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第十四話 旅。一日目

お待たせしました

「~~~♪」

「サキ姉さん放して下さい」

「腐――……いや」 


 馬車の中で僕はサキ姉さんに抱かれたまま、ため息を付く。

 

「次はわいの番やで~~サキさん」

「腐っ――……分かってる」


 楽しそうにシャルとサキ姉さんは談笑してる。


 うん。

  

 かれこれ一時間は此れである。


 いい加減に解放して欲しいのだが放してくれない。


 諦めて僕は窓の外を見る。


 するともう一台の馬車に居る人化したアカ、ルージュ、クレナイ、シンク、エンが物珍しそうに外の景色を楽しんでいた。


 サラはと言うと向こうの馬車の上で真剣な表情で木の枝を選別、加工していた。


 ……なんで馬車の中じゃなく幌の上で作業してんだ。


 ……後は、枝の加工よりも本当のメインウェポンの槍はどうした。


 ……というか木の枝なんて拾って使えればそれでいいだろうに。


 シスターは此方の、クリスは向こうの御者台に座り馬を扱ってます。

 普通の騎兵のジョブならクリスも持ってるので当然のです。


 だからねクリス。

 此方を睨まないで下さい。

 

 この状況は僕の所為じゃないんだし。


 騎兵のジョブは人化したドラゴン達五人以外全員持っています。

 ですのでクリスにも馬を扱ってもらってます。


 ……でも、どうしてこうなった。(頭を抱え込む)


 



 あの後の事です。


 ククル村の上空から地上に降り立った僕達。


 僕はすぐに通信用マジックアイテムでサキ姉さんに連絡を入れました。

 そしてサキ姉さん達と合流し、僕達は夕方近くに旅の進路を帝都に向け出発しました。


 ……うん。

 なんでその過程の道中で、僕は二人に抱かれてんだろう。

 意味わかんないです。



「シャル。もうそろそろ野営の準備をした方がいいんじゃないの?」

「そうですね……そろそろいいやもしれまへんなあ」


 怪しげな言葉を遣うシャルは考え込みながら答えてくれる。

 

 ……頼みます。


 その間に抱いた僕の髪の匂いを嗅ぐのは止めてください。


「参考までに聞くけど、野営の準備の時間は何を基準に決めているの?」

「他の人は知りませんが……わいは太陽の位置やね」

「というと?」

「テントの設置に薪集め、飲み水や食糧の確保などの時間も必要ですからね」

「保存食とか飲み水は余分に有るけど?」

「それはなるべく最初は使わんのです。いつ何時予定外の事があるか分からんし」


 シャルは片手を広げ肩を竦める。



「でも、飲料水や食糧は捜してたら余分な体力を使うと思うけど?」

「ええ……あくまでも無駄な体力を使わない範囲ですどす」

「ふ~~ん」


 僕は首を傾げる。


「それに周囲の地形を把握しておくのが第一目標なんです。食糧や飲料水はあくまでついでやす」

「なんで?」

「例えば山賊や魔物にに襲われないよう襲撃ポイントを潰しとくとか、最悪の場合は逃げるルートを把握するためや」 

「ふえ~~」

「場合によっては夜中に逃げ出さなければならないですからやね」

「流石ですね」

「まあ経験談ですやね」

「やっぱり失敗した事もあるんだあ」

「言わんといて……会長」



 ◇



 野営の準備にとなった。


 僕は馬の世話と料理の準備。

 具体的に言えば調理道具やお皿を出したりしてました。

 

 サラとクリスは食糧調達(まものたいじ)

 

 シスターとサキ姉さんはテントの設置。

 後は二人は僕の手伝いをしてもらいました。

 

 アカ、ルージュ、クレナイ、シンク、エン達五人のドラゴンの亜人組みは薪拾い。

 

 シャルは護法結界の準備を終えたらお留守番である。

 

 え?

 

 シャルが留守番なのはなんでかって?

 商売と料理以外は不器用だからです。

 

 戦闘系のジョブはまったく持ってないので食糧調達(まものたいじ)は無理。

 騎兵のジョブはあくまでも馬車を操るための物。


 シャルがやった失敗の例。

 

 薪を持ってこようとしたらぶちまける。

 水の確保させようとしたら桶の中身をぶちまける。


 以上です。


 仕方ないので調理の準備が出来るまでは待機です。


 料理だけは出来るという事なので体育座りで待機してもらいました。


「わい、役立たずや~」

 

 ……ヤバイ。


 ……可愛い。


 弱い女の子ってこの異世界で初めて見た。

 今まで見た女性は全員強いからな……。

 正直に言おう。

 萌えます。


 ……それはそうとその姿勢だと僕に下着が見えてましうんだが……。

 

 ……白です……。


 しかもシルク。

 鼻血が出ました。

 

 くうううううっ。

 この無防備な感じがたまらん

 



「何をやっとるがな」


 ビグッ。


 僕の体が恐怖に震えた。

 恐る恐る後ろを振り返る。


「な……何の事かな~~」

 

 突然声を掛けられたので挙動不審になる僕。


「まあいいがな……ほれ獲物だ」


 と言いつつクリスは解体したバーサークベアーをまな板やボールの上に置く。

 

 ……うん。

 突っ込まないぞ。

 

 熟練の冒険者パーティーが連携してようやく倒せるBランクの魔物を単独で倒しても。


「はい? 一人で討伐したの」


 あっ……。


 シャルが呆気に取られていた。

 まあ……いいか。


「食べられそうな野草も採取してきたの」


 クリスの後ろからサラが歩いてくる。

 その両手には野草を持っていた。


「「「「「御主人様~~薪もとってっきたよ」」」」」


 人化したドラゴン達も乾いた薪を大量に持ってきていた。


 さてと……。


 本来なら肉は熟成させたいんだが時間が掛かるので省きます。


「クリスにサラ、サキ姉さん、肉を食いやすいよう切って下さい。今日はバーベキューにしましょう」

「「「おおおおおおっ!」」」


 テンションが上がる三人。


「なあ、会長バーベキューてなんや?」

「それは食べてのお楽しみです」


 シャルの質問に答える僕。


「「「「「御主人様~~私達は?」」」」」


 五人の亜人化したドラゴン達は自分達を指差す。


「遊んでて良いよ~」

「「「「「わ~~い~~♪」」」」」


 五人の亜人したドラゴン達は手を上げて喜ぶ。

 まだ手伝いは出来ませんからね。


「野草を下処理するからシャルは手伝って」

「いいんか?」

「うん」

「よっしゃっ!」


 こうして僕達は晩御飯を作る事にした。


「あのう~カイル~私は~」


 シスターは自分を指差してアピールする。


「お皿でも出していて下さい」

「御手伝いは?」

「それだけです」

「他は~~」

「駄目駄目シスターは何もしないのが一番のお手伝いなの」


 サラの言葉に、そこに居た全員がうなずいた。


「サラちゃん酷っ! うええええええええええんっ!」


 ダッシュで泣きながらその場を離れるシスター。


「えっと――……あれは良いんか?」


 シャルはシスターの走っていった方を指差し僕達に問いかける。


 その場に居た全員が頷いたのは言うまでもない。

 というか折角の食材を怪生物化(りょうり)されるのはねえ……。


 食材や保存食を怪生物にされて餓死てのは笑えないし……。



 ◇



 二時間後。


 陽が暮れ始めた時に晩御飯が出来た。

 

 沸騰させないようにしたスープが大鍋に出来た。

 その横から少し離れた所には野草と切った肉が大皿に盛り付けられてる。

 そして赤々と燃える竈の上に鉄板を敷いて完成。


「完成ですっ!」

「「「「「「「「「「お~~♪」」」」」」」」」


 僕の言葉に全員が喜びの声を上げる。

 その中には、ちゃっかり帰って来たシスターも居た。

 

出来た料理は余った肉片と骨を焼いて出汁を取った野草のスープ。

 メインは肉を切って塩と胡椒を降った物と野草です。

此れを焼きながら食べるのが孤児院流バーベキューです。

 

「会長……これがバーベキューなんか? えらい簡単な料理なんやなあ~~肉や野菜も生やし」

「まあ、厳密には少し違うかも知れないけど、孤児院ではこれです」

「ふえ~~」

「後は好きな野草や肉を焼いて火が通った物から食べるんです」

「ワイルドやあ~~」

「本当はタレをつけて食べるのですが……」

「タレは無いようやけど……」

「タレは作ろうとしたら時間が掛かる上に嵩張るので今回は無し」

「残念やな~~」


 シャルに色々と教える僕。


「「「「「御主人様食べよう~~」」」」」

「はいはい」


 五人の人化したドラゴン達に催促される僕。


 ああ~~そうだ。シャルとサキ姉さんの皿だけ少し隠し味を付けておこう。


 うん。

 

 本当に隠し味だからね。

 

 別に薬物では無いからね。 


 本当に隠し味だからね。(言い訳)

 



 三十分後。


 パタン。

 スタン。


 そんな音を立てながらサキ姉さんとシャルは御飯を食べた後、突然眠ってしまった。


「くか~」

「ZZZ~」

「よし」


 僕はサキ姉さんとシャルの二人が熟睡してるのを確認する。


「シスターにクリス~サキ姉さんとシャルを馬車に運ぶのを手伝ってください」

「おおう~~がな」

「いいわよ」


 呆気に取られていた二人は僕に従いサキとシャルを馬車に運んでくれた。



 ガチッ。


 

 二人を中に入れた後、外から馬車のドアに南京錠をかける僕。

 この南京錠も僕が新製品として作った物です。


「ふう~~」


 僕はというと掻いてもいない汗を拭う。


「「「「「「「「何やってんのっ!?」」」」」」」」

「え? 監禁ですが? 見て分かりませんか?」



「いやいやがなっ! 何をドヤ顔をしてるんだがな」

「そうなの」

「「「「「御主人様っ!」」」」」

「カイルッ!」


 呆気に取られ思考を停止させていたクリス、サラ、アカ、ルージュ、クレナイ、シンク、エン、シスターの八人は慌てて僕を非難する。


「え? セクハラで僕の睡眠が妨害をされないようにしてるんですけど?」

「「「「「「「「……」」」」」」」」


 僕の言葉に絶句する八人。

 なんで?

 ああ~~そうか。

 掌を叩く僕。



「大丈夫です。馬車の中には携帯用トイレもありますし安心ですよ」

「「「「「「「「何考えてるのおおおおおおっ!」」」」」」」」


 


 この後、結局一時間程、八人からお説教されました。


 なんで?


 ……解せぬ。




 PS 次の日サキ姉さんとシャルを八人で説得し、夜間は僕に対してセクハラをしないように決まったのは言うまでもない。

    

 


 ……ほっ。(安堵のため息)

 

 


 

 



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