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アルシミ―・アトリエ  作者: 水無月るいか
8/30

天才少年料理人

中東と聞いて、移動が飛行機から車に代わったところでアラビア語ができないことに今更ながら気づいたが

情報によると英語を使っているので問題はないらしい。


「でも私の英語力で話できるかなー・・・」

「僕や銀子さんとも何度か英語で話たりはしたじゃないですか、イントネーションに多少の違和感はあっても

元々が僕らは外国人なので疑われることはないですよ」

などと金髪は目立つのか黒いストレートヘアーの髪のカツラを着用し、コンタクトで茶色の瞳となったカレンに右から励まされる。

中東という場所のこともあり、西洋人のカレンは人種を隠して行かなければならないので苦労をしているのんだなと実感。


「今回は戦闘になる確率も低いようですから、現場の体験だと思って安心してくださいね」

(そうはいうけど・・身分を偽ってというのは緊張するんだよね・・)


いざとなったらフォローするとこの暑いのにキラキラ輝きながら、天音の緊張を解き解こうとしてくれている。

そう言われてもやはり緊張はするし、どんなクレアーレなのかも内心気になりながら舗装されていない土の道を進んでいくが

あまりの揺れに気持ち悪そうになっていると、ずっと黙っている守はもしかしたら体調が悪いのかと横目で見れば


手が、僅かに震えているようだった。


(・・・守が震えている、そうだ・・戦闘になるかわからないけどならないって保証はないから・・)

中東と聞くと戦争のイメージもあり、銃弾の嵐とテロというキーワードがちらついてしまう。

しかも守は初めての戦闘、あの時のような咄嗟の勢いのようなものもなく準備はしている分、緊張度も現場に近づくにつれて増していく。


(くそっ・・・全国大会の決勝戦だってこんなに緊張しなかったのに・・・!)

震えている弱い自分を隠したくて、クールなフリをしてずっと黙っていた。

天音に知られるわけにはいかないし、カレンはその何十倍も知られたくない恥ずかしい姿。


どうにか精神統一をしようと心の中で精神統一用に覚えたお経やらを唱えていたが、さりげなく天音が守の手を握ってきて全部吹っ飛んで行った。


「おっ・・・おい・・」

「・・私も緊張してるよ、でもさカレンの言う通り簡単なものだっていうしさ」

薔薇とて天音と守が初心者だとわかっているのに、ブラック企業のようにいきなり難関度の高いミッションを押し付けたりはしないはず。

昨日は何かあってもいいように、天音は日本刀や西洋剣の構造や形を頭に入れるだけ入れてきた。


「頑張ろう」

守の手に伝わってくる手の震え、天音もできる限りのことはしても緊張と恐怖が入り交じって震えているのだ。

カレンは踏み込むことのできない二人の信頼を感じ、何も口に出さずに見ている。


緊張しているのは天音も同じだと知ると、自然と落ち着いてきていつもの守を取り戻したタイミングで目的地に到着。




「うわぁ・・生で見ると宮殿みたいだね」

白を基調として豪華絢爛のアラブ系の豪邸に息を飲む天音。

案内役とは此処でお別れ、多めのチップをカレンは渡すと男は仕事は終わった排気ガスを天音達に吹かせて去っていく。


「裏口から行きましょう」

カレンを先頭に天音達は進んでいく。

設定は知り合いの紹介で働くことになったという設定の出稼ぎ労働者、片言の英語を会話可能。


裏口にいた男に話しかけると、紹介状を見せただけですぐに現場投入されることに。

仕事は簡単な雑務だけだと説明をされていると、遠くから女子の視線を感じると物陰からピンクの視線を送られている送受信先は守とカレン。


(そうだ・・守もカレンもイケメンなんだね・・迂闊だった)

次からは顔も隠してもらうべきかとも考えていると、女子と男子で着替えを渡されると別々の部屋で仕事着に着替えさせられた。


「まっ・・まさか異国の地でこんな姿になろうとは・・」

渡された白と黒の衣装は、まさしく秋葉原でビラ配りをしていたメイド服そのもの。

スカートは膝下までの長さで白いエプロンに黒いスカートと、半袖の白いワイシャツ。


男子は黒いズボンに、白のワイシャツに黒いエプロンだ。

まさかコスプレする羽目になろうとは予想していなかったのか、守は苦虫を口の中で潰した様な変な顔をしている。


「新人、こっちだ」

ボーイのリーダーであろうアフロな黒人に案内されたのは、この豪邸の主だ。

ぽっちゃり体系の男に油田で栄えただけに、高たんぱくな脂が取られるのだろうなと遠い目で天音は考えていた。


「お前ら、前のメイド達は俺の現金盗んで逃げ出しやがったんだ。お前らも同じことをしたらタダじゃおかねぇからな!」

「「「はぁ・・」」」


思わず変な声で返事をするが内心ワイン飲みながら言うなよ、と3人は同時に心の中でつぶやいたという。

犯罪が目と鼻の先で行われているんだなと、仕事を教えてくれるメイド長が現れると主様の態度が急変し礼儀正しく座り直した。


「こんにちは、私がこの方が子供の時から仕えているエリザベートよ」

茶髪の髪を三つ編みにして一つに纏めた美人が現れた、聖母のように微笑むと天音も軽く頭を下げる。


「若い子達が来てくれて助かるわ、今いろいろと立て込んでいてね、いきなりで悪いけど力仕事とかお願いできるかしら?」

「わかりました、では」

カレンは切り替えが早いのかエリザベートとすぐに親しく会話できるようになった。

守もこれは仕事なのだと言い聞かせて、エリザベートについていく。


天音はというと、同じくエリザベートの美しさにとろけていたアフロ長に連れられて厨房へ。

今日は大切なお客様が来る日で朝から仕込で大忙し、天音もその荒波に巻き込まれるようにして皿洗いやら食事を運んだりと大忙し。


(あっ・・そうだ!!確かに見つけたクレアーレって厨房にいるって・・)

「おい!!お前さっさと運ばないか!」

「はっ・・・はーーーい!!」


ピストン運動のように厨房と食堂を行ったり来たり。

ようやくデザートタイムになりかけて落ち着き始めたところで、驚いた。


一人の少年が大人に混じって調理をしている。

自分の頭ほどのフライパンを片手で使いこなし、幾つもの料理を作っている。


最後のデザートに至ってはインスタ映えでもしそうな飴細工のムースを一人で仕上げていた。


「デザート完成っと。これ頼むわ」

「は・・はい・・」


「いいよ、普通に話しても真面目だな。俺の方が年下なのに敬語だなん」

生え変わったばかりの永久歯を見せて笑うのは10歳前後の褐色の肌の男の子だ。

黒い髪を後ろで軽く纏め、この厨房で自分の顔ほどの鍋もこなしている。


「あの子・・凄いですね。あんなに若いのに」

デザートを届けた帰り道に、同じメイドの日系人と他愛もない会話をしている。

時刻はすでに夜になり満月の光が天然のライトとなって、廊下を明るく照らしていた。


「そうなのよ、何処かで修行したわけでもないのに腕は一流ですっごく美味しいんだから」

一度食べたら病みつきになってしまうくらいの美味なる食事、コックが同じ食事を作っても同じ味にはなないのがまた不思議。

両親は病気で死んでしまい身寄りもなく、一人ぼっちだと涙腺が緩くなりそうになる。


その後厨房ラッシュが終わり戻ってくると天音は突然もてなされた。


「君、新しいメイドさんだよね。名前は?」

「ええっと・・アマです」

「アマちゃんか、俺はニグロ。よろしくなアマちゃん」


首を軽くこてんっと傾けて明らかに狙っているボーズ。

目の前には天音のために作ってくれたゲバブが皿に盛られていて、やや躊躇いながらも食べさせてもらうことに。


「おっ・・・美味しい!」

メイドの言葉通り、ほっぺがとろけてしまうほどの美味しさだった。

今日の緊張や疲れが一瞬吹っ飛んでしまいそうなくらいに美味しく、ゲバブは正直食べたことのない料理だったがこんなに美味しかったのかと感動。


「すごくおいしかったよ、ありがとうニグロ君」

「いやいや・・アマちゃんのためだったら俺は何だって作れるぜ・・!」

格好良くニグロは鼻を高くして誇らしげに言うとコック達から、一斉に笑い出した。


「ニグロの悪い癖がまた出たぜ」

「そうやって何人もメイドをたぶらかしたんだろう」

「つーか、本命の彼女は良いのかよ?」


「あら、私のことかしら?」

いつの間に現れたのはエリザベート。

軽く指で髪の毛に触れる絵になる光景をしたエリザベートに、ニグロは頬を赤らめて固まると用意していたパイのような菓子パグラヴァを差し出す。


「あっ・・あまりものだけどよかったらたっ・・食べて」

「あらいいの?ありがとう」

微笑むエリザベートに、本当に嬉しそうに笑って照れるニグロ。

傍目からするとおねショタのような光景だが、ニグロは美しいエリザベートにすっかり心を奪われてしまっているとか。


あんなに美人なら仕方がないと、こうして怒濤の1日目は終了。

守達と落ち合う予定の場所に一目を避けて夜間寝たふりをして抜け出した。


「天音」

「守!カレン!」


小声で二人な呼びかけると、二人共何だか土汚れがやたらとあるようだった。

本日の仕事内容がとにかくハードで力仕事ばかりだと聞き、意識して鼻を吸うとぶっちゃけ臭い。


「追加の情報が来ましたので、読みますね。どうやらクレアーレは厨房にいる腕の立つ料理人らしいのですが

此処の主はそのクレアーレの腕を使って接待漬けの道具にしているようです」


美味い料理にご機嫌を取って自分の都合良く持って行こうという、何とも嫌な話を聞かされてしまう。

天音は厨房係をされていたから、誰が主に料理を作っているのか直に見ている。


「どなたか料理の腕が抜き出ている方はいませんでした?」

「・・・一人・・いたけどでも・・まさかあんな・・・・もごっ!」


名前を口に仕掛けた時、カレンは天音の口を咄嗟に塞ぐといきなり押し倒す。

守は近くにあったガラス片を投げつけると、誰かが動く物音がした。


「誰かに聞かれたの?」

「・・・わかりません、ですが・・・気配を故意に殺している人間の気配がしました」

ガラス片は天音達のいる場所を見下ろせる大きめの木に刺さっていた。

あそこからこちらの動きを監視していた、しかも鳥のように移動までして相当運動神経に長けている。


「もしかしたら敵もすでに潜りこんでいる可能性もあるかもしれません」

「敵って・・あいつらみたいのか」

思い出すのは守と天音が、クレアーレとミーレスの存在を知った男との戦い。

あんな男達と再び戦うことになるのかと、緊張が生まれかけたがカレンの方は違った。


「それならまだ・・・いいのですが」

「・・どういうことだよ」

まるでチンピラの奴らの方がマシなような言い方だ、守の質問にカレンは考え込んで答える様子もなく

敵に見られていたのならと、大した話し合いはできずに夜間の秘密会議は解散となった。



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