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悪の組織、はじめました  作者: enforcer
戦慄!虎女!
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戦慄!虎女! その2


 世界の何処かで、大きな事件が起こる。

 が、往々にして、人がそれを知るのはニュースや文字でのみ。


 そして、とある組織の首領である良もまた、ボーッとテレビを見ていた。


『現在確認されているだけでも、死傷者は10人を越えており、現在は警察によって当時の状況が捜査中です』

 

 海を隔てた国にて、凄惨な事件が起こる。

 が、それを良は遠目に感じていた。


「へぇ、エラい事する奴が居るもんだな。 何も殺さなくても良いだろうに」


 悪の組織に身を置いている割には篠原良は呑気であった。


 知人の少女も救い、今の所は平穏を楽しめる。

 良もまた改造人間とは言え、戦う事無く、のんびりと休日を楽しむ。


「なんだかなぁ、どうしよ」


 せっかくの休みである。  

 このまま寝て曜日では不味いと感じたのか、良は起きあがろうとした。


 いざ、計画を立てようとしたその時。

 良愛用のスマートフォンが着信を告げる。


「げ、まさか」

 

 恐る恐る、画面を覗き込む。 

 すると、良の目には【アナスタシアさん】という文字が見えてしまった。


 せっかくの休みにも関わらず、問答無用に掛かってくる。

 それに辟易しつつも、良はスマートフォンを手に取った。


「あーい、どうかしました?」


 全くと言って良いほどに、良は組織に興味が無い。

 が、そんな首領の意志など組織には関係が無かった。


『首領! 今何処ですか!?』

「え? 自宅でまったりとしてますが?」


 答えると、何やら向こうからドタンと音がした。

 誰かが倒れたか、何かが壊れたのかも知れないが、見えない。


『首領! この前に話した事を憶えていらっしゃいます!?』

「え? あの地下に住めっていうの? いやぁ、日差しが無いのはちょっと。 あ、ほら、光合成出来ないじゃん?」


 適当なからかいのつもりだったが、電話の向こうからは深い溜め息が聞こえた。


『……まあ、ソレもありますが、そうではなく、幹部会が在るんです!』

「へぇ、そりゃあ大変だ」 


 見えては居ないはずなのに、何故だか良はプチンと何かが切れる音が聞こえた気がした。


『とにかく!! 今すぐ此方に来てください! 迎えに行ってますから!』


 アナスタシアはそういい残すと、電話を一方的に切ってしまった。

 組織のトップへの扱いではない。


 が、当の首領はといえば、うーんと鼻を唸らせていた。


「なんだよ、そんなに怒んなくても良いじゃないか? あの人カルシウム不足な」

      

 平穏な日々に、呑気な首領。

 そんな良の耳に、トントンというノックが聞こえた。


 どうやら、組織からの迎えらしい。


「はぁい、今行きまぁす」


 それは、何ともやる気のない返事であった。


   *


 暫く時間が過ぎた頃。

 

 改造人間、篠原良はまたしても組織の地下基地に居た。

 今回は最初から怪しげな布を被された首領スタイルである。


 良が到着するなり、有無を言わせずアナスタシアが被せたのだ。


 どっかりと首領専用の椅子に腰掛ける姿は、パッと見ならば悪の首領その物といった風情であった。

 しかしながら、中身は良である。


『まぁたこの格好なの?』


 相も変わらず威厳の足らない首領に、女幹部は息を長く吐く。


「そう長くは掛かりません! ちゃんと首領らしく願います!」


 破れかぶれといったアナスタシアの声に、尖り頭の首領は少しだけ揺れ、肩を竦めていた。

 

 首領と女幹部の万歳はともかくも、部屋の中に構成員が入ってくる。


「首領! アナスタシア様! 皆様がお着きです!」


 首領に対して、ビシッと姿勢を決める構成員。

 その様に、女幹部は満足げに頷く。


「よし! 入って貰え!」

「は!」


 やる気満々な幹部と構成員に、首領の頭辺りからはうーんと呻きが漏れていた。

 呻きに対して、アナスタシアのこめかみ辺りがピクピクと動く。

 だが、彼女は女幹部としての顔を崩さなかった。


 構成員が一斉に、壁に立ち並ぶ。

 すると、部屋に入ってくる姿が在った。


 流石の良も、此処までくれば一応の緊張は在る。


 部屋に入ってきたのは、アナスタシアに勝るとも劣らない怪しい格好の四人であった。


 右端の金髪の妙齢の女性は傍目には一番マトモだろう。

 が、その服装はお世辞にも【普通】とはかけ離れている。


 一見では中国風衣装チャイナドレス見えなくもない。

 裾から太股辺りにまで入った切れ目(スリット)からは脚が覗く。

 但し、全身が虎柄模様と派手であった。


 次に居並ぶのは、一応は人型に見えなくもない。

 二本の腕、二本の脚は付いている。 ただ、頭から普通ではない。

 コーヒーカップの取っ手を取り、無理やり人の顔を押し付けた様な異様。

 その体の殆どはマンとに覆われ窺い知れない。


 三人目の幹部もまた、在る意味普通ではなかった。

 一見するだけならば時代劇にでも出て来そうな出で立ち。

 それだけならば腰に剣を携えていても不思議ではないだろう。

 ただ、壮年らしい男の額からは、何故だか右側に一本だけ角が生えていた。


 最後に左側に控えるのは男性である。  

 仕立ての良さそうな背広姿で、コレと言った特徴が無い。

 ただ、この普通ではない場に普通のサラリーマンが居るという不自然が在った。


 そんな四人が、良を見据える。 右端の女性だけが目を細めた。


「ね、アナスタシア? 急な呼び出しは良いとして、聞いても良いかな? 其奴ソイツは誰?」


 男性とは違う声質だが、鋭さがある。

 それを受けて、良は困っていた。


 アナスタシア以外にも幹部が居るのは既に知ってはいる。  

 だが、まさか此処まで派手な四人組が来るとは想定してない。

 

 困惑する良ではあるが、被せられた布が動揺を隠していた。


「控えろ! この御方は、新しい首領だ」


 女幹部の声に、八つの目が一斉に良へと向かう。

 対する新首領の反応はと言えば、ぺこりと頭を下げていた。


『えーと、どうも、はじめま……ぶ!?』


 どうせなら丁寧な挨拶を心掛けようとする首領。

 そんな首領の口を、アナスタシアの裏拳が強かに捉えていた。


「すみません首領、手が滑りました」


 あから様に故意ではある。

 が、その拳は意外な程に素早く、人の目では捉えられない。


 口を叩かれて呻く首領を後目に、アナスタシアはバッと手を広げる。


「ご紹介致しましょう。 我が組織の大幹部を!」


 一々芝居掛かった女幹部である。 だが、無論それは意味もあった。 

 敢えてアナスタシアが派手に振る舞えば、首領は後ろに隠せる。

 

 最も、事前にそれを知らされていない良からすれば、ムッとしてしまうだろう。

 が、顔は見えては居ない。


「ブレードタイガー! アイアンヘッド! ソードマスター! セイント!」


 ビシッビシッと紹介される大幹部達。


 それを聞いている首領は、内心【名前が派手だなぁ】と感じていた。


「今後も、前首領に引き続き新首領の力となって欲しい!」


 アナスタシアの派手な紹介は終わった。

 但し、反応は余り芳しくない。


 やる気の無い首領はともかくも、四人の大幹部達も微妙であった。


 腕を組んでフンと鼻を鳴らすのは、紅一点の虎女。


「へぇ、あたし達が忙しくあっちこっち回ってる間に、新しい首領に成ったんだ?」


 大幹部の名は伊達ではないらしい。

 並みの構成員とは違い、四人は【はい、そうですか】という態度ではなかった。


「おい! 首領の前だぞ!」

 

 上司を蔑ろにする様な虎女に、アナスタシアは吠える。 

 が、同じく幹部の立場に在る者は揺るがない。


「それは聞いた。 で? 首領さまぁ? お聞かせ願いますか?」


 言葉こそ一応は丁寧だが、声色は明らかに不満が窺えた。

 虎女の態度には、流石の良も椅子を強く握る。 


 別に喧嘩をふっ掛けたつもりも云われもない。

 にも関わらず、一方的な悪意を向けられるのは不愉快であった。


『……何か?』


 僅かな怒りの為か、いつもの陽気さは良から薄れる。

 ソレには、アナスタシアは勿論、虎女ですら目を丸くしていた。


 驚きこそすれ、まだ虎女は跪くつもりは無い。


「新しい首領って事はさ、前の首領を倒したって事よね? どうやって?」


 攻撃的な性格故なのか、虎女の質問は個人的なモノだった。

 

「なんとなくだけどね、あんたも改造人間でしょ?」


 ジーッと見つめてくる金色の瞳に、良は息を吸い込むと、被っていた布をバッと剥いだ。


 大幹部達の目に入るのは、特に何の変哲も無い青年だ。


「ああ、そうだよ? 俺も改造人間さ」


 意外な程にあっさりと正体を見せる良。

 そんな姿に、さしもの大幹部達も僅かながらも驚きは見せていた。


「改造人間じゃ駄目なのかい?」


 強めの声に、虎女は笑う。

 微笑みというよりも、不敵な笑みであった。


「いいえ、首領。 別に改造人間が首領であっても問答は無いでしょ」


 値踏みする様な目線は、面白いモノを見つけ出したモノへと変わる。


「質問を戻すけど、どうやったの?」


 問われた良は、腰に手を当てた。


「別に、ちょっと話したら爆発しちまったさ」


 強がる事もなく、良は真実を告げた。


 青年の言葉には、虎女も目を剥く。

 今まで絶対だと考えていた筈の首領は、なんとこの青年によって倒されたという。


 実際の現場を見ていない虎女は、唇を少し噛んだ。

 自分が出来なかった事を容易くやってのけたという者に、動揺が隠し切れていない。


「……ではと、アナスタシア。 わざわざあたし達を呼び出した理由は?」


 この場にて、新首領と戦うつもりは無い虎女は、敢えて話を反らす。

 異名通り、用心深さは野生の虎並であった。


 虎女の声に、アナスタシアがコホンと咳払いを一つ。


「んっんぅ……皆に来て貰ったのは他でもない。 首領交代に付き、組織の目的が更新された。 それを聞いて貰おう」


 言葉を区切り、アナスタシアは良へと目を向ける。


「ん? アナスタシアさん?」

 

 相も変わらず【さん付け】の良に、女幹部の眉間が寄るが、口だけは無理に笑っていた。


「で、では首領……幹部達に新しい目的をお願い致します」


 若干力の籠もった女幹部の声に、良も咳払いを真似てみた。


「えぇ、これから、この、組織は、世界の平和を目指します」


 大幹部を集めた最高会議での宣言。

 ただ、それは些か締まりに掛けていた。

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