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「大人があそこに近づくなと言ったわけが、ようやくわかったわ。あの辺では殺人事件なんて、いくらネットで探してもこれしか出てこんかった。あの地区ではこの事件は、タブー中のタブーやな」


「そうだったんやな……」


「そんで子供の右手首だけ見つからんかったって、書いとるやろ」


「書いとるけど」


としやは俺をじっと見つめると、いつになく真剣な眼差しで言った。


「おまえがいつも踏んどる目に見えない何かやけど、大きさとか感触とか、子供の右手首くらいなんとちゃう?」


「!」


俺は考えた。


あの大きさ、あの感触。


子供の右手首と言われたら、そうかもしれないと思う。


そうなると見つからなかったその右手を、俺はいつも踏んでいるということなのか。


俺が何も言わないでいると、としやが言った。


「まあ、それはひとまず置いといて、肝心な霊能者の話をしよ」


「えっ、見つかったんか?」


「昨日おまえが人里は慣れた山奥で修行しとるとか言うたとき、ちょっとびっくりしたわ。山、とくに大きい山には、まあ山によっては例外もあるけど、だいたいにおいて山は大きくて深いほど霊的なエネルギーがあるんやな。富士山が日本一の霊峰とか言われてるんも、そういったわけやな」


「……それで」


「だから大きくて深い山があるところには、歴史的にみても徳の高い霊能者がいる場合が多い。例外もたくさんあるけど。親に内緒で中学生がそんな人に会おうと思たら、やっぱり近場でないとな。大きくて深い山がたくさんあるといえばここから近いのは、広島県と高知県やな」

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