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第五百十五話 希望を見出す

 村人達から領主への非難が酷い。

 今までは考えられない状況だ。

 苦難に次ぐ苦難。

 辛酸に困難。

 苦渋を選択した事は一度もない。

 領主に見捨てれたことも一度や二度では無い筈。

 なのに死んだように服従してた筈なのに此処で不満が噴き出た。

 忍耐と言うレベルでは済まされない状況だから不満が出たんだろう。


「さて……こうなる事は分かってたけど此処までとは……」


 罵詈雑言というレベルではない。

 怨讐や怨嗟と言うレベルすら超えてる。

 其処迄溜まってたんだろう。

 うん。

 どうしたもんか。

 聞かれたのは厄介だな~~。


『ワザとやってたくせに』

「バレた?」

『うん』


 さてと。

 動くか。


「あ~~もう一つ聞きたいんだが」

「何だ?」

「何でも聞いてくれ」


 今度の薬師二人は協力的だ。

 何でだろう?


「他の村でも似たようなことは有ってるのか?」

「まあね」

「規模や手段は違うが……」


 さよけ。

 ならいためらいはないな。


「もし新しい村を作ると言ったら其処に移り住むかな?」

「そうだな~~よっぽど酷い条件でなければ移住すると思う」

「俺もそう思う」


 ふうん~~。

 なら調度いい。


「皆さんっ! 注目っ!」


 その言葉に何事かと皆は沈黙する。

 さてと。


「皆さんもし僕が新しく住む場所を提供すると言えば移住しますか?」

「「「「「「「「「「ゑ?」」」」」」」」」


 突然の提案に戸惑う村人。

 まあ当然だな。

 見るからに怪しい旅人。

 普通は信用しない……。


「条件は?」

「え?」


 村人の声に僕は面食らう。


「私は移住したい」

「俺も」

「幾ら故郷でも此れ以上居たくない」

「あたしも」

「多少酷い条件を飲んでも良い」


 予想外の村人の反応に僕は戸惑う。


「あ~~」

「旅人殿」

「旅人さん」

「うえ?」


 薬師二人の言葉に僕は目を白黒する。

 はい?


「村人たちは長い忍耐の生活で疲れ果てている」

「まあ~~知ってるけど」


 薬師の言葉に僕は答える。

 何なの?


「其処で長く苦しい闘病生活を救ってくれた恩人の言葉に希望を見出したんだ」

「希望ね~~」


 そんな言うほどの物でもないし。

 寧ろ今より過酷かもかも知れないんだが……。

 でもまあ~~こんな怪しい人物を頼る位追い詰められてるんだろうな。

 うん。




 

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