夢の光景
一目見て、痩せこけた風景だと思った。
今日日、この国でこんな景色はありえない。国内ではないのだろうか。
建物が少なくて田舎だとか、そういうことだけではなく、土地自体が痩せているように見えた。
霞がかったような視界のせいで、ひどく見えているだけかもしれないが。
見ているのは、画像ではなく映像のようだ。
初めは殺風景なのもあってわからなかったが、場面は移り変わり始める。
現れたのは、光と……闇、と言っていいのだろうか。見たことのない暗い何かが、何もない中空に広がっていく。
それに対抗している光は、雷のように見える。
もっとはっきり見ることができれば……。そんな願いに応えるかのように、視界がそれに近づいていった。
なんと、この雷を発していたのは人間だった。
そうか、これはファンタジー世界の映像なんだな。
雷の主である人間は、風景同様に痩せた若い男性だった。
正にその身一つと言ってもいいくらいの姿で、暗い、闇の塊のような何かと激しく競り合っている。
身に付けているのはボロボロの服と、簡素な剣くらいのものだ。
相手は随分と強大に見えるのにもかかわらず、男はこんな装備。どうにもならなかったのだろうか。
明らかにに劣勢……。その見立ては正しかった。
あれよあれよという間に、男が雷の光ごと暗い塊に飲み込まれていく。
最後の力を振り絞ったのだろう。大きく光ったと思った次の瞬間、ぼろぼろになった男が落下していき……。もはやその身体は、人と呼べないものになっていた。
暗い塊を退けはしたものの、これではとても勝利とは言えない。
これは……いったい何を見せられている?
考えられるのは……――
―― サイゴノヒトカケラ――
何の前触れもなく、思考の中に割り込むように、誰かの声が聞こえた。
聞き取れた部分をそのままの意味で捉えるなら、漢字で表すと“最後の一欠片”になる。
これも、優先順位を決めるための要素の一つ……。
意識が覚醒していく感覚がある。
でも、眠りに着いたはずの場所とは違う。温かさか、もしくはぬくもりと呼ばれるようなものに包まれている。
ここは、いったい……。