↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
44/814

第四十三話 幼馴染。

三話目

「あらあら銀貨かあ……」

「あの時も此れがあればねえ。マリ姉さん……」

「そうね……」


 皆にお小遣いを配ってる時の事だ。

 丁度部屋の奥に居るキキとキルの懐にお金を入れてる時のこと。

 部屋の入口の近くでマリさんとセリスがしんみりと小声で会話してるのが耳に入った。


 え?


 良く聞こえるねって?


 【聞き耳】という盗賊系スキルのお陰です。

 【聞き耳】というスキルはある程度離れた物音を聞くことが出来ます。

 まあ、聞き取れる音の距離や大きさはレベルに依存しますが……。

 さらに言えば僕には暗殺者のジョブもあるからね~~。

 暗殺者の【音響感知】は遠く離れた人の声も拾えますので。

 それらを組み合わせれば、例え一キロ先の針の落ちる音すら判別できます。

 但し暗殺者のジョブレベルを極めればですが……。


「どうしたんですか? セリス?」


 僕は立ち上がり二人に振り返りつつ聞く。


「いっ! い……いえ気にしないで! ココロ村では例え小銀貨でも大金だったから」

「……というか……あんたこの距離で良く聞こえたわね」


 まさか小声の会話が僕に聞えると思わなかったんだろう。

 マリさんは特に動揺してました。

 セリスはその分落ち着いていた。

 というか半眼で僕を睨み腰に手を当てている。

 

「まあね。僕の将来の嫁さんの声だもん。このくらいの距離なら聞き逃さないさ」


 顎に指を掛け首を傾げる僕。

 ドヤ顔で言いました。


「「「「「「「「「「「きもっ!」」」」」」」」」」」


 クリスにキキやキルを除く全員から引かれました。


「……」


 酷くない?

 しかも二人の前に立っていたサラ姉なんか僕を蔑んでいた。


「……」


 僕は皆の将来の旦那だよね。

 この扱い酷くない?

 僕は思わず蹲り、足元の絨毯に人差し指で円を描いていじけた。



 ◇



 十分後。


「悪かったわよ」

「あらあら、御免なさいね」

「御免なの」

「シスター的にも悪かったわ」

「すみませんなあ、会長」

「腐……御免ね」

「「「「御免なさいっ! 御主人様」」」」

「Z~~Z~~Z」


 いじけてた僕を見かねて全員が謝ってくれた。


「良いけど」


 というか一人寝てねえ?

 まあ良いけど。


「それはそうとして、小銀貨が大金って?」

「その言葉の通りよ」


 セリスの発言に目を丸くする僕。

 日本円で小銀貨は一枚千円です。

 ですが相場が変動するのでこれはあくまでも目安だと捉えて欲しい。

 まあ、だから今回のお小遣いは一人三千円相当位です。

 ですので千円で大金って……大げさな。

まあ、子供のお小遣いとしては三千円は高額ですけど。


「それだけ少銀貨があれば一ヶ月は家族四人で暮らせる位よ」


 いかん。

 この世界の相場が分からん。

 シャルの方をみると頷いていた。

 本当らしい。


「あ~それで何でお金の価値の話になったの?」

「以前の村の飢饉の時にこれだけ有れば、あんなことにはならなかったの……」


 しんみりと俯くセリス。

 セリスの頭を抱え慰めるマリさん。


「餓死者でも出たの?」


 頷く二人。


「国の方からは援助して貰えなかったの?」

「それが……流石にねえ~~人頭税もすでに免除して貰っていたから」


 俯きながら話すセリス。

 この辺の土地は痩せていて作物の出来が昔から悪かったらしい。

 そして運悪く此処数年まともに作物が出来なかった。

 本来、他の村なら飢えで苦しむことは無い。

 不味くても食用になる魔物が存在するからだ。

 但しそれは戦闘用のジョブ持ちが村に居ればの話。

 この辺りは昔から法王国の違法奴隷狩りが酷く、すでに魔物とまともに戦える者が少なかったらしい。

 その為ゴブリンさえ自ら討伐出来ないほどだった。

 村の存続だけで精一杯だったらしい。


 其の為に国は人頭税を免除。

 最初の一~二年は良かった。

 国が万が一に備えて貯蔵していた食料を開放してくれたからだ。

 三年目は宝物庫の財宝すら売払い食料を配給してくれた。

 しかし四年目が問題だった。

 飢饉である。

 他の村でも同じ状況だったらしく多くの餓死者を出した。

 その上駄目押しとばかりに法王国の暴虐。

 村が存続出来ない程の違法奴隷狩りによる被害。

 マリさんも、この時に狩られたらしい。

 そんな中で村が存続の為にした事。

 何人かの村人を奴隷若しくは娼婦として売払う事だった。

 その中に村長の娘だったセリスが選ばれる筈だった。

 だけどそうはならなかった。


「幼馴染が私の代わりに娼婦になったの」


 セリスは泣きながら告白した。

 マリさんは後にこの事を知ったらしい。


「そっか……」


 僕はセリスの言葉に沈黙する。


「あの……」

「うん?」

「何でもない」

「そう……」 

 

 セリスは僕に何か言いたげだった。

 だけど結局、躊躇った上で沈黙した。

 何が言いたかったのかは分かる。

 

『幼馴染を助けて欲しい』


 そう僕に言いたかったのだ。

 だけどそれは言えない。

 既に僕達にかなりの迷惑を掛けてるからだ。

 

 だから此処で僕はあえてその幼馴染の名を聞かない。

 無論彼女が助けてと僕に懇願すればどうにかする。

 だが僕は自分からは動かない。

 いやセリスすら僕に助け舟を出せない。

 何故ならそれは『その幼馴染の決意の美しさを裏切る』行為だからだ。

 

 それにあの村の風習では、夫以外で純潔を失えばもう住めないみたいだしね。

 それでもその幼馴染は娼婦になる道を自ら選んだんだ。

 『自分の友を助ける為』に。

 その決意はどんな金銀よりも尊い。

 それはセリスも分かっている。

 なので僕に言わないのだ。

 

 否。


 言えないのだ。


 既にココロ村は僕達に許して貰った上で、存続の為に力すら貸してもらってる。

 だからもう貸し借りは此れっきり。

 それは『セリスが僕に願いを代弁出来ない』しないという事。

 という事なのだ。

 他のメンバーもそれを理解しているので沈黙を保っていた。

 空気を読んで。


「それでその幼馴染は何処に行ったの? 名前は? シスター的には聞きたいなあ~~」


 そんな空気を読まない馬鹿(シスター)が一人。


「「「「「「「「「「「「……」」」」」」」」」」」


 あまりの空気を読めない馬鹿の発言に全員が唖然とした。

 頭痛いです。

 

 ……少しは場の空気読んでよ。


 え?

 幼馴染の人?

 何処に行ったかって?

 ここの色町にいる人でした。

 流石に身請けは駄目でした。

 本人が拒絶したからです。

 自分だけ身請けされるのは嫌だと。


 何というか。

 仕方ないですね。

 本当に。

 僕は身請けしない代わりに、色町の医療関係を充実させておきました。

 

 まあいいけど。



 

評価をお願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。