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僕の家の近く、田んぼの真ん中に一軒の空き家がある。


僕が生まれたころにはすでに空き家になっていて、今では立派な廃墟となっていた。


僕が今よりももっと子供だったころ、母に聞いたことがある。


「あの家、なんなん?」


すると母は、「あれは昔っから人がおらんのや」と言って、それ以上詳しく話してはくれなかった。


ためしに父にも聞いてみたところ、同じような反応だった。


子供たちの間では幽霊屋敷呼ばわりするものもいたが、なにせ東西南北を全て田んぼに囲まれているために、風通しと日当たりは抜群なので、日中に見るとおどろおどろしさは皆無で、ただの朽ちかけた小さな家にしか見えなかった。


一応、土地と家の持ち主はいるのだが、どうやら関東のほうに住んでいるらしく、この家は長い間完全に放置しているようだ。


まわりの田んぼは僕の叔父さんと近所の人の持ち物で、この家の持ち主とは何の関係もない。


ただ時折思い出したように、父や母や叔父さんや近所の人に「あの家には近づくんじゃない」と言われるのが、ふに落ちなかった。


理由を聞くと「もう崩れかけとるけんなあ、危ないやろ」とのことだが、確かに古いがちゃんとした木造建築で、今日や明日に壁や天井が崩れ落ちるようには見えなかった。


としやに聞くと「僕もかあちゃんに、あの家には近づくなと言われたわ」とのこと。


どうやら他にも同じことを言われた子供は何人もいたようで、良い子はその言いつけを守っていた。


僕も守ってはいたが、それは言われたことは守らないといけないと思ったわけではなく、ただ見つかって怒られるのが怖かっただけなのだが。


とにかく本道から家までの間に身を隠す場所がないので、いつ誰に見つかっても不思議ではない。

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