崩れた場所7
……とはいえ今のは、少しばかり言い過ぎましたか。
お兄さんは、深々と頭を下げたまま、そこで動きを止めてしまっています。
私はともかく、お兄さんがここまでへこんでいるのは想定外でした。
どうやら今度は、励まさなければなりません。本当に私は、何をやっているのやら。
「あーもう、お兄さん顔を上げてください! なんだか色々背負い込んでるみたいですけど、私はお兄さんに感謝だってしてるんですよ」
「感謝……?」
「そうです。もともとうちは限界でしたし、お兄さんに出会わなかったら、とっくに飢え死にしていたかもしれません」
「でも、上手くどうにかできてたかもしれない」
「それだけじゃありません。私、お父さんのことは大好きですけど、あの通りあんまり話をする人じゃないですからね。話をする相手ができて、少しは嬉しかったんですよ」
「少しはって……」
我ながら、ひねくれた励ましだと思います。
それでもきっとお兄さんなら、これに乗ってくれるはず。そう思って口にしました。
気恥ずかしいのを我慢して、お兄さんのために言ってあげたんです。
そう……お兄さんなら、困ったように笑ってくれる。
『そう言ってもらえるなんて』と、笑顔を見せてくれるはず。
そうなれば、あとは私も一緒に笑える。きっとそのまま立ち直れると。
……でも、何か様子がおかしいです。
お兄さんの表情は晴れず、何より下を向いたまま。
普段の底抜けの明るさが、どこかへ行ってしまったようで。
もしかして……私が思っているよりずっと……。
「お兄さん!」
私は、我慢できずに叫びました。
片手を掴んで、しっかり私と向き合わせます。
「お兄さん、ちゃんと私の声、届いてますか?」
そして、まさかと確認をしてみれば……。
「も、もちろんちゃんと聞いてる。今まで迷惑かけて、本当に悪かった」
返ってきたのは、私を否定する言葉。
自分の中で張っていた……感情の糸が切れた気がしました。
「やっぱり、わかってない……!」
「いや、そんなことない」
「だったらなんで! さっきからお兄さん、私が言ったことに、でもとか、否定してばっかりで、ちっとも聞いてくれてません!」
「あ……」
ちゃんとできると思っていたのに。
もう、泣くつもりなんてなかったのに……。




