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悪の組織、はじめました  作者: enforcer
凶悪!! 惑星滅菌計画!!
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凶悪!! 惑星滅菌計画!! その6


 多少の紆余曲折が在っても、腹が減っては何とやら。

 愛と博士は、早速とばかりに自分達の食事を始める。

 

 ただ、そんな二人を余所に、女は1人でロボットの調べを進めていた。


 健啖家とは言え、別に無神経ではない愛は、チラリと女を窺う。


「あのー、食べるなら、持ってきますけど?」

 

 そう言われた女は、チラリと愛を横目で見る。

 が、直ぐに首を横へと振った。


『気持ちは大いに有り難い。 ただ、私には不要だ』


 暗に【腹は減ってない】と答える女に、愛は首を傾げた。

 一見する分には、女は人間にも見えなくもない。


 が、よくよく見れば何処かがおかしい。


 均整の取れ過ぎた肢体、整い過ぎた顔立ち、どことなく音の違う声。

 そして、何よりも違和感が在るのは、匂いが無いという事だ。

 それら全てが、女ら本当に人間なのかを疑わせる。


「えーと、貴女も、もしかしたら改造人間なんですか?」

 

 年若い故か、歯に衣を着せない愛だが、女は『違う』と答えた。


「え? じゃあ……」


 愛自身もまた、魔法少女という果たして何なのかを説明するのが難しい存在である。

 悩む少女に、女は顔を向けた。


『私が誰か、強いて答えるなら、篠原良の友達だ』

「それだけ、ですか?」

『そうだ。 それがおかしいか?』


 女の言葉に、愛が鼻を唸らせた。


「おかしくなんてないですけど、友達ってだけなんですか?」

 

 愛にとってみれば、恋敵は少ない方が良いのが本音である。

 少女の中には、何がどうであれ【自分が一番だ】という自負があった。

 そんな多感な少女の声に、女は笑う。


『友達は大切なモノだ。 特に、彼はね』


 今度の声には、博士も思わず顔をあげてしまう。


「そう言えば、良さんとは知り合いなんですよね? でも、いつ会ったんですか?」


 疑問を答えを求める博士に、女は目を細める。

 答えを云うのは容易い。


 だが、答えるべきかを迷っていた。


『高橋リサ。 どうにも気になるらしいから一応答えよう。 私と篠原良は友達ではあるが、彼自身も、それを憶えてはいまい』


 女の声には、明らかな寂しさが窺えた。

 口調その物はそのままだろう、だが、声色は少し違う。


 その声に、愛は思わず口を開く。


「それで、良いんですか?」

『良いも悪いも無い。 ただ、私は彼に返し切れない恩がある。 君らもそうではないのか? だからこそ、篠原良を助けるのではないか?』


 愛と博士は、同時に問われ、二人同時に思い当たる節が在った。

 少女二人もまた、タダで良の手伝いをして居る訳ではない。

 他にも、アナスタシアやカンナ、他の幹部や構成員達もまた、各々に様々な思惑は在るのだろう。


 それでも、誰もが良の後ろを歩いていた。

 先の見えない闇の中を、手探りで進んでいく首領の背中を追って。 

 

 そんな想像をした愛はふと顔を上げた。


「まぁ、そうなんですけどね」


 言葉さまんざらでもないという愛だが、顔は違う。

 以前に、自分が助けられた時を思い出し、何とも言えない顔を浮かべ居た。

 笑いを必死に堪える様な、無理をした顔。


 その隣では、博士も似たような顔をして居る。


 博士にしても、良と共に過ごした。

 様々な出来事は、何もかも良1人の手柄でもなく、博士の尽力も多い。

 見えない努力を重ねたからこそ、博士は内から湧き上がる笑みを抑えていた。

 

 そんな二人を面白いモノでも観るように眺める女。


 女にしても、良には恩がある。

 それだけではない記憶も在るが、ソレを知っているのは女だけだった。


 とは言え、昔を懐かしんでいる場合でもない。

 気を取り直し、女はロボットの調整を急ぐ。


『しかし、助かったよ。 敵は頭が良くないらしい』


 ポンと出された声に、博士はウンと鼻を鳴らした。


「ど、どういう意味です?」

 

 博士からすれば、女の意見は納得できるモノではない。

 正体不明の相手のせいで、組織のだれもが窮地に立たされている。

 然も、直接的ではなく間接的にだ。


 ソレほどの相手を、女は【頭が悪い】と一言で片付けていた。


 博士の声に、女がウンと鼻を鳴らす。


『どの様な意図でそうしているのか迄はわからない。 ただ、向こうは非常に非効率的なやり方を好んでいる様に見える』

「わっかんないなぁ、分かるように言ってくれる?」


 良と長く過ごす内に、意図せずして愛の口調は良に似ていた。 

 だからか、女は堪えきれずに少しだけ笑ってしまう。


「ちょっとぉ……」

『すまない。 君を笑った訳じゃないんだ』


 咎める様に唇を窄める愛に、女は手を振って見せた。

 咳払いすると、愛と向き合う。


『向こうは、既に大きい武器を所持して居る。 それはわかるね?』


 問われた愛は「それ知ってる」と生返事だが、女は気にしない。


『此処で大事なのは、向こうはわざわざ時間と手間暇かけてまで直接狙っているという事なんだ』 

 

 そんな説明に、愛は首を傾げた。

 少女の頭の中では、彼女なりの図が生成される。

 

 得体の知れない怪しい誰かが、ドデカい武器構えて地球へ向け、ほくそ笑む。

 その指は、今か今かと引き金を引くのを待っていた。


 そんな図を、愛は思い浮かべる。


「たぶんなんですけど、スナイパーって云うのと同じなんじゃないですか? こんな感じで……」


 少女は、片目を瞑って手だけで狙撃手(スナイパー)の真似をして見せた。

 その愛の意見には、博士がウンと唸った。


「いや、それは……」

『間違ってはいないよ』


 訂正しようとする博士に対して、女は肯定こうていを示した。

 それに対して、愛はガッツポーズを取り、博士はそんなという顔を浮かべる。


『高橋リサ。 そう気落ちしなくても良いんだ』


 女はやんわりと、博士に慰めの言葉を贈った。

 愛はニヤニヤとしながら横を窺い、博士は唇を噛んでいる。


『向こうがわざわざその手間を掛けてくれるからこそ、私達は助かってるんだぞ? 川村愛』


 サッと出された一言で、愛の顔からニヤニヤの笑みが失せた。


「………それは、なんで?」

『もし、私が向こうの頭脳をしていたなら、とっくに落としてるからな』

 

 場の空気が一気に強張る。

 が、ソレをした本人は気にした様子は無く、寧ろ飄々(ひょうひょう)としていた。

 

『考えても見ろ。 数百メートルの砲弾だぞ。 狙った場所から例え1キロ離れていようが、千キロ離れていようが、効果は余り変わらないんだ。 要するに、相手を殺せば結果は同じなのだから』


 女の説明に、愛は何とも言えない顔を覗かせる。

 実際には浮かんで居ないが、彼女の頭上には【?】が在っても不思議ではなかった。

 

 対して、受けた説明を理解した博士は、怪訝(けげん)な顔を見せる。


「でも、それならどうしてそんな無駄な事をすると想います? 良さんが憎いなら、一分一秒だって放っては置かないのでは?」


 博士の指摘に、女は作業を止めると肩を(すく)めて見せた。

 

『恐らくは、向こうは生き物なのだろうね。 人間に近い、知的生命体という所だろう。 ソレがカニなのか、タコなのか、姿までは見えないが』


 直接的に調べた訳でも無いにも関わらず、女は大首領の正体を想像していた。

 しかしながら、その理由が博士にはわからない。


「どうして、生き物だと? まだ、姿も見せてないのに」

『どうしてか? 簡単だよ』


 そう言いながら、女は歩き始めた。

 片手を軽くあげ、細い指先でクルクルと円を書いて見せる。


『恐らくだが、何度も首領に負けて、頭に来ているんだろうね』


 女の話には何の根拠も無い。

 が、何故だか博士は勿論、愛にも納得が出来てしまう。


『直撃などさせずとも、適当に放り込めば勝てる武器を持ちながらも、向こうは何故か何度も何度も執拗に弾道修正を重ねてまで、直撃に拘っている。 もしも、大首領とやらが機械なら、この様な愚行を許すはずがないからな』


 そう言う女は、ヤケに楽しげであった。

 女の声がどうであれ、博士は博士なりに想う事もある。

  

「考えても、やっぱりわかりません。 恐らく、向こうもそれが無駄である事は分かっている筈なのに」

『そう難しく考える事はないと想うよ、高橋リサ。 恐らくは、それほどに篠原良が気に入らないんだろうね。 それこそ、意地でも直接当てないと気が済まんのではないか? 頭ではわかっていても、体は別の事をする。 それが生き物の特権だろう』 


 大首領の正体に頭を巡らせる博士に対して、愛は女を見ていた。


「じゃあ、貴女は機械なんですか? さっきからの話を聴いてると、なんか、そんな感じ」


 良に似てきたせいか、愛は余り事を難しく捉えようとしない。

 悪く言えば、思った事がそのまま口から出て行くという事にも繋がる。


 この場に置いて言えば、愛の一言で女は目を見開いていた。


 たっぷり数秒間、女は凍り付いた様に動かなかった。

 その様は、まるで精密機器のフリーズにも似ている。

 瞬き程の時間が過ぎた頃、女はハッとした様に目を伏せて、片腕を庇う様に掴んだ。


『……その質問は、出来ればしないで欲しい』


 絞り出される様な細い声に、愛は慌てて両手を振った。


「あ、ごめんなさい! そう言う意味で云ったんじゃなくて」


 取り乱しす愛の肩に、博士の手が置かれる。


「愛さん。 落ち着いてよ」

 

 友人に声を掛けながら、博士も女へと目を向ける。


「貴女の正体なんてどうでも良いことですよ。 だって、友達でしょ?」


 とっさに出た言葉ではある。

 が、嘘偽りも、打算も無い、博士の本音であった。 


 ソレを受けた女はスッと顔を上げるが、其処からは、寂しさは消え去って居た。


『やはり、似てくるんだな』


 何を意図してそう言ったのか、それは女にしかわからない事だ。

 事実、愛と博士は自分達が何を云われているのかを理解して居ない。

 が、それは今説明しなくとも良いことで在った。


『とにかく、向こうがせっかく時間をくれたんだ。 早速だが、高橋リサ』

「え? はい」

『動かしてみよう』

「何をですか?」


 なかなか答えに辿り着かない博士に、女は自分達が居るモノを指し示す。


『コレに決まっているだろう? その為に用意もしたのだから』


 そう言うと、女は壁の一部を弄る。

 人の目ではただの壁にしか見えなくとも、別の視界を持つ者には見えてくるモノが在った。


『やはり、私では動かせない……か。 高橋リサ』

「は、はい!」

『君がやるんだ』

 

 唐突のご指名に、博士は思わず立ち上がると自分を指差す。


「……私がですか!?」


 まさか、いきなり何をしろと云われるとも想ってなかった博士にとってみれば、今の出来事は青天の霹靂であった。

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