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「……」
それからとしやは黙ってしまった。
時折真琴が、子供が殺された細かい経過とか正確な場所とかを聞いてきたが、すすんで答えると思っていたとしやが何も言わないので、かわりに俺が答えた。
としやは結局件の廃家に着くまで、一度も口を開かなかった。
例の家に着いた。
車を降り、俺は周りを警戒した。
見える範囲には誰も人はいなかった。
「何をしてるの?」
真琴に聞かれて俺は言った。
「いや、あの家には近づくなと両親からきつく言われてるものですから。見つかったらまずいんですよね」
「そりゃそうでしょうね。ご両親の判断は正しいわ。で、それを破って入ったから、とりつかれてしまったのよね」
「……そうです」
「そういう事情なら、見つからないようにさっさと行きましょう」
「はい」
「……」
としやはこの場においてもまだ口を閉ざしたままだった。
家に入った。
真琴が眉をしかめる。
「うーん、これは少しでも霊感のある人なら絶対に近づかないわね」




