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俺は思わずそれに手を出した。
が、俺の手がとどく前に一瞬にして消えてしまった。
掴まれている感触はなくなり、足首あたりを触ってみてもなにもなかった。
俺はしばらく考えたが、やはりとしやに一言言っておこうと思い、電話した。
「……というわけなんやけど」
「うーん」
「どう思う?」
「それは多分、多分やけど、明日高知に行くからとちゃうかな」
「えっ、まさかお払いされたくないから高知に行くん、邪魔してるん?」
「そんなことはないと思うけど。ただ単におまえの気持ちの変化を読み取って、それに反応してるだけとちゃうかな」
「どうしてそう思う」
「うーん、なんとなく」
「なんとなくかい」
「まあ、ええやん。明日高知に行ったらみんな解決するわ」
「そんならええんやけど。でも寝ている間に、首絞められたりせんかな?」
「それはないやろう。多分」
「多分なんかい」
「大丈夫やと思うわ。そんじゃおやすみ」
そう言うととしやは電話を切った。
しかたがないので俺はそのまま寝た。




