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アルシミ―・アトリエ  作者: 水無月るいか
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戦士〈ミーレス〉と錬金術師〈クレアーレ〉

とある温泉旅館にあるお土産コーナーでは、浴衣姿の老人達が家で待つ家族のためにお土産を選んでいた。

天音の祖父母も、家で一人で待っている天音のためにと今流行中のマスコットコラボ商品を手に取る。


「これにしようか、若い子はこういうのが好きだからな」

「お父さん、天音は流行には疎い子だからあまり喜びませんよ」

今の携帯もダメになったらとやっと最近スマホにしたぐらいで、古着も手縫いでリメイクさせるなど

良い言い方をすれば物を大切にするが、悪く言えばちょっと貧乏性だ。


祖母も母親が逆に新しいものを進めるぐらいに。


「なら食べ物にしましょう、おすすめはやっぱり温泉まんじゅうかしら?」

おすすめだと大きく描かれており、これにしようと祖母は手に取る。


「ヘリの音、近くないか?」

田舎なのにヘリの音がすると近くの客がつぶやくと、確かにヘリの音が祖母達にも聞こえてきた。

店員や他の客にも聞こえて、窓から外を見つめる者もいる中で旅館玄関前の広い庭にヘリは着陸。


「すいません!燈ノ本天音様のご家族様はいらっしゃいませんか?

出てきたのは若い女性だが、祖父母は互いに顔を見合わせて。




「「はい・・私達ですけど」」

素直に手を上げた。








朝日の眩しさに目を開けると、そこはまたまた見慣れない風景だった。


自分の部屋でもない。

ましてや東郷家の客間ですらない。


「・・・・・・・・・・・・此処、何処?」


洋風の例えるならスイートルームレベルの大きなベット、外は絶景という名の光景が見下ろされ

天音の部屋が5つぐらい入るほどの大きな部屋。


「・・まずは記憶をできるだけ思い出してみよう」

まずは自転車こいでたら田舎暴走族っぽいのに追いかけられ、守がカツアゲしたバイクで助けにきてくれたけど無免許運転。

しかし自分もトラクターを運転したので人の事は言えない、しかしいつも偉そうに教鞭を振っている中年教師が

あっさりと自分達を見捨てて逃げた事は咎めてほしい、そして金髪長身イケメンが姫とか言い出して。


それ以降の記憶がない。


「お目覚めですか?」

「あっ・・貴方!!」


ドアが数回ノックされると、今まさに思い出そうとしていた男が現れた。

ベットから降りようとするが妙な眩暈に襲われ、前のめりに倒れそうになると男は素早い動きで天音を受け止める。


「大丈夫ですか?やはり、まだ寝ていた方がよろし・・・」

「おい!!天音に近づいてんじゃねぇぞ!!」

聞きなれた声にドアの方を向けば、守が立っていた。

男は天音には友好的ではあったが守に対しては、気に入らないオーラを発している。


「守?」

「妙なことされなかったが天音!!お前ら、何者だ!」

天音と男の間に強引に入り込み、背で庇ってくれた。

威嚇する犬のような声が聞こえてきそうだが、男は相手にもしない。


「はい、そこまで。二人共落ち着きなさい」

パンッと手を叩く音がして第三者なる女性が立っていた。

男と一緒にいた女性だ、秘書のようなスーツを華麗にこなす仕事のできる女の雰囲気がする。


「守君もカサンドラも冷静に、燈ノ本天音さん。お話・・よろしいかしら?

貴方が起きるまで守君にも説明をもらった貴方達二人共当事者だからね、でも・・・その前に


温泉にでも入ってきたらどうかしら?」


服は当然女性が着替えさせてくれたが、身体から変な臭いがする気がする。

食事をしながらお話をと、女性に言われて天音はひとまず温泉に入りながら頭を整理することにした。


「着替えは此処に用意してもらったから、私は此処にいるから何かあったら呼んでね」

「は・・・はあ・・」

女湯の入口前までついてきてくれたのに彼女は入らずに、天音を笑顔で送るが

天音の見えないところで彼女は武器を多数隠し持っていた、万が一の襲撃にも対応できるように影で見守るために。


「・・・一人でこんな広いお風呂に入って・・・まさにお姫様様だな・・」


身体も頭も高級な品で洗ってちょっとだけ現実逃避した、今のこの現実から。

それにこのホテルは、政府のお偉いさんが良からぬことを企む接待場所の隣町の有名なホテルで

村からもそんなには離れていないが、他に客もいないことからきっと貸し切りなんだから。


「きっとあの人達も、あの変な力のことで話をするんだろうな・・」

湯を手の平で掬ってみたが何の変化もない。

でも二度の偶然も、奇跡もない。


その正体を知るのは怖い気がするが、知らなければ前には進めないと湯から上がると用意してくれていた着替えを纏い外へと出る。





不機嫌そのものな顔で、納豆をひたすらに箸で混ぜる守。

その目の前のテーブルには目を閉じたまま、腕を組んでいるカサンドラ。


「おい、席なら他にもあるだろうが他の席にいけよ目障りなんだよ、その金髪が」

フロアにいるのはカサンドラと守のみ。

席はいくらでも空いているのに、わざわざ自分の前にいることが気にいらないと苛立ちをぶつける。


「フッ・・・日本人というのは譲り合いの精神があると聞いたが随分と心が狭いのだな」

「お前こそ、ちょっとはマナーを守れないのかよ。外国人がどんな観光マナーが悪いか知ってるか?」


互いに一歩も譲らない、低次元の喧嘩に重い溜息を吐きながら女性とブランド系のワンピース姿の天音がやってきた。


「守、なんでそんな喧嘩腰なの。もう高校生なのに大人げない」

「カサンドラも、らしくないわね。いつもはもっと紳士なのに私の知らない貴方の一面を見せてもらったわ」

女性陣に言われて、フンッと鼻であしらう。

席の座ると天音も朝食はブッフェ形式となっており自分の分を取りを出向き、和風を取ると席に戻ってきた。


「改めまして、私はコードネームは忍 銀子。本名は秘密よ」

明らかに外国人なのに、日本名をコードネームにしているらしい。


「僕はカサンドラ・ド・トロワ・キャメロットと申します、CRCの一人です」

「・・・なんだ、その秘密結社みたいな名前」

聞きなれない組織名に天音の納豆を掻きまわす手も止まる。

身分書には確かに顔写真付きの身分証明書にはCRCと書いてあったが聞いたこともない。


「組織名よりもまずは天音さん、貴方の力について。貴方にはね、この地球に浮かんでいる

練成物質〈アルカナ〉によって物を形成させることができる力があるのよ」

「・・練成って・・・コレ?」


金の豆粒が練成時によくある、手をパンっとさせる真似をしてみた。

銀子は苦笑して、ちょっと違うと訂正してきた。


「錬金術師は等価交換によって練成を成す、でも燈ノ本天音さんのようにアルカナを使って形成させるのとは別なのよ、だって何も差し出していないんですもの」

元々無から有を創り出そうという、人の欲望から生まれたのが錬金術。

しかしそれは失敗終わっている、ごく一部を除いて。


「貴方のような人間を〈クレアーレ〉、そしてそれを扱かう者達を〈ミーレス〉と呼ぶのよ」

「・・あいつが言っていたのと同じだ」

守をあの時ミーレスと呼んでいた。

使う者が守で、創る者が天音であるが奴らは明らかに天音の方を狙ったのはなぜか。


「使い手は多いのだけど、肝心の作り手がなかなか見つからないのよ。

本人も無自覚でやってることが多いから、でもあれだけの発光をして生み出しているのなら天音さんの価値はSSRレベルね」

なんだかスマホのレアガチャみたいに例えられた気がする、お金になると言ったは天音を売り飛ばそうとしていたのだ。

クレアーレはそれだけで世界各国が欲しがるだけの価値がある、なんせ空気中にアルカナがあれば刀を生み出させるんだから。


「おい・・まだ他にも謎がある、どうしてすぐに元に戻ったんだ?形成させたのなら形は留まるはずだろ?」

「・・・・言われてみれば、すぐに戻っちゃったもんね」

木刀も戻ってしまったと天音に見せてきた。

アルカナを使い形成させるのにどうして形は維持できないのか?


「歴史的な遺跡や物体の中には、製造不明やどう建設したのかわからない物があるのは知っているわね」

代表的な物はエジプトのビラミット、イギリスのストーンヘンジ。

未だに確たる建設方法が不明、世界の著名な研究者達も未だに答えを見いだせないでいる。     

科学が発達した今の時代であっても確かなことはわからない、これまでの多くの人間が解明に乗り出したが誰も謎を解いたことはない。


「全てクレアーレが創造したものよ、残念ながら凡人には未だに解き明かせないのも納得でしょ」

唯一の作れ手がすでにのこの世にいないものならと、少し納得ができた。

話に引き込まれている天音を止めるかのように、わざとらしく守は茶碗を音を立てるようにして机の上に置いた。


「それで、俺らのことはわかった。それでお前らは俺達を・・天音をどうするんだ?怪しげな団体にでも引き入れるつもりか?」

ずっと警戒をしていた守は敵意を隠すことなく、カサンドラ達に向ける。

天音の制止を無視し、こんなところに人払いと隔離までしてと肌身離さず持っていた木刀を強く握りしめた。


「確かに貴方の力は欲しいわ。それは認める。

代わりに貴方の安全を保障しましょう・・貴方の力はきっと奴らによってすでに世界に広まっている」

脱獄した男が仲間に連絡した時点で、天音の情報は拡散されて世界各国からこの田舎に向かって拉致をしようと集まっているだろう。


容赦のない現実を銀子から突きつけられ、守も息を飲む。

此処にはいられない、天音はまた逃げるしかない。


「だったら俺が守る!!天音に武器を作ってもらって片っ端から・・なんでこいつが此処から出ていかなきゃいけないんだ!!おかしいだろう!!」

彼らの言っていることはわかるが、人よりも特別だから居場所を追われて

友人からも離れて家も出て、見知らぬ場所へ犯罪を犯してもない天音が何故出て行かなかければならない。


理解はしても感情が追いついていない。


「守、もういい・・・もういいから」

「・・・・天音・・・」

結局食事はほとんど食べておらず、お茶だけで朝食は終わってしまった。

顔を下に俯かせて思い悩んだ顔を一瞬だけ見せたが、高校生とは思えない顔つきで。


「少し、考えさせてください」


答えを出す時間を求めた。

今すぐに決断はできないことだと、天音は安全のためにホテル内限定で散歩をしている。

その様子を銀子が監視カメラで関しているとも知らずに。


目の届かないところで再び天音が襲われる可能性が高いため、彼女は自分の価値をわかってはいない。

武器を創り出せるクレアーレが様々な組織や国がどれほど欲しているか、天音の存在が公になる前にこちらの加護下で保護する必要がある。


全ては天音のためと言いつつ、本当は誰のためなのかと銀子は考えないようにしつつ天音を監視していた。


「俺は反対だ!いきなり国外に出ろとか言い出して・・あいつらこそ天音を利用しているんじゃないのか?」

最初に助けてくれたからって天音を利用しないとかも限らない。

人の親切心や弱みに付け込んむ犯罪は何処にも存在している、誰もいない屋上の庭園で二人だけで話をしていた。


雲一つない青天の空だというのに、天音も守の心も重く暗い。


絶対に裏があると守は初めから彼らも利用する側だと、断るべきだと天音に進めるが。


「私・・カサンドラさんや銀子さんを疑いたくないよ」

「あとで裏切られて傷つくのはお前なんだぞ、それでもいいのか・・」


「でも・・・・そんなこと言ってたら誰も信じられなくなる。私はそんなのは嫌だ・・」


泣きそうな表情に言い過ぎたと守は後悔した。

突然天音は世界に数人しかいない武器を生み出せるクレアーレと呼ばれて、守以上に混乱しているのにさらに不安を煽らせてしまった。


何か言おうとしたが、人の気配がして思わず腰にずっと下げていた竹刀をつにして前に出るが

現れたのは旅行に行っているはずの天音の祖父母だった。



「おじいちゃん・・おばあちゃん・・・」


いつも穏やかに見守ってくれていた第二の親のような存在の二人。




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