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アルシミ―・アトリエ  作者: 水無月るいか
3/30

騎士とサムライ

窓から校舎に入っていく人影を確認し、荒々しく発砲していく姿にこのまま身を隠していては

事情を知らない誰かが巻き込まれる恐れがあり、守は決意を決めた。


此処で全員を倒すと。

しかし天音は巻き込めないと体育館の倉庫の跳び箱の中に天音を押し込んだ。


「お前は此処にいろ、絶対に動くんじゃねえぞ」

「でも守は・・・」


身を隠しているこの場所、一見すると壁の色と扉が似ていて倉庫の中にさらに壁に似た倉庫があるとはわかりにくいが

手違いにな工事がこんなところで役に立つとは、跳び箱の一段目を上げて心配そうに顔を出す天音。


「こんな田舎の警察なんて当てにはできねぇ。この暗闇を使ってあいつらを倒す」

「無理だよ、相手は拳銃を持っているんだよ・・殺されちゃうよ!」

全国大会で優勝している実力者とはいえ、銃を持っている方が圧倒的に有利。

だが呼んだところで殺される、相手は銃を持つ戦闘に慣れた人間で人里に降りれば皆殺しにもされかねない。


「助けを呼んでも殺される、警察署の奴らのように・・」

スマホのニュースで捕まっていた警察署での脱走時に死傷者を出しており、大きなニュースとなっている。


(俺はどうでも良さそうだが、天音は殺さない。きっと・・・アレに何か理由があるんだ)

錆びついた神刀を新品にさせた変な力、どういうものなのかは守にもわかないが

殺す気がなくても何を企んでいるかわからない。


「でもっ・・・木刀じゃ。危険すぎるよ・・」

恐怖からか涙を流して守の服を掴んで必死に止める。

守が言っている意味もわかっているのに板挟みで苦しくて、涙を零している。


またあの時のようにできないかと、守の木刀を握ると力むような声を発しながら必死に念じたが木刀に変化はない。


「やっぱり無理か・・」

「ごめん・・」

しかし守は天音を責めることもなく、立ち上がる。

励ます言葉はかけなかったが、頭をくしゃりと撫でると守は出口へとまっすぐ歩いていく。


「お前は此処にいろ。発砲音がしても絶対に出てくるな・・いいな」

それだけを言うと守は木刀を手にして校舎へと戻っていく。潤んだ瞳で天音は跳び箱を蓋を閉じると身体をできるだけ小さくし震えていた。


(田舎暮らしを舐めんなよ。こっちは夜目が慣れてるんだ)

部活が遅くなるせいか、いつも暗くなるまで体育館で木刀を振っているのがこんなところで役に立つとは。

校舎のブレイカーをわざと落として、全ての電源を落とし奴らの視界を奪うことは成功。


電源板の鍵は守が持っているため、開けることはできないようにしてやった。

予想通りスイッチをいくら押しても電気がつかないことに混乱をしている、それでも奴らは天音達を探すのを諦めなかった。


(復讐ってわけじゃない・・だったら傷付けてあんなに焦りはしないはずだ・・)

狙いはあの変な力、守にもわからないが天音を渡すわけにはいかない。

わざとわかるようにして肩を出すと、馬鹿みたいに引っかかってくれた奴らは追いかけてきてくれた。


「いたぞ!ガキだ!」

銃はやはりさっきの件があってか使わない様子だ、ならばと奥の教室へとおびき寄せる。

誘い込んだのは放送室、数人の男達が銃を手に入ってきたが全員が入ったのを確認すると素早く守は鍵を閉めた。


「罠か!」

「この開けろ!!」

室内では銃声が聞こえるが、この扉は中の音が聞こえないように厳重に作られている。

おまけに開けるにコツがいて放送部員以外は開けるのが難しく、下級生に引き継ぐ際は開け方を伝授するのが習わしになっているとか。


前に部員の一人に教えてもらっていたが、こんなところで雑談のネタが役に立とうとは。


「・・あと使えそうな教室は・・」

窓のない薄暗くて、嫌な教室は理科準備室。

そこにも計画通り閉じ込められたが、奴らもそろそろ守の狙いを感づき始めるころだろう。


「舐めた真似しやがって、やるじゃねぇか!!」

苛立ちを発散するかのように天井に向けて銃を発砲。

その音は天音にも聞こえ、恐る恐る跳び箱の一段目を上げた。


(やっぱりだめだ・・私も何かしなきゃ・・でも・・私に何ができる・・・?)


思い出しくない昔を思い出した、何もできないことが大罪かのように言われた時の事。

誰かに言われたんじゃない、自分がやりたいと跳び箱から抜け出し道具入れに目を向けた。



「あとは暗闇に紛れて少しずつ潰していくしかないか・・」

銃の一発は当たる覚悟いると、奥歯を噛みしめてこれは別世界の話ではないのだと戒めているとまさか事態が発生。


「おい!何をやってるんだ!」

たまたま忘れ物を取りに来たであろう、中年の教師が土足で校舎内うろついている男達を発見。

校舎の門が開き、窓が割れていて何事かと中に入り男達の手にある黒く光る銃に真っ青になる。


「丁度良い、人質だ!!」

「ひっ!!ひいいいっ!!」


教師を銃で脅すと、校庭の真ん中までやってくる。

まるで拡声器でも使っているかのような大声で、男は声を発する。


「おい!!小僧と小娘!!こいつの命が惜しければさっさとでてこい!!」

その声は体育館の小窓から、身を潜める守にも聞こえてきた。

人質は生徒に嫌われているワースト1の教師、こいつよりも天音の方が大切だと思ってしまうが

それでも人の命は平等だと父の教えもあり、守は仕方なく彼らの前に姿を現す。


「守が危ない・・・・あっ!」

ひらめいたかのように声を発すると、近くに置いてあった木刀も一緒に持っていく。



「ようやく出てきたか、それで娘の方はどうした?」

「その前にそいつを解放しろ、俺さえ出てくれば問題ないはずだ」

肩を竦めると男は目で合図をし教師は解放されたー・・、かに見えたが

魂から腐っていたのか、前を見たまま発砲をし教師の太ももを貫通して悲鳴を上げて床に倒れる。


「てめぇ!」

「お前、本当にお子様だな。俺が約束を守る律儀な男だと思ったかバーカじゃ・・」



グオオンッ!



妙な機械音がし、全員が音のする方へと振り向くと現れたのはなんと




真っ赤なトラクターとそれに乗った天音だった。




「んなっ!」

「天音!」


顔を赤らめ、恐怖を恥ずかしさで誤魔化しながらアクセルを思いっきり踏む。


「どけんがーーーー若造がーーーー!!」

講習にきていた頑固畑農業トキ(89)が農業で道を塞ぐ子供に対してと同じセリフを吐きながら

猛スピードでトラクターが突撃し、守と男達の間を通過。

ギアを慣れた様子で操作する急カーブで接近して横づけさせる。


幸いにも歩ける教師を乗せると、守にも乗るように声をかけるが守に対して銃を発砲。


「あっ!!」

銃弾の嵐にバランスを崩し、天音は運転席から転落したが守が受け止める。

教師は我先にと運転席に乗り込む。


「天音!!」

「守!先生行ってください!!」

天音に言われるがまま生徒を置き去りにして、教師はあっさりと逃げていく。

守は木刀を構えていたが、銃弾に吹き飛ばされて木刀は空高く飛ばされてしまう。


「この!!」

さらに隠し持っていたチョークの粉爆弾(ビニール袋)を男達に投げつけて、守の元へ。

こんなの時間稼ぎにしかならないのはわかっていたが、守の下へ駆けつけられるのなら十分だ。


「なんで出てきたんだ!!お前!!」

「だって心配だったから、守が死んじゃうかもって・・武器さえ・・・刀の代わりになんてなれないけど・・でもこれを・・・・」


差し出してきたのは卒業生の置いてあった古い木刀、こんなもので戦えるわけがない。

サムライという通り名に相応しい刀さえあれば・・・刀があれば・・・・。


そんな想いに答えるかのように、木刀が金色の光に包まれた。

その光は眩しいくらいに輝いており、車で移動をしていた者達の足も止めた。


「お前・・」

天音の瞳には光がなかった、眠り眼のようなぼんやりとしたをしていたが

彼に相応しい刀、煌びやかに輝き鍔には桜が描かれている太刀を守に差し出してくれた。



「・・・あれ・・・私・・」

「サンキュ、・・これで俺はあいつらを倒せる!!」

鞘から刀を抜くと、力が源泉のように生まれ出てきて目にも止まらぬ速さで男達を斬っていく。

それは銃でも狙えないほどの速さで、男達を次々に倒れる。


守の戦え姿に安心すると、急に眩暈がして手で顔を覆い空いた手で地面に手を置いて上半身を支えた。

貧血に似ているようで冷や汗を流す天音の後ろに、男がゆっくりと迫る。


「よし・・このまま!」

「油断したな、坊主!」

ぼんやりとしていた天音を人質に取られてしまった、しかも閉じ込めたはずの奴らによって。

こんな短時間に抜け出してくるとはさらなる想定外であり、天音も意識がぼんやりとしているせいか無抵抗だ。


「天音!」

「てめぇが<ミーレス>だったのは予想外だったがこの場は一時離れよう、まずはこの娘を・・・・」


どすっと天音の頭に銃口をつけていた腕に鋭い何かが突き刺さった。

思わず悲鳴を上げて天音から手を離すと、倒れた衝撃で目を覚ます。


「何、一体何が・・」

守が顔を上げると上に誰かが天高く飛んでいる、そのまま雨のような苦無を投げつけて男達を封じる。

守も助けがきたのはありがたいが正体がまるでわからずに困惑。


逃げ出す男達の前に現れたのは、コンビニで会った外国人だが

アタッシュケースを開けると中にあった剣を手にして、男達を斬っていく。


守があんなに手こずった相手を一分もかからず、気を失わせしまった二人。

劣っているような気分になり、舌打ちをする守。


味方なのか敵なのかわからずに、座り込んだまま後ろにたじろぐ天音。

小走りで守は近づこうとすると金髪の男は、その場にまるで騎士のように跪いて天音に頭を下げる。




「はじめまして、姫。僕の名はカサンドラ・ド・トロワ・キャメロット。貴方の騎士となる男の名です」

「・・・・・・は・・・騎士????」


軽く手を持ち上げれ、騎士だの姫だの言われてパンク寸前の脳内だったが。




「・・・・・・・・・・・・・・・・・ケッ!」


守のくだらないと言いたげな舌打ちだけは、よく聞こえていた。











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