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「やってはいけないこと……とは?」


「それはね、払う力が無いのに霊を払おうとしたのよ。さっき君が言ったけど、霊を見るだけならそれほどの霊力は必要ないのよ。修行なんてしてない、何の知識も経験もない一般人でも、少しの霊感があれば見るぐらいは簡単にできるわ。本物の霊能者から見れば、初歩のそのまた初歩でしかないのよ。野球で言えば、とりあえずキャッチボールくらいなら出来ます、程度のことね。しかし霊を払うとなると、話は全然違ってくるの。見てるだけならそれで攻撃を仕掛けてくる霊なんて、あまりいないわ。て言うか、見てるだけなのに攻撃してくる霊なんて、はなから攻撃する気満々なのよ。見てなくても攻撃してくるわよ。……いっぺんにしゃべったけど、これまで私が言ったこと、わかる?」


「はい」


「わかります」


「じゃあ続けるわね。それでこの世に留まっている霊は、この世に留まりたくて留まっているのよ。恨みとか未練とか。それをあの世に送ろうとしたら、そりゃ霊だって怒るわよ。全力でこちらを攻撃してくるわ。対処法としては霊を説得するという手もあるけど、素直に聞く霊なんてめったにいないわ。最終的には力づくで送ってやらないと」


そこまで言うと真琴はお茶を口にした。


そして続けた。


「そうなると話は簡単ね。どっちが強いか。それだけよ。霊能者が強ければあの世に送り出せる。霊が強ければ送り届けられないわ。その上場合によっては憑かれた人、あるいは霊能者、あるいは両方が命を落とすことになるのよ」


真琴は俺を見た。


「痛かったでしょうね」


「ええ、痛かったです」


「あの世に行きたくない霊が怒ったのよ。もともとは子供の霊だしいまでもその原型はとどめているけど、五十年以上もこの世に恨みつらみで留まっていたから、半ば悪霊と言っていい存在になっているわね。姉なんかに払えるしろものじゃないのよ。そうでしょう、ねえちゃん」

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