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第十五話 旅。二日目

次を直ぐに投稿します。

つぎとセットです。

この話では落ちが弱いですのであしからず。

 旅の醍醐味。

 

 今まで見たことの無い風景。

 美味しい食べ物の発見。

 他所に住んでいる住人との交流。


 疲れた体を労わりつつ明日への活力を養う。

 旅というのは、そういう物だと思っていました。


 旅を初めて二日目の昼。


「今日も良い天気だね~~」


 僕は馬車から降り、新鮮な空気を胸いっぱい吸い込む。

 空気が美味しい~~♪


「むむむっ? あれはグリフォンかな? 元気がいいね」


 豆粒のように見える遠方では グリフォンらしき魔物がワイバーンと争っていた。

 

「フフフンッ」

「ブルブル」

「ヒヒンッ」

「フウンフフッ」


 スリスリ。

 

 馬達が僕に体をこすり付ける。



「よ~し、よ~し」


 甘えてくる馬達を撫でてやる僕。

 四頭の馬達は足元の草を食べ始める。

 ついでなので桶に水を入れて飲ませておく。

 

 その途端、馬糞がボトボトと大地に落ちるのは御愛嬌である。


「良い子だね~~うんうん」

「なあカイル現実逃避は止めようか~~がな」


 クリスの息も絶え絶えな声に僕は現実逃避するのを止めた。


「やっぱり駄目?」

「薬を作ってくれ……頼むがな……うぶ」



 後ろのクリスを見る。


 体を前屈みにして青い顔をしていた

 ……女の子が体調を崩してる所を見るのは、すんごい嫌です。


 クリスは馬車に酔ってこうなりました。

 車酔いです。

 

「ふふ……気持ち悪いの」


 サラも具合が悪そうに仰向けに寝て額に手を当ててました。


「うぶ」


 シスターも喉の奥から酸っぱい物を出そうとして出ない。


 そんな苦しみを味わってます。


「腐腐腐腐腐腐腐腐腐……ゲブッ」


 サキ姉さんは……。

 うん。

 壊れてます。

 これでは薬が作れません。


「うぶ~」

「うえ~」

「うぷ~」

「う~ん」

「げぼっ」


 アカ、ルージユ、クレナイ、シンク、エンの人化したドラゴン達は馬車から降りて口を抑えていた。


「薬~」


 クリスはまるでゾンビのようにふらふらして此方に歩いてくる。

 

 死屍累々。


 そんな言葉が浮かんできます。


 僧侶のジョブの【快癒】は効かないのかって?

 

 効きません。

 

 あれは怪我や病気に状態異常など身体が正常でない状態を治すものです。

 車酔い若しくは船酔いは此れに当て嵌まりません。


 という事を始めて知りました。

 

 ……目の前の人達で。


 何しろ身体的には正常なんですから。

 これを何とかしようとしたら薬師のジョブしかありません。

 

 ただし……。


「酔う前なら効きますが、後からでは薬を飲んでも意味は無いですよ」

「「「「「「「「「ゲッ」」」」」」」」」


 僕の言葉に絶望する全員。


 サキ姉さん……。


 貴方も薬師のジョブを持ってるんだから知ってるだろうに。



「あ~これは悲惨でっしやろ」


 サキ姉さん達を看護するシャル。

 深々と溜息を吐く僕。


「胸元を開けて涼しい所に寝かせてあげて」

「わかりやした。後はどうすりゃいいですか?」

「脱水症状にならないように、湯冷ましに蜂蜜と塩を少しづつ入れたのを飲ませて」

「はいな」


 シャルは僕の言う事を聞き皆の介護をする。

 

「はあ~~どうしてこうなった」


 僕は深々と溜息を吐く。






 話は三時間前に戻る。



 その日は朝食である麦粥を食べ馬車に揺られていた時の事だ。


「御主人様、景色が綺麗ですね~」

「そうだね」


 足ををパタパタパタさせて嬉しそうのに話すアカ。

 彼女は馬車の窓際に手を掛け外を見ていた。

 前世で電車に乗って外の景色を楽しむ子供に似てる。

 アカの捲れたスカートを直してやる。

 

 実際に外の景色は綺麗だった。

 濃度の濃い魔力で、えげつない緑色の多い帰らずの森と違い此処の森は色鮮やかだった。

 

「ZZZ~うん? 着いた?」


ルージュは寝ぼけながら聞いてくる。

 

「まだだよ」

「ん、ZZZ~」

 

 クレナイはそんなルージュを指で付いて遊んでる。


「やめなさい」

「ん」

 

 ニコニコとするルージュ。


「……」


 シンクはボーとしてる。


「えへへ~」


 エンは嬉しくて堪らないと言わんばかりの笑顔だ。

 今回の此方に乗っていたのは人化したドラゴン達だ。


 御者はシスターです。

 因みにサラはというと僕が乗ってる馬車の幌の上で昼寝をしていた。


「……」

「……♪」


 向こうの御者はシャル。

 馬車の中に居るのはクリスとサキ姉さんだ。


 サキ姉さんは此方の編成に不満のようだ。

 クリスは御機嫌だが。



 三十分後。


「「「「「飽きた」」」」」

「はやっ!」


 つまらなさそうにする五人の人化したドラゴン達。

 五人に突っ込みを入れる僕。


「だったら~~しりとりをするかい」

「「「「「やるっ!」」」」」


 僕の提案に食いつく五人。


「じゃあ僕からね、えーと……赤」

「貝」


 僕の次に続いたのはアカが答える。


「糸」

「ZZZ~時計」


 アカの次はルージュが言う。



 更に一時間後。


 この時僕達は小休憩も兼ねて馬車を止めて降りた時の事だ。


「「「「「しりとりも飽きた」」」」」

「あ~~」


 つまらなさそうにするドラゴン達に溜息を付く。


「だったら此れを読んでみる?」


 そう言って話しかけてきたのはサキ姉さんだった。

 その手には厚めの本が五冊程ある。


「サキ様なんですか此れ?」

「この間作った娯楽小説、キキとキルにあげようと思って持ってきたの」


 クレナイの言葉に答えるサキ姉さん。


「「「「「どれどれ」」」」」


 本を覗く五人。

 ふんふんと読み始める五人。

 

 面白いのか顔を緩ませる。


「「「「「貸して下さい」」」」」

「見てみたいの」

「俺も見たいがな」

「私もかな」


 五人の様子に好奇心を刺激されたサラ、クリス、シスター。

 他にもサキ姉さん取り出した本を読みはじめた。

 そして夢中になり始めた。


「皆さん、馬車に乗ってる時は読まない様にして下さいね、車酔いするから」

「「「「「「「「「レベルが高いから平気」」」」」」」」」


 まあ確かにジョブのレベルが高いと状態異常に耐性が高いが……。

 

 この時点では車酔いにまで効くかどうか分からなかった。

 

「どないします会長?」

「ほっとこう」


 シャルは旅慣れてるので乗り物酔いの辛さを一番分かってる。


 なので僕に意見を求める。


 だが僕より強いメンバーが、助言を聞かないならもう何も出来ない。

 一応忠告はした。


 だから放置。


「良いんですね? 後で泣きをみても知りませんよ」

「聞いてませんなあ」


 僕の問いかけに対してシャルを除き無言。

 無視してるのではない。

 集中して聞こえてないのだ。

 そのまま全員を馬車に乗せる。


「はあ……」

 

 御者には僕とシャルがなった。



 ◇



 こうして今に至る。


「僕の言う事を聞かなかった罰です」


 僕とシャルを除き、うめき声を上げる御馬鹿さん達。


「「「「「「「「御免なさい」」」」」」」」

「はあ……」


 こうしてその日は無駄に過ぎました。


 次の日から酔い止めに効く薬を調合して全員に飲ませました。


 かなり苦くして。


 流石にシャルを除く全員は苦くても文句は言えなかったみたいです。

 

 当然です。

 

 これも罰なんだから。


 はあ……。

 こうして一日が過ぎていった。

 














 深夜。



「あれ?」

「どうしたんです会長?」

「今日のボケは? 突っ込みは?」


「「「「「「「「「そんな物は今日はないっ! 」」」」」」」」」

 

 シャル以外の全員から突っ込みを受けた。


「そんなっ! 僕の存在意義がっ!」


 絶叫する僕。


「会長……寝よな」


 シャルは僕の首の後ろを殴る。

 そのまま暗転する僕。


 

 ま……まあこんな日もあるさ。





 



少々お待ちください。

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