第八十二話 剣王達の罪
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今でこそこの国はククル商会の御陰でかなり立ち直った。
義理の娘に当たるキキとキルを嫁がせるという約束をしたお陰で。
だが私が描いた未来図ではこうなる予定ではなかった。
かつて法王国がククル村を襲撃したあの日。
本来、帝都と王都は過去に結んだ盟約によりククル村に軍を応援として派遣する義務があった。
それは是非もない決定事項だ。
しかし『但し』という条件がつく。
それは『最も恩を売れるタイミング』でククル村を救うという事だ。
帝都と王都はククル村が最も苦境な時期に助け船を出し、恩を売るつもりだったのだ。
苦境を助けた見返りとして、魔石や魔物の素材の朝貢、魔術金属の鉱山採取権をククル村から引き出すつもりだった。
卑劣というでなかれ。
其れが政治だ。
いかに過去の盟約があろうと、何らかの見返りが無ければ、帝都として動かないのは当たり前事だ。
特に『我が剣王領』はだ。
王都の魔王にはそんな打算はなかったらしいが。
王都の貴族や宰相らと秘密裏に裏から手を回し、出兵を遅らせる事で全て上手く行く筈だった。
だが予想よりも早いタイミングで事態は終息してしまった。
『一人の人間の子』の予想外の行動の所為で。
仕方無く次善策として帰らずの森の魔物を使う事にした。
潜ませていた密偵を使い魔物を暴走させ村を壊滅寸前にさせ援助を請わせるつもりだった。
だが此れも失敗に終った。
村の住人の戦闘能力が予想以上に高すぎた所為だ。
この時点で最早万策尽きた事を悟り全ての作戦を破棄しようとした時の事だ。
奴が来たのは。
仮面を被った黒尽くめの子供。
外見上はだ。
警戒厳重なはずのこの王宮に楽々と忍び込んできた異常者。
存在自体がふざけている子供だった。
土産と称してふざけた物を置いていき私達を恐怖のどん底に叩き落した。
このような事を仕出かして、ヤツが望んだのは反法王国同盟を結び発動させる事。
但しこの『反王国同盟』は唯の名目上だけのものであった。
確かに掃討戦だけは、結集した国全てが協力して参加した。
だが現実には、法王国を恐怖のどん底落とし蹂躙したのは『少数の仮面を被った者達』だけであった。
その『仮面を被った者達が全てククル村の住人』であったと知らされた時はどれだけ私の肝が冷えた事か。
奴らがやってのけた事は、王都や帝都への示唆行為も兼ねていたのだ。
そして我が王宮に潜入してきたあの子供は『仮面を被った中の一人』だったのだ。
変装こそしているが体格や言葉遣いで分かった。
否。
違う。
気付かされたのだ。
奴に。
今になって分かった。
奴の目的は警告。
単独でもここまで出来るという、ククル村の能力を見せつける事が潜入の目的だったのだ。
つまり奴等は『反法王国同盟』として集結させたい国々に、潜入して謁見する事で己達の能力を見せ付けたのだ。
後には更に法王国を生贄にする事で。
寒気がした。
かつて周辺国々を虐げてきた、法王国という大国を手玉に取り蹂躙した圧倒的な武力と手口には。
しかもこの戦略を描いたのは僅か四歳の幼児だったという。
後で聞いた時には天地がひっくり返る思いだった。
あの時は通信機ごしでは年齢は分からなかったのだ。
仕方無いだろう……。
今思えばあれが悪夢の始まりだった。
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