お兄さんを引率して4
いつもの定位置に腰を下ろし、私はその理由について、お兄さんに説明を始めました。
「そんなわけで、基本的に男性は村に居ないんです」
「なるほど、徴兵のせいで……」
「はい。男の人は軒並みそうです。一部、例外はありますけどね」
「例外って?」
「例えば、病気だったりとかですよ。それから怪我とかです。うちのお父さんみたいに」
「ああ……」
さっきから、妙に察しがいいですね。
村に男性が居ないことも、説明する前から気づいていたみたいですし……。
意外と鋭いほうなんでしょうか。
「それから、何かそれなりの地位がある場合もですね。お医者様とか。あとは、反対もあります」
「反対というと、女性でも兵になることがあるとか?」
「そうです。兵とは限りませんが」
「他にも何かあるの?」
「例えば、魔術師だったり、兵は兵でもフリーで傭兵として戦果をあげたり」
「魔術師! そういえば聞いたこと無かったけど、魔術はやっぱりあるんだ!」
うーん……。
あまりの元気さに、わかっている私ですら引きそうです。
「え、ええ……あります。というか、そんなに驚くことですか?」
「前の世界には無かったからね」
「え! 逆にそっちが驚きです」
これは、お兄さんとの噛み合わなさが、少し理解できた気がします。
お兄さんが魔術を使えないのはわかってましたが、まさか存在自体ない世界があるなんて。魔術は知っているようでしたから、てっきりお兄さんが訳有りで使えないのかと。
この世に生まれて、寝返りを打ち、はいはいをして、歩いて話して走って……。
そして、魔術を使う。
あって当たり前の、成長の一部だと思っていました。
「当たり前だけど、他にも前の世界とは結構違いがありそうだなー」
どうやらそのようです。
ある程度は毎晩のおしゃべりで話したと思っていたのに、まだまだ足りないみたい。
「まあ、これからどうなるかはわかりませんが、目の前のことをしていくしかないですよ」
つまり……。
私もより一層、お兄さんの突飛な行動には注意しなければならないってことですね。
これはなかなか……大変そうです。




