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第十六話 旅。三日目

今回と前回のはセットです。

 三日目。


 森の砂利道を二台の馬車が通る。

 答えるまでも無い。

 僕達の馬車です。

 

 どこまでも続く砂利道に欠伸がでそうだ。


 因みに向こうの馬車の御者はクリスです。

 いつもなら此方に何かあったら即座に反応するのに静かです。

 馬車の中では人化した五人のドラゴン達が体育座りをしていた。


 凄い大人しいです。



 僕と一緒に馬車に乗ってるのはシャルやサラとサキ姉さんです。


「……」 

「……」


 サキ姉さんとサラは黙って体育座りをしてます。

 二人共今日はスカートなので下着がチラチラ見えて目の毒です。


 フリルの付いた薄い青。

 白のチエック。


 何がとは言わない。

 眼福です。


「ゴホン」


 シャルの咳に目を逸らす。

 

 今回の此方の御者はシスターだ。

 先程見たときシスターも黙ってました。


 

 ドヨ~~ン。


 そんな効果音が出そうなほど僕とシャルを除く全員が落ち込んでいた。

漫画なら皆の顔に縦線が入ってる。

 そんな状態です。


「ねえ、会長どうしましょう? 皆はんが暗いんですけど……」

「どうしょうと言われても……」


 原因は分かってる。

 昨日の車酔いの件だ。

 僕の忠告を聞かず本を読みながら馬車に乗ったのが悪かった。

 

 その結果が昨日の車酔いだ。


 僕とシャルは乗り物酔いしたみんなの看病に追われ、疲れはててしまっていた。

 結果、僕達にその醜態を晒した皆達は物凄く猛省した。

 

 まあそれは良いのだが……。

 はっきり言おう。

 

 暗い。


 途轍もなく暗い。


 あのセクハラが酷いサキ姉さんまで大人しいのだ。

 

 ……天変地異の前触れだろうか。(酷い)


 冗談は兎も角。

 

 しかし到着まで後何日を掛かるのに、この雰囲気のままというのはいただけない。

 さて……どうしよう。





 ガタンッ!




 そんな事を考えてたら馬車が急停止した。


「「「きゃっ!」」」

 

 予想外に可愛らしい悲鳴が聞けた。

 まあふざけるのは此処までにする。


「どうしたんです?」


 僕は御者をしてるシスターに質問をする。

 すると彼女は馬車の前を塞ぎ、通せんぼしている者達を指差す。

 魔物だ。

 それも複数。


「フシゥルル~」

「フシュルルルッ」

「ゴバアアア」


 現れたのはロックリザートマン。


 個体での討伐難易度はDランク。

 だが群れで獲物を狩る習性がある。

 群体での討伐難易度はBランク。

 

 それが馬車の前に二十匹。


「フフフフフウル~」

「フシュルルルルル~」

「シャアアアアアアア~」


 そして僕達の退路を断つかのように馬車の後ろにも現れる。

 その数は十匹。

 

 これが普通の冒険者ならかなりの窮地である。


 まあ幸いなのは馬達が興奮はしていても、パニックまでは起こさないでいる事だろうか。


 

 ロックリザートマン。


 硬い石の体と鋼の鱗に爪と牙を持つリザートマンの亜種の一つだ。

 原種であるリザートマンは元々亜人に近い種なのだ。

 だが理性よりも闘争本能が異常に強いので魔物として分類される。

 また彼らは人間を含む他の亜人を狩りの獲物とみなしてる。

 ロックリザートマンは、その突然変異種だ。

 

 しかも一番厄介なのはこいつらは討伐しても全く旨みが無いのだ。

 

 具体的な例を挙げる。

 

 亜人に近いの種なので魔物に分類しながらも魔石が取れない。

 原種のリザートマンは肉は臭みが強く吐き気がする程、不味い。

 亜種のロックリザートマンにいたってはその肉が唯の石なので口に入れる事すら出来ない。

 討伐するさい刃物などは刃を潰す危険性があるので嫌悪されてる。


 以上の事から冒険者から嫌われてる魔物ナンバーワンなのだ。


「不味いですね~~これだけの数。苦戦するとは言いませんが下手をすれば馬車に損害がでるかも……」

「そうやね……」


 僕の考えに同調するシャル。

 普通なら僕らは窮地なんだ……。














 ……そう普通なら……。


「腐っ! 【業火】起動っ!」


 ゴウッ!


 サキ姉さんの魔術が炸裂する。

 馬車の前にいたロックリザートマンの上半身が爆発した。


「はああっ! なの」


 ドンッ! ドンッ! ドンッ!


 光り輝く木の枝を三本投げるサラ。

 それらは複雑な機動を描きロックリザート三匹に着弾。

 三匹に当たった木の枝はそれぞれ爆発。

 三体のロックリザートマンは四散し命を散らした。


「あらあらっ! 」


 シスターはいつの間にかロックリザートマンに近づき鍬を振りかぶす。


 ゴスッ!


 一気に二体を砂利にしてしまうシスター。


「うらがなあああっ!」


 ザンッ! ザンッ! ザンッ!


 雄たけびを上げながらクリスは二本の剣でロックリザートマンを切り裂く。


「ゴフッ!」

「ブオッ!」

「ゴブッ!」

「ゲブッ!」

「ゴオオオオオッ!」


 アカ、ルージュ、クレナイ、シンク、エン人化した五人のドラゴン達は口からブレスを解き放つ。


 灼熱のブレスを。


 あっという間に融解していくロックリザートマン達。



 五分後。


「ふう――……すっきりしたの」

「長旅でストレスが溜まってたからね」

「腐っ……そうね」

「いやあ~~腕が少し鈍ったなあ。一体に三秒も時間が掛かったがな」

「「「「「そうですね」」」」」


 先程とは打って変ってサラ、シスター、サキ姉さん、クリス、アカ、ルージュ、クレナイ、シンク、エンは上機嫌だった。

 

 というかよいストレス解消になったと言わんばかりに汗を拭う。

 

 ……嫌な汗だ。


「「「「「「「「「はーはっはっはっ!」」」」」」」」」


 僕とシャル以外の全員が高笑いしていた。












 ……ロックリザートマン達は全滅した。

 

 ……うん。


 なんなんでしょうね~~。

 この地獄絵図は……。

 

 ロックリザートマン達を爆発させ、粉砕し、砕いて、切断、融解させてるんだが……。

 

 これではどちらが襲ったのか分からん。


 しかもロックリザートマンの原型を留めてねえええええっ!

 今まで暗かったのはストレスが溜まってた所為なのっ!


 というかこいつ等、悪魔にしか見えねええええええっ!

 


「会長……どうしましょう」


 頭を抱えてる僕にシャルが声を掛ける。


「どうしました」

「森の火災から逃げようにもロツクリザートマンの死骸が邪魔です」

「……」

「後は帝都の近くなんで下手すれば騒ぎになるかも……」


 僕はシヤルの言葉に頭を抱える。


「このままだと全滅です……」


この破壊神どもがっ!


 敵ではなく味方の攻撃の二次災害で全滅なんて笑えねえええっ!


「総員っ! 消火作業と残骸撤去に勤めてっ!」

「「「「「「「「「えー」」」」」」」」」


 僕の命令にめんどくさそうにする皆。


 こいつら……。


「馬車が燃えたら連帯責任で皆に弁償してもらいますっ!」

「「「「「「「「「頑張りますっ!」」」」」」」」」 


 こいつ等こういう時だけ現金だな~~。

  

 


 この後?


 何とか消火しましたよ。

 そして僕達が行った破壊活動の痕跡は偽装して消しときました。

 魔物同士の戦いに見せかけて。


 



 うん。


 国際問題なんかならないよ。


 いや。

 本当。(目を逸らす)


 ええ……。

 それはもう……。


 














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ストックが切れました書き溜めますので時間が掛かります。

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