絶望! 世界滅亡計画! その8
怪しげな巨人を前にしても、五人組はポーズを崩さない。
それどころか、更に違うポーズへと移行していた。
特に目立った効果は無い筈だが、どこからか音がする。
「今の今まで、貴様等を見つけ出す事が出来なかった! しかし! とうとうお前達の悪の計画を察知したぞ!!」
レッドの言葉の後、四人が「はっ!」と声を上げた。
そんな、五人の戦隊の前に立つ巨人の中では、良は唸っていた。
『ハッ!じゃねーよ。 なんか、すっげーのが来たぞ』
怖じ気づいた訳ではないが、流石に気圧される良。
そんな良の耳に、通信が届く。
─侮るなよ、首領。 奴等、見た目とは違い危険な存在なんだ─
聞こえた声に良はフゥンと唸った。
『見た目は……まぁ、じゃ、そう言うことなら』
中身である良の動きに合わせて、巨人も動く。
ボクサーの様な構えを取った。
巨人の構えに、五人組もそれぞれが武器を取り出す。
果たして、それが何処から出てくるのかは不明だ。
「お前らの悪の計画など許しておけん! 覚悟!」
レッドが勇ましい声と共に剣を振り上げる。
それを見て、良はオッと唸った。
『お、おーい! ち、ちょっと待ってくれ!』
巨人が急に手をブンブンと振り始める。
意外な事に、それは五人組の動きを牽制していた。
「なによ!? 今更命乞い!?」
初対面の割には実に傲慢なピンクの対応に辟易しつつも、良は声を掛けたい。
『あー、あのさ。 なんて云うか、これ、あー、科学の実験だからさ』
しどろもどろな釈明に、イエローが遠慮無しに指差す。
「コレの何処が実験よ!? コッチは全部知ってるんだよ!?」
更にイエローに合わせてピンクがバッと腕を延ばす。
「あんた等の悪行は!! 全部グルッとお見通しだ!!」
ほぼ一方的にまくし立て、武器を下ろす気配が無い。
良が思わず頬を指で掻きそうにすると、巨人もそう動いた。
『あのぉ、どうしても、駄目っすかね?』
計画自体は、確かに世界を壊すモノに違いはない。
が、良は女の意志を尊重してやりたかった。
しかしながら、それは良の都合に過ぎない。
「しまった!? コレは時間稼ぎか!? くっそぅ!!」
ヤケに焦ったグリーンの声に、残りの四人が一斉に巨人を見る。
「なんて事を! この卑怯者!」
「やっぱり悪の組織じゃないか!!」
ピンクとブルーの罵りに、巨人からは溜め息の音声が漏れていた。
『駄目だこりゃあ、話が通じねぇや』
やる気の無い声は、留めには成らない。
今度こそ、スーパーレンジャーが巨人へ向かった。
一見すれば、タイツとヘルメットを被っただけの五人。
対するは、鋼の巨人。
そのどちら側が勝つのか、子供でも分かるだろう。
五人の力は良の想像を超えていた。
持っている得物自体は、それほど特殊な見た目ではない。
西洋風の細身の剣。 先が怪しい形の棍棒。 ヤケに装飾過多の斧。
他の二人も似たり寄ったりである。
但し、それらを当てられた威力は凄まじいモノがある。
レッドの剣を受けただけでも、良の視界は揺れた。
『うぉ!? なんだなんだ!?』
巨人という鎧のお陰様か、良の身体には異変は無い。
が、その力は過剰なまでに強かった。
『どうなってんだ? コイツらは?』
仕方なしに、巨人が手を振る。
なるべく相手を痛めぬ様、火の粉を払う様に振られた。
良の想定以上に増幅された力は、グリーンを弾き飛ばしてしまう。
『あ、やべ』
派手に飛んでいく相手に、思わず良は加減を間違えたと察した。
「あぁ! グリーンが!」
ピンクは声をあげるが、当のグリーンはと言えば、平然と立ち上がる。
「ちぃ!? 油断したぜ!!」
トラックにはね飛ばされた様に飛んだ筈だが、グリーンの声に苦痛は無い。
それを聞いた良は、殺さなかったと安堵すると同時に恐れが浮かんだ。
もしも、女が鎧を用意してくれなかった場合はどうなったのか。
以前にも同じ改造人間を相手にした事は在るが、それとはまた異質な者達。
その力は計り知れない。
『ちっくしょう……まぁた面倒くさい事に成ったな』
良が焦るのには理由が在った。
自分の前立ち塞がるスーパーレンジャーの力も侮れない。
そして、彼等を運んだであろう飛行機は、先程から施設への攻撃を止めない。
事前から念入りに準備していただけあり、ある程度の攻撃は防げるが、全ては無理だった。
着弾すれば、其処は破壊される。
施設を護ると決めた以上、あまり遊んでも居られない事情が在った。
『ええい! ポンポンミサイル撃ちやがってこの野郎!』
ガシャンガシャンと音を立てて走る巨人。
傍目には鈍重だが、その動きは意外な程に軽やかである。
無論、そんな走る巨人に生身の人間を放り込もうモノなら、酷い酔いは避けられない。
最悪は気絶してしまうだろう。
だが、其処は改造人間としての体が良を護っていた。
「てやぁ!」
『うおお!』
レッドの剣を弾きながら、腕を振る。
それは、ブルーが止めていた。
『どうなってんだコイツらは!?』
ピチピチタイツの見た目は、組織の構成員と大差は無い。
にも関わらず、スーパーレンジャーの頑強さは恐るべきモノがある。
いったい何処からその力が出ているのか、レンジャーは巨人の攻撃を食らっても倒れない。
それどころか、レッドとブルーに止められたせいで、他の三人は自由である。
「「「やぁ!!」」」
分かり易い掛け声と共に、ピンクイエローグリーンの同時攻撃。
それを受けた巨人は、まるで小石が如く飛んだ。
地面を抉りつつ、止まる。
『ああ、くっそ! なんかねぇのか』
良の焦りに、巨人は応える。
目の部分が輝くと同時に、前腕部が解放された。
【MACHINE GUN ON-LINE】
そんな文字と共に、銃口が何処を向いているかを示す照準が良の目に映る。
『ほ! コイツは良いや!』
相手がちょっとやそっとでは死なないとわかった以上、良も遠慮は止めた。
ウィンと音を立てて、巨人の腕がスーパーレンジャーを狙う。
全部で六本ある銃身から、大型の弾が吐き出される。
その反動は大きく、巨人の身体が揺れる程だった。
「うわぁ!? 」「ぐあぁ!?」「きゃああ!?」「わぁ!!」「いたたたた!!」
重機関銃から放たれる弾丸は、本来ならば装甲車をスクラップに変える。
そんな弾丸を浴びせられたなら、只では済む筈がない。
が、スーパーレンジャーはと言えば、火花を散らすだけであった。
「く、くそう!」「なかなかやるじゃない!」
とても弾を喰らったとは思えない強気な声。
それを聞いて、良は寒気がした。
『冗談だろ? 全然効いてねぇぞ』
焦る良に対して、五人は立ち上がった。
「なんて事だ!? このままでは!? よし! 皆、超変身だ!」
「「「「おう!」」」」
内々にだけ伝わるレッドの声に、四人が応じる。
『なんだなんだなんだ!?』
焦りを隠さない良の前で、五人が改めてポーズを取る。
恐らく、何かしらの行動をするであろう事は明白だ。
『黙って待ってる事はねぇ!!』
其処で、良は巨人を前へと走らせた。
何をするにせよ、それを止めてしまえば良い。
しかしながら、良は忘れている事がある。
空中にて旋回を繰り返す支援機が、巨人へと機銃を発射。
それは、凄まじい猛攻と言えた。
『おお!? この野郎! 卑怯だぞ! 降りてこい! コラァ!?』
悪態は、失態でもある。
良が文句を云っている合間に、五人は動作を完了してしまった。
「「「「「超変身!!」」」」」
五人分の声と共に、五色の光が辺りを照らす。
あっという間に、スーパーレンジャーは少し豪華な衣装へと変わる。
『なんなんだよ、あいつらは』
舌打ち混じりに良がそう言うと、耳に雑音。
─気をつけてくれ、首領。 奴等は窮地進化型の連中だ─
助言らしいが、良は唸る。
『頼むよ! 分かる言葉で云ってくれ!』
─通常、生き物の進化は緩やかだ。 が、奴らの場合は違う。 危険に陥ったなら、即座に対応、進化するんだ─
聞こえる声に、良は益々唸った。
『それはつまり、ヤバくなったら直ぐ強くなるって事か!?』
─そうだ─
端的な答えに、良の焦りは強かった。
『はぁ? なんだそりゃあ? ふざけてんのか』
文句を言っても、スーパーレンジャーの超変身は完了していた。
「行くぞ!」
レッドの掛け声に合わせて、五人が駆け出す。
その動きは、最初の時よりも速い。
バタバタと周りを駆け回る姿に、巨人は身体を揺らす。
『やい! テメェら! 正義の味方の癖に! 5対1とか卑怯とは思わねぇのか!?』
率直に感じた事をそのまま吐き出す。
すると、五人は足を止めた。
「何を云う! 俺達スーパーレンジャーは、五人で一つの力だ!」
レッドの声に、他の四人が頷く。
「そうだ! 俺達は一つなんだ!」
「絶対に、悪になんか負けない!」
グリーンとピンクがレッドに続く。
屁理屈この上ないが、そもそも間違っても居ない。
勝てば官軍、負ければ賊軍。
つまり、世の中の善悪などは意味が無い。
勝てば正義を名乗っても何の問題も無いというだけだった。
如何なる卑怯な手段も問題ではない。
無論、良にしても世界を壊す手伝いをしている自覚は在る。
だがそれは、女の岩をも通す一念を聴いたからだ。
間違って居るかも知れないが、同時に何が正しいという事もない。
何を為し、何処へ行くのか。
良は、女の目的を達成させてやりたい為に此処に居た。
『へっ………結局は正義の味方なんつっても、テメェさえ良けりゃ良いってんだろ?』
巨人が軽く足を上げ、地面を踏みつける。
『テメェらにも意地は在るんだろ? 俺にだって在るんだよ。 俺も俺の好きにさせて貰うぜ!』
良の声に、巨人が呼応する。
【HEATSWORD ON-LINE】
鋼の腕から、真っ赤に焼ける剣が突き出した。
空気すらも焦がす様な熱は、辺りを歪ませる。
『へぇ、こりゃあ良いや。 さ、来いよ! なんたらレンジャーさんよ!』
囲まれているという点だけでも、良の不利に変わりは無い。
それでも、必死に頼まれた事をやり遂げる。
馬鹿げた事だとは分かっては居ても、この場を離れるつもりも無かった。
「とう!」
巨人の背後から跳び来るブルーだが、その武器は空を切った。
良は前へ出る。
囲まれている状況に置いて、立ち尽くすのは良い手ではない。
状況を打開するには、前へ出るしかなかった。
『どけコラァ!』
巨人の振るう武器は相手を弾く。
が、どれも致命傷には至らない。
異様なまでの耐久力は、目を見張るモノがある。
それを見て、良は何か引っ掛かるモノを感じていた。




