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第三十三話 隠密スキル。 

次を投稿します

 実は感知系スキルには対抗する手段がある。


 盗賊系ジョブの存在だ。

 派生系を含めた全ての盗賊系ジョブは隠密系のスキルを持っている。

 例えば標準的な盗賊の隠密スキルなら【潜伏】など

 他には【隠れ身】の術というのが有る。

 中位ジョブの怪盗、若しくは上位の忍者は幻術でその身と気配を隠すのだ。

 他にも盗賊系をベースとしたジョブの持ちなら、感知系スキルを誤魔化す手段を色々所有しているんだ。


 その中でも隠密系で最高峰のスキルを持ってるのが暗殺者というジョブだ。

 隠密系スキル【気殺】と呼ばれるこのスキルは、自身の気配を周囲に拡散吸収させ同化させる。

 だがこのスキルはそれだけに留まらない。

 他の隠密系スキルとも組み合わせる事が出来るのだ。

 此れのお陰で僕はクリスに以前試練で放り出された、帰らずの森で生き延びる事が出来たのだ。

 その分、暗殺者は基本的に正面からの攻撃力は弱いが。

 

 話しが逸れた。

 社員寮から感じる気配は確かに六人。

 だけどおかしい……。


 キルはどうした?

 さすがに黒幕の護衛とは思えない。

 なら別の作戦に組み込まれているのか?

 幾つかの可能性を考えては削除する。

 そうしている内に、ふと脳裏に閃光が走る。


 僕はその可能性が正しいか確かめる為に【殺気感知】を使う。

 反応無し。

 【超感覚感知】を起動。

 此れも反応無し。

 気のせいなのか?

 

 否。


 そんなはずは無い。

 最後に暗殺者ジョブスキルの【音響感知】を使う。

 視覚情報からの探知ではなく聴覚からの探査に切り替える。

 様々な雑音が溢れる。

 今はその雑音には興味が無い。


 直接的なノイズではなく、僕は反響音を積極的に拾う事に集中。

 反響音から物体の形状を把握。

 途端に情報が脳内に溢れかえり負担がかかる。

 建物の形と数多くの人々。

 その中からキルの姿を捜す。

 この間二秒。


 ……。


 ヒット。

 後ろの客の中には思ったとおりキルが居た。

 

 なるほど。

 正面が囮で本命は後ろか。


「クリス。後方にキルが伏兵としています」

「確かがな?」

「僕が将来の嫁候補を間違うとでも?」

「うん。お前の女性に関する嗅覚だけは間違いないがな。信用しよう」


 ……。

 そこできっぱりと納得されると嫌な物が込み上がるんですけど……。

 まあいい。


「だが、何でこいつ等は俺達を襲う?」

「多分僕が先程言ったジョブで操られてるんだと思います」


 僕が言ってるジョブそこまで凶悪だ。

 その分欠点も多いが。


「……信じられんがな」

「そうですか?」

「他の者達は兎も角、キキとキルは特化型とはいえ王族クラスのレベルなんだぞ」

「だからどんな状態異常でも掛かりにくいと?」

「ああがな」


 僕の言葉に頷くクリス。


「確かに普通はそうですが……否……いや、ここはあのジョブの能力が優れてるというべきかな」

「そこまでのモノかがな?」

「はい。恐らく人形遣いという凶悪なジョブのスキルによる操りでしょう」

「人形遣いがな?」

「ええ。文字通りどんな者でも己の意のままに操れるジョブです」


 人形使い。


 此れが先程僕がクリスに語った、過去小国を滅ぼしたジョブだ。

 スキル自体は習得しただけなら兎も角。

 使用すればその場で処刑されても誰からも文句を言われない。

 そんな最悪のスキルだ。

 上位ジョブの一つで、ベースは暗黒魔術師に気功師と僧侶、幻術師で構成されてる。

 一度でも習得し使用すると、それまで使用していた全てのスキルが永遠に封印される。

 そんな欠点を持つジョブだ。

 そんな欠陥はあるが、それを補ってあまりある能力ではある。


 詳しく能力を説明をすると次の通りだ。

 この術に抵抗できる手段が少ない。

 術に対抗できなかった者は一定時間術者の命令を強制される。

 術に掛かった者は操られてる事を自覚出来ない。

 操るだけ。それ一つに特化した能力だが、その効果は絶大で抵抗できる者は少ない。


「最悪だがな」


 軽く頭を抑えるクリス。


「幸いですが、術に掛かった対象に対して【快癒】を使用すれば元に戻せます」

「なら今の頼みの綱はカイルだけだがな」

「ええ。ですがその前に無力化する必要があります」

「そうだがな。俺一人では流石に七人を相手にするのはきついがな」

「いえクリス。貴方は一人だけ相手をして下さい」

「どういう意味だがな?」


 僕の提案に目を丸くするクリス。


「後方のキル以外の六人は僕が相手すると言ってるんです」

「正気か?」

「任せてください。僕のジョブを使えば必ず……」

「そうか。カイルのジョブにはこの場合に有効なスキルがあるんだがな」

「ええ。二分は持ちこたえて見せます」


 僕の言葉に溜息を付くクリス。


「いや……そこは一人で全員を無力化すると言えがな」

「あの~クリス? 一人で王族クラスを含む六人を無力化しろと? 僕の事を何だと思ってんですか」

「千年に一度の天才がな」


 まだ言ってるよこの人。

 そろそろ泣いていいかな?


「レベル差知ってます?」

「俺の将来の婿ならそれぐらいしてほしいんだが……」

「死にます」

「そう……出来たら接吻ぐらいしてあげてもいいんだがな……」

「ほう?」

 

 僕の目の色変わる。


「やります」

「おおがな」


 突然の僕の態度の豹変に戸惑うクリス。


「接吻出来る……」

「まて」

「クリスと物凄い接吻が出来る」

「あ~~」

「舌を入れた熱いベーゼが出来る」

「お~い」

「舌を入れて腰が砕けるようなのを思う存分出来るううううううっ!」

「……はやまったか……」


 正気を失った僕に溜息を付くクリス。

 萌える。

 だって……いつも言わないクリスがだよ。

 接吻してくれるんだよ。

 此れが萌えずにいられるかあああああっ!


 僕は社員寮の正面を見据える。

 

「そろそろかがな」


 ドゴンッ!


 ドン引きしてるクリスを尻目に正面で爆発が起きた。

 煉瓦や木片に硝子を破壊し中から六人の人影が現れる。

 

 ……どうしようか。

 この建物の修理費。

 どこにも請求できないよね。(泣く)

 

 予想外の襲撃方法で興奮が少し引いたのは言うまでも無い。






 


 

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