第七十六話 苛立ち
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「カイル様」
頭領ではなくカイル様ね。
苛立ってるね~~新月。
「うん? 何?」
「失礼ですが、なぜこのような事までなさるのですか?」
「何が?」
「幾らキキ様とキル様からの要請とはいえ、この国の治安回復や腐敗貴族の調査まで乗り出されておられる事です」
「それが何か?」
「カイル様には本来関係ない事です」
「関係は有るよ。二人共僕の将来の嫁だし」
「ですがっ!」
「新月、君の言いたい事は分かる。でもねえ~~」
僕は自分にも分かる静かに底冷えのする眼で部屋の外を睨む。
その先に在るのは王宮。
ビリビリ。
僕が無意識に発動した威圧で部屋が軋み悲鳴を上げる。
ゴク。
新月の唾を飲む音がした。
「気にいらないんだよ。僕の知ってる範囲の女の子達が酷い目に合っているのは……」
「……」
「それに善良な貴族に濡れ衣を着せ、排除しようとしている剣王と貴族達にも」
「……」
「さらに言えばその片棒を僕に担がせようとするやり方にもね」
ピキッ!
置かれていたティーカップに亀裂が入る。
「ひっ!」
新月はその様子に息を呑む。
「あっ……御免」
「い……いえ」
僕は怒りにより無意識に威圧を放った事を新月に謝罪する。
「さてと」
報告書を見た限り女性の被害者は未成年から三十台までに集中している。
気に入らない。
兎も角気に入らない。
剣王も貴族達も。
そして僕達が無知な村人だからと見下し、利用して使い倒そうとする向こうの思惑が。
「場合によっては剣王から粛清許可を貰わなくてはね」
多分それが剣王の狙いなんだろう。
腐敗貴族と剣王に対して批判的な貴族の粛清が。
腐ってるね。
この事を表立って糾弾して事を公にするのは無理だろう。
この国の基盤が磐石ではないからだ。
経済的にも人材的にも。
そしてリストにある悪徳貴族達はそれなりに能力がある。
下手に干渉すれば国家として厄介事になる。
そう見越して調子に乗ってるみたいだ。
う~~ん。
幸い次代を担う後継者達はこの国では育ってるみたいだ。
しかし現剣王はまだ後継者は居ない。
カラルさんの政治手腕は未知数。
いや代官が居ると言ってたな~~。
駄目だ。
その人も何処まで対処出来るか分からない。
隠居させるまではまだ無理か。
仕方ない。
見せしめとして何人かの悪徳貴族を粛清するか。
そして適当な時期を見計らって粛清の危機と裏情報でも流しておけば完璧だね。
これで残りの悪徳貴族達も恐怖から自ら引退を選ぶだろう。
まあ、以降の再犯防止と牽制にもなるしね。
それと立場上手を出せないと驕った貴族達への処刑法とか。
本来なら此れはこの国家がやる事なんだけどね。
だけどやりにくい。
ああ~~くそ。
イライラする。
僕は気を落ち着かせる為に深呼吸したのだった。
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