崩れた場所3
やりすぎだったかな。
でも、あれくらいはやらないと、結局……。
「っ!」
走り去ってしまったマリーさん。
それを見て、翔さんも追いかけようとしてる。
「待ちな」
「……ソウさん」
そんな翔さんを、ソウさんが呼び止めた。
「少し、話をしようじゃないか」
どうして?
マリーさん、泣いてた。追いかけた方が……。
「ソウさん、今はそれどころじゃないんです。マリーを追いかけないといけません。ソウさんだって見ていたでしょう?」
「はぁ……そうだね。見ていたよ」
「じゃあ、俺は行かないと……!」
そうだよ。
早く追いかけてあげてほしい。
わたしは無責任に、そんなことを考えていた。
「見ていたから、話があるって言ってんだよ。落ち着きな」
「だ、大丈夫です。おかげさまで落ち着きました。だからもう、マリーの所へ……」
うん、早くそうしてほしい。
「じゃあ聞こうか。そう言うからには、なんて声をかけるかも、もう決まってるんだろうね? あからさまに慌てちまって、とてもそうは見えないよ」
「……」
翔さんは図星を突かれたのか、勢いを削がれてしまったみたい。
そして、そんなソウさんの指摘は、わたしにも突き刺さってきた。
わたしだって……ううん、わたしはもっと、なんて声をかければいいのかわからない。
……でも、本当はわたしこそ行くべきなんだよね。
こんなことをしなきゃいけなくなる前に。
ただ、どこかでこっそりお話しできればよかっただけなんだよね。
でも、もう気持ちはくたくたで……。
「ニイちゃん、あんた、そんなにマリーちゃんが心配かい」
「そりゃあ心配ですよ!」
「ふぅ……。まあ、確かにまだまだ若いし、未熟なのも事実ではあるけどね……。あの子も……」
……あの子?
わたしはドキリとした。
今の言い方は、マリーさんを指しているんじゃない気がして。
「ソウさん、やっぱり俺、まずはマリーを」
「アンシア! あんたもそんなに気になるんなら、さっさと動きな!」
「っ!」
やっぱり当たってた。
さっきの『あの子』は、わたしのことだったんだ。
でもなんで?
今、そわそわしながら見てたことに気づかれただけ?
それとも、全部ばれてるの?
わからない。
わからないけど……。
苦手な大声だったのに、チカラみたいなの、貰った気がする。
今このまま行かないと、わたしは絶対に動けない。
また隅っこで、下を向いてることになる。
……行こう。
……行って!
わたしは、弾かれるように走り出した勢いのまま……マリーさんの背中を追った。
これは、わたしが変わる貴重な機会。
頑張ったつもりだったけど、本当はそれが遅れた分、まだ足りないってわかってた。
翔さんに……他人に任せず、もっと自分で……っ。




