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その黒っぽい何かは、やがて人の形となった。
髪をきれいに七三に分けてスーツを着てめがねをかけた、痩せて小柄な中年男性の姿に。
そしてそいつはやけに青白かった。
どう見ても生きている人間ではない。
「あっ、あれは?」
「この子の父親」
「はい?」
「この家の主人。この子の父親で、この子を殺した殺人鬼。まさかこんなところにいるなんて、考えてもみなかったわ」
「……」
「それにしても物凄い力ね。強い霊力は普通隠しきれないものなんだけど、見事に隠し通していたわね。すごいわね、あなた」
真琴が俺ととしやを見た。
「逃げて」
「えっ」
「えっ」
「見ればわかるでしょう。あれだけのおぞましい霊力。あなたたちにもはっきりと見えているはず。あいつは危険よ。しゃれにならないくらいにね。だから逃げて」
「……」
「……」
「はやく逃げなさい!」
「はい!」
「はい!」




