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ある部屋の前で止まったからだ。
追いついて見てみると、部屋番号は203で、表札は天野となっていた。
「ここだここだここだここだここだ」
「うるさいよ。こんなところで騒ぐな」
「わかった」
その一言で、意外にもとしやは静かになった。
その目は相変わらずぎらぎらしていたが。
としやが呼び鈴を押した。
「はい、どちらさま」
女性が出てきた。
それなりの顔立ちではあるが、中の上と言った感じの女性が。
しかし俺が違和感を覚えたのは、顔立ちのことではない。
どうみても三十歳を超えているとしか思えないのだ。
四十歳を超えているとしたら「お若く見えますねえ」と言うことも出来るが、とても二十四歳の顔には見えなかった。
「高い徳のある霊能者は、実年齢よりも若く見える」ととしやが言っていたのを聞いたことがあるが、それだとしたら完全に真逆である。
俺が感じていることをとしやも感じたのだろう。
先ほどまでもテンションは消えうせ、輝いていた目も暗く沈み、すっかり大人しくなった。
「あのう、どちらさま?」
二人とも何も言わないので、女がもう一度聞いてきた。




