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現状打開作戦

 そして私は今、後悔しています。


「お兄さん……ふざけないでください……!」


 所は変わり、いつもの市場。

 私は怒りで、いくらか目が覚めました。


「ふざけていないよ。正直、今できることは少ない。その中でなら、一番いいのはこれだと思う」


 お兄さんは、どうやら本気で言っているようです。

 冗談だとしても許せませんが、そんなのもっとたちが悪い。


「私、昨日話したばかりですよね? お父さんの武器は、とっても、とってもすごんだって……! 本当は銀貨90枚程度で売るような、なまくらじゃないって!」

「うん。ちゃんと覚えてるよ」

「じゃあなんで! 古い武器だけとはいえ、さらに半分の銀貨45で売るなんて、正気ですか!」


 私は昨日から一晩かけて、これも確かに説明したはずです。

 うちの店の現状。

 ずっとずっとギリギリで、少しでもおかしくなればもう立ち行かない。

 本当は、価値の通りに売って儲けを出したいんです。

 でもそんな価格で店に出したところで、たまたま村に立ち寄った人が買ってくれる可能性はほぼありません。あの道ができてからは特にそうです。

 だから、本当に仕方なく値を下げて、なんとかやりくりできる状態を維持してきたのに……。


「……納得し辛いのは、察するよ。でも勘違いしないでほしい。確かに俺は、ここに並ぶ剣の価値を見極められる目は無い。でもだからって、マリーの言葉を信じていなかったり、ましてなまくらだ、なんて思っているわけでも無い」


 昨日は、お兄さんを信じてみようと思いました。

 それはこの人が、この世の中を救ってくれるかもしれないから。

 何かの力を持っているのかもしれないから。

 そうじゃなかったら、会ったばかりの人に店を任せてみようだなんて思いません。

 それなのに、提案してきたのがこんな話だなんて……。


 いくらこの村の外すらよく知らない私だって、馬鹿ではないつもりです。

 そんなことをすれば、物によっては元手すら回収できません。今はお金になっても、やがて何も残らなくなります。


「なら……どうしてです?」


 私はなんとか、努めて冷静に聞くことができました。

 でもこの人のためではありません。

 こうなってくると徹夜させたのだって、私をいいように騙すための準備だったのかもしれないからです。現に私は、今も少し頭が回っていません。

 だからこそ、冷静にです。


 しっかりと気合を入れ、私は説明を聞いていきます。


「まず、べつにこれが店を立て直す策というわけじゃないんだ。完全に立て直すには、一歩一歩やるしかない。これは、準備みたいなものだよ」

「準備……?」


 とりあえず、さっきの自体が打開策……などという問題外の話ではないということですか。


「うん、説明するね。もしよかったら、準備をしながら話そう」


 この人は……なんという毒気を抜かれる笑顔でしょうか。

 というか、準備をしながらって……私はまだ、了承してないんですからね!

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