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としやもそう思ったのだろう。
少し興奮気味に言った。
「ええ、そうなんですよ。困っているんです。何とかなりませんか」
「いくら出せるの?」
思いもよらぬ言葉が返ってきた。
俺ととしやは思わず顔を見合わせた。
が、やがてとしやが言った。
「一万円ですけど」
女の眉間にしわがよった。
「一万円? たったそれだけなの。安いわねえ。この私もずいぶんと安く見られたもんだわ。情けない。ああ、情けない」
「……」
「……」
「まっでも、子供だからしょうがないわね。一万円でやってあげるわ。この私が。この天野真琴が。ありがたいと思いなさいね」
「……」
「……」
「なにぼうっとしてるのよ。何か言うことがあるでしょ」
「あ、はい。ありがとうございます」
「ありがとうございます」
「じゃあその一万円、さっさとよこしなさいよ」
俺が一万円入りの封筒を取り出すと、女がそれをひったくるように取った。




