第六十四話 新しい砂糖の製法。
今日の分です
「暑い地方にしか砂糖は作れませんからね」
「ああ~そうかサトウ旅人の木からしか作ってないからね」
僕は腕を組み天井を見ながら思い出す。
サトウ旅人の木。
旅人の木に似たやつの名称だ。
此れから砂糖は作る。
見た目は前世のサトウキビそのものだ。
作り方は簡単。
まず専用の金属の機械で潰して汁を集める。
それを煮詰めれば黒砂糖の完成。
白砂糖は此方の技術で作っていた。
生憎その製法は秘伝とやらで教えてくれなかった。
まあいいけど。
その内粉砂糖とか作って売り出すのも良いな。
でもそれだと何に使えば良いかな?
僕は目の前で饅頭を食べる皆を見ながら考えてみる。
定番として御菓子のの上に乗せたりとか?
あるいは揚げパンに塗すとか?
「会長?」
「ふえ?」
只ならぬシャルの迫力に僕は戸惑う。
自分の考えに没頭してたので少し動揺した。
「まるでサトウ旅人の木以外で砂糖が出来るみたいな発言でっしゃろ」
「出来るけど?」
グワッシ。
「今何と?」
頭を捕まれました。
シャルに。
というか以外に握力が強い。
「ふえ?」
目が怖いんだけど。
「だから今なんと?」
「いやだから出来ると言ったんだけど」
ギリギリ。
あのう……手に力が入ってるんですが……。
というか痛い。
「その話詳しく」
「う……うん瓶詰めの試作品を作ってる時に偶然出来た」
「ほう」
その途端シャルの眼が妖しい光を出す。
「もっと詳しく」
「う……うん良いけど」
瓶詰めの試作品というのは嘘である。
実は僕は前世でテンサイという植物から砂糖が出来る事を知っていた。
なので此方でも出来ないかな~~と思い似た物を捜した。
そしたら存在した。
点菜。
名前を聞いたときはバッタモンかよっ!
と思いました。
見た目は大きいカブ。
此方の世界での用途は家畜の飼料。
はっきり言って人が食うには適しない。
味は少しだけだが甘味がある。
だがそれ以上に苦味とかが酷い。
しかも保存が利かない。
利点は成長速度が早く僅か二十日で収穫出来る事。
それにどんな場所でも育つ事かな。
まあ苦味が強いので食料としては致命的だが。
なのでもっぱら家畜の飼料に使われてる。
とはいえ短期間でどんな苛酷な場所でも収穫出来るので飢饉の際の非常食にされてる。
但し不味い。
本当に不味い。
物凄く不味い。
あまりの不味さに飢え死にを選んでいる人も居るらしい。
それはさておき、点菜からの砂糖の抽出方法は少し手間が掛かる。
まず温度計を用意しなければ成らない。
これさえ用意出来たら後は楽だ。
大きめの鍋に水を入れ点菜の皮を剥いて短冊状に切った物を入れる。
鍋に張った水は後に腐れにくくするために、一度煮沸させたものを利用する。
湯の温度を六十度に保ち、点菜を入れ二十分煮込む。
煮込に終ったら、その鍋に砂糖を少量加え、容器に入れ替えて十日間程放置。
そうすれば容器の底に大きな砂糖の塊が沈殿し結晶化する。
その結晶を集め、再度煮詰めたら砂糖の完成だ。
「此れで出来る砂糖の量は点菜十キロ当たりに対してだけど」
「どれぐらいですか?」
シャルの目が獲物を狩る肉食獣のものになっている。
その目、怖いんだけど……。
「え~と。大体百グラム程度かな?」
「「「「「……」」」」」
いつの間にか、シャル、セリス、マリさん、キキにキルが、おとなしく僕達の会話を聞いていた。
五人とも項垂れてる。
因みに他の皆は食事中です。
予想より点菜から取れる砂糖の少なさに皆落胆してるのかな。と思いました。
皆、俯いて震えていましたから。
「「「「「やったああああああああっ!」」」」
「ふあっ!」
突然、狂喜乱舞する五人に僕は驚き飛び上がる。
驚きすぎて心臓がバグバグしています。
「マリ姉さん! 砂糖だよ砂糖っ!」
「あらあら。安定した高収入源ね。この国は救われかもね。セリスちゃん」
「国の財源問題が一気に解決なの~」
「此れも全てカイルのお陰なのなの!」
「やったあああ! 此れで砂糖が安定して安く手に入る!」
皆、口々に喜びの声を上げている。
「まってっ! これは商品には出来ないの! それに特産品は別にあるのっ!」
僕は慌てる。
何しろ僕の予想外の方向に話が転がったからだ。
本命の特産品という主菜を出す前に、前菜で盛り上がって締めているようなもんだ。
これでは主客逆転というか本末転倒だ。
というか『点菜から砂糖を作る』には致命的な欠点があるのだ。
それを皆に教える前にこの騒ぎとは……。
頭が痛い。
「誰か皆を止めて~~」
うん。
もう訳が分からないですね。
本命の特産品が何か話せない。
あううう~~。(泣く)
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