店員と客達。


 そんな人達は、いきなり派手に入店して来た者に目を向ける。


「お、おい、あんた……大丈夫かい?」

「あ、お客様?」


 掛けられる声に、布を被った良が唸る。


『……くそったれがぁ』


 並みの人間では生きている事すら怪しいが、ムクリと体が起き上がった。

 布のお陰様か、良の面は割れては居ない。


 唸りながら立ち上がると、怪しい首領は周りを見る。


『すんません……後で、必ず弁償しますので』


 店員へとぺこりと頭を下げると、良は入って来た穴から出て行く。

 いきなりの事に、誰もが通報すら忘れていた。


「あ、ありがとうございまーす……また、どうぞー」


 気が動転しているせいか、店員はおざなりの台詞を良へと贈っていた。


 コンビニエンスストアを出るなり、良は構えを取る。


『変……』


 静かにそう言うと、起動の動作を行う。


『……身!』

 

 声と共に、動作を完了させる。

 あっという間に、安っぽいお化けは改造人間の姿へと変わっていた。  


 変身すれば、身体の安全装置は解除される。

 人間では有り得ない膂力にて、良は跳んだ。


   * 


「おっと? お戻りに成られましたか」

 

 ビルの中へと再び戻って来た良に、青年は笑う。

 

「首領」

  

 心なしか、アナスタシアは安堵した様な顔を浮かべていた。

 

 兜のせいで、良の顔は大幹部達には見えない。

 が、その中では、良は怒っていた。


『おい、さっきはよくもやったくれたな? お陰様でコンビニの姉さんに迷惑が掛かっただろうが? どうしてくれんだよ?』


 良がそう指さすと、青年は肩を竦める。


「怖いなぁ……でも、仕掛けて来たのは首領ですよ?」


 嘲りに近い声に、兜からは唸りが漏れる。


『ああ、確かにな。 不意打ちなんて俺らしくなかったよ。 で? 宇宙人さんよ、そろそろあんたも本気出したらどうだい? 男同士、拳を片を着けようか』


 先程のぶつかり合いにて、良は自分がどうして飛ばされたのかは知らない。

 ソレよりも、人類を殺そうとしている青年を止めたかった。


 挑発に対して、青年はウーンと唸る。


「困ったな。 見せてあげたいのは山々なのですが、街中では少し問題が在るんですよねぇ」

『喧しい! あんたをぶちのめせば、計画は止まるんだろ?』


 面倒くさがりな正確故か、良はなるべく手っ取り早い解決策を探していた。

 が、青年はそれに乗る気を見せない。


「いいえ? 仮にですが、私を殺しても作戦は止まりませんよ?」

『なんだと!?』

「貴方にも居るように、私にも部下が居てくれます。 然も、彼等は私に賛同してくれている」

『だったら、今すぐ止めさせたらどうだ!? その綺麗な顔をぶちのめされる前にな!』   


 バッと腕を伸ばす良。


 凄まじい勢いは、青年の髪を少しだけ揺らした。

 怒る首領を見て、懐かしむ様に笑う。


「なんだか、貴方を見ていると、昔の自分を見ているみたいですよ。 困っている人を見捨てられずに、がむしゃらだった」


 そう言うと、青年は首領を見る。


「貴方みたいな人ばかりなら、世の中良い所の筈なのですがね」


 急に云われた良は、ウッと呻いた。

 青年の誉め言葉が、勢いを削いだのだ。


『い、いや、別に俺は、別に』


 良の中で、驚きが怒りに勝る。


「……甘いなぁ、貴方は。 でも、だから何も変えられない」

『あ? 云い残すことはそれだけか?』

「あれ? もしかしたら……喧嘩を売ってます?」

『おうよ! 今なら十割引の大バーゲンセールだぜ?』


 セイントの声に、良は拳を上げる

 

「そうですか、では…………失礼して」

 

 そう言うと、青年は手を奇妙な形に構える。  

 おおよそソレは、武道の構えではない。


 しかしながら、青年にとってみれば意味の在る構えなのだ。

 

「デェヤア!!」


 奇妙な構えと掛け声と共に、青年の腕が怪しい発光を見せた。

  

『げ!? なんだそりゃあ!?』


 ただの人間が、腕から光線などを出せる筈がない。

 とは言え、青年が宇宙人である事を良は失念している。


『つ、うぉおおお!?』

   

 青年が放った不気味な色の怪光線は、良の装甲を焼く。

 博士からは、破壊不能と云われている筈の装甲は、焼け爛れた。


 魔法少女の魔法ですら弾く筈の良だが、青年の怪光線には意味を為さない。


「首領!?」

『下がってろ!! アナスタシア!』


 女幹部が駆け寄りそうになるが、良は声で部下を止めた。

 自分で在れば、暫し間は保つかも知れない。

 が、女幹部にそれが出来る保証など無いのだ。


 で在れば、我が身を晒す他はない。


『この野郎……飛び道具なんざ使いやがって。 其処で待ってろよ? 今行くぜ』


 腕で胸と頭を庇いながら、じりじりと青年に寄る。

 光線は、確かに良を焼くが、距離は少しずつでも縮まっていた。

 

 その事には、さしもの青年も驚きを隠せない。


「信じられないな! まさか、コレを耐えるなんて!」 


 派手に火花を散らしながらも、確実に近付いてくる良。

 例え身を捨ててでも、戦おうとする。

 

 そんな姿に、青年は感嘆の声をあげていた。


 光線が止み、ソレを機と感じた良は殴り掛かる。

 が、足がもつれてしまった。


 ドタンと手を着き、倒れるのを防ごうとするが、良は倒れてしまう。


『ぬぁ……くそ、なんだ!?』


 悔しげに声を漏らす良を見下ろしながら、青年は微笑んでいた。


「あぁ、バッテリー切れでしょうね。 ただ、生きてるだけでも凄いですよ? アレを浴びて生きてた奴なんて居ないんですから」


 光線を発したからか、青年の両腕を覆っていた背広とワイシャツの袖は焼けてしまっていた。

 それだけではなく、人とは違う色の肌が覗く。


 ソレは、人間では有り得ない色をしていた。


 勝ち誇る事は無いが、青年は立っている。

 そして、見下ろされる良は、肩で這っていた。


『ざけんじゃねぇよ……まだ勝負は着いちゃいねぇんだ』

 

 あくまでも闘いを止めようとしない首領。

 その姿に、青年は、なんとも寂しそうな顔を浮かべていた。


「ふぅむ……首領のお心は分かりますよ。 貴方には、辛いでしょうね。 でも、いつかは貴方もわかってくれると信じますよ」


 サッと歩き、這う良の横を抜けると、青年はビルの穴の縁に立つ。

 チラリとアナスタシアを見た。


「すみませんね、アナスタシアさん。 首領をお願いしますよ? では、ジュア!!」


 申し訳なさそうな言葉を残すと、青年はパッと身を空へ躍らせる。


 ただ、飛び降りた訳ではない。

 なんと、そのまま空へと飛んでいってしまった。


『待てコラァ!? 逃げるのかよ!?』


 去ってしまった青年に、良は声を張り上げる。

 それが意味の無い遠吠えだとしても、出さずには居られない。


 そうこうしている内に、遠くから響くのは唸る様なサイレンの音。

 ヒョイと顔を出して見れば、赤色灯が近付くのが見える。


「あ! マズい、首領? 動けますか?」

 

 女幹部の問いに、良は全身に力を込めた。

 だが、動こうにも体は云うことを聞いてはくれない。


『ちっきしょう!? くそ、動けねぇ……なんでなんだ』


 悔しそうな良の声に、アナスタシアは慌てて駆け寄った。

 直接触ろうにも、まだ装甲を焼いた熱は消えては居ない。


 其処で、アナスタシアは着ているジャケットを脱ぐと、力で破いた。


 ぐるぐると適当な場所へと巻き付けると、ぐっと良を引く。


「首領! 今すぐ待避しますので! おい! 手伝え!!」


 女幹部の掛け声に、外からピチピチタイツの構成員達も駆け付ける。

 

 人目を避ける為に、運ばれる良。

 兜が顔を隠してはくれるが、良は悔しさに唇を噛んでいた。

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