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としやが言った。
「あのう、俺の友達か何かにとり付かれたみたいなんですけど」
「そうなの。お約束していたかしら」
「いえ、それはないんですけど」
女がにまり、と笑った。
「いいわ。うちは飛び込みも珍しくはないから。お入りなさい」
「はい、失礼します」
「失礼します」
中は思ったよりも広かった。
高級というわけではないが、落ち着いた感じのインテリアで、女性らしい部屋と言えよう。
と言うかあまりにも一般的過ぎる感じで、有名な霊能者が住んでいると思わせるような点は、何一つなかった。
「そこに座って」
女が指差すソファーに二人で座った。
女は前に座ると言った。
「こっちの子ね。子供の霊が憑いているわ。それにしても珍しいわね。右手の手首から上だけの霊なんて」
それを聞いて俺は驚いた。
初対面だしアポなしだし。
俺の霊症を事前に調べるなんてことは、とても出来やしない。
ちゃんと見えているのだ。
本物だ。




