理由はわからない
最近になって少しだけ、マリーさんとお話しするようになった。
村で一番年の近いお姉さんで、前から気になってたから嬉しい。……でも、それなのにちょっと問題が起きてる。
最初は、わたしがなにかやっちゃったのかと思った。
だけど、しばらく様子を見ててわかった。マリーさんがこうなってるのは……。
今日もわたしは、自分の店からこっそり二人の様子を見てる。
「お兄さん、最近お忙しいみたいですね」
「えっ」
「毎日毎日、違う人のところに顔を出しては、口説くのに必死のようではないですか」
「待ってマリー、その言い方だと完全に違う意味に聞こえるよ」
「いいえ、違ってなんかいませんよ。私を子ども扱いするくらいです。ここの人たちは、さぞかしお兄さんの好みなのではないですか?」
「え、本当にそういう意味で言ってたの……。そんなわけないでしょ」
「そうだといいんですけど」
「あー……」
えっと……マリーさんは、このごろ機嫌がよくないみたい。
詳しくは聞いてないんだけど、翔さんとなにかあったらしくて……。
その翔さんは、このところずっと、みんなのお店を回ってる。
売上を伸ばすために、店ごとに別々の助言をして。
本当にすごいと思う。
商品の置き方とか、しかくてきこうか……とか。ここでもできるようなことを、あんなに知ってるのもそうだし、何よりあんなにも、たくさんお話しできるのが……すごい。嫌な顔をされてることも多いのに。
もうここ数日だけで、わたしの一年分くらいはお話してると思う。わたしも、あんなふうに速く話せるようになりたいな。
そんなわけで、翔さんは毎日頑張ってるはずなんだけど……マリーさんはあんな感じ。でも、なんだか甘えてるみたいにも見える。
ぶつかり合っても平気な関係……みたいな。
マリーさんって、こんな性格だったんだ。これまではソウさんとかと、真剣な顔でお話ししてたから知らなかった。
少し仲良くなったばかりだけど……ちょっとだけ、苦手かも。
たとえ悪意は感じなくても、言い合ったりは怖いから。
それでも、一人で居たいわけじゃない。
やっぱり……まずは自分が、もっと強くならなきゃだめだよね。
「うーん……」
あ、翔さんがこっちに来る。
なんだろう。今日はもう、お店の話はないはずだよね。
翔さんは、そのままわたしの前で言った。
「ねえアンシア、ちょっと相談したいんだけど」
さっきまで、自分のことで精一杯だと考えていたのを思い出す。
だから、えっと……わたしなんかにそう言われても……。




