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「その子があなたにとりついた場所よ。今からね」
「……」
「じゃあ行きましょうか」
用意して三人で部屋を出ると、真琴が「ちょっと待ってね」と言って中に入った。
待っている間聞こえてきたのは、打撃音とさとりの悲鳴だった。
それがしばらく続き、静かになったかと思ったら真琴が出てきた。
「お待たせ」
移動手段は真琴が運転する車だ。
俺ととしやは後部座席に座らされた。
としやは助手席に座りたがったが、真琴がそれを拒否した。
車が走り出し、しばらくしてとしやが言った。
「なんでその子がとりついた場所に行くんですか?」
真琴が答える。
「うちでも出来ないことはないんだけど、その子が死んだ場所でやったほうが確実なのよ。半ば悪霊と化しているから、失敗は許されないしね」
「そうですか」
としやはそのまま黙って下を向いた。
そして何かを考えていたようだが、やがて顔を上げると言った。
「すみません。俺、真琴さんのような霊能者になりたいんですけど、弟子にしてくれますか?」
すると真琴が笑った。
車の運転は大丈夫なのだろうかと心配になるほどの、けっこうな勢いで。




