無口なキミの好きなヒト
おはこんにちばんは。
想いを伝えるところなど遥か遠い導入部分ですが、ネタのメモですから。
ご理解頂ける方のみ、お読みください。こんがりチキン
9/17・ただのネタメモに評価やブックマーク等ありがとうございます! 意外や意外にアクセス数が伸びていて、現金な頭から小ネタばかり浮かんで困っております(笑)
ジュリア・D・フォンテーヌ。
リオネル・バロン。
今のフォンテーヌ王国内でこの2人を知らない人はいない。
片や、この国の第一王女であり王国の至宝とも謳われる美姫。
片や、平民でありながら史上最年少で騎士団へ入団した剣術の天才。
先日、3年にも渡る遠征よりリオネル様が帰還された。今回の遠征にて魔物の首領退治のご活躍により、一代限りの男爵位を賜った。これだけでも王国の民にはビックニュースであるのに、さらに王国の至宝である王女ジュリア様の護衛騎士に任命されたというから、それはもう王国民の興奮は治るところをしらないものである。
今や平民の星と謳われ、その美貌から王女とお似合いと囃し立てる者がいれば、入団当時から目を付けていた貴族たちが我も我もとお見合いを申し込んでいる者もいると聞く。
実際リオネル様は18歳。まだ結婚を急ぐ年ではないが、早いわけでもない。入団してから頭角を現し、あっと言う間に分隊長になると魔物退治へと駆り出されたリオネル様には浮いた噂など1つもなく、未婚の貴族子女たちには好条件の物件であることは間違いない。
さらさらと風に靡く、眩い金色の髪。黒曜石のような瞳。この3年の遠征で入団時よりも成長した身体は細すぎず、しなやかな筋肉に覆われている。しかもまだ成長するだろうその背丈も申し分ない高さだ。あの線の細かった薄い少年と、かのお方が同一人物であるなどと一見しただけではわからない程の成長ぶりだ。
よくぞまあ、大きな怪我もなく立派に成長して帰ってきてくれた、と感慨深いものがこみ上げる。
……などと、現実逃避しているのには理由がある。
「……」
「我が国の至宝、ジュリア第一王女。お初にお目にかかりますは第四部隊が副隊長リオネル・バロンでございます。此度貴女様の専属護衛騎士を任ぜられたこと恐悦至極に存じます。これより身命を賭して貴女様をお守りすることを誓います。……とリオネルは申しております」
「「「「……」」」」
今は第一王女との謁見の場だと言うのに、リオネル様が全く、ひとっことも喋らないお方だったからである。
◇
王国内には様々な噂が飛び交っている。
当然その中には、リオネル様が喋らないという噂も飛び交っていた。だがまさか王族の前でも口を利かないなど考えもしなかったのだ、皆。
「騎士リオネル!王女の御前でその様な甘えが許されるとでも!?改めなさいっ!」
第一王女侍女が一人、ベティー・C・アダン。15歳と侍女の中で一番若く、一つ上のジュリア様を姉と慕う彼女は第一王女崇拝者で、気の強い伯爵令嬢である。
「こらこらベティー。護衛騎士さまにそんなこと言ってはダメですよぉ?」
同じく侍女が一人、ノエリア・M・ブランシャール。こちらは19歳と最年長で、のほほんとした雰囲気とは裏腹にしっかりもののお姉さんでジュリア様からも頼りにされている。けれど、行き遅れと言うと冷気を漂わせるちょっぴり怖い侯爵令嬢である。
「……」
そして何も言えない私こと第一王女が侍女の最後の一人ジジ・V・オベール。何てことはない平凡な18歳であるはずだが、何の因果かジュリア様の侍女となってしまった子爵令嬢である。
「ベティー、おやめなさい」
「ジュリア様っ」
「……リオネル様、専属騎士のお話を受けてくださりありがとうございます。今後はそちらの方とご一緒に護衛についてくださるということかしら?」
「我が王国の至宝を御守り出来るご光栄を拒否する者は王国にいないでしょうとも。恐れながら、通常の護衛任務に私が同行することはありません」
「では公でなければ、お話してくださるのね」
ジュリア様の声が嬉しそうに跳ねる。それはそうだろう。なにせこの専属護衛任務は、ジュリア様が父上であらせられる国王様に熱烈にお願いしたから実現したものだからだ。国王様も1人の父、ということだ。
遠征から帰還して、騎士団以外に聴いたことがないそのお声を聴けるというのは何と特別感があることだろうか。ジュリア様もそれを感じて嬉しくなっているのだろう。
「僭越ながら……、誠に勝手ではありますが、こちらで会話をとって頂くことになります」
そう言ってリオネル様の副官だと言う彼は、紙の束を呈示した。
「ふ、巫山戯るのも大概にしてちょうだい!」
まさかの対応にベティーがキレるのを、止めることも出来ないジュリア様含む私たち。
紙。紙って……。筆談?
それでいいの? 護衛任務って……。
私が衝撃から立ち直れないでいる間にも会話は続いている。
「何と申されようともリオネルが、王女たる貴女様に言葉を発することはありません。国王様にも事情を説明し、ご納得頂けております」
「お父様が…?」
「はい。この会話方法に貴女様がご納得頂けないというならば此度の護衛任務も白紙に戻すとも仰っております」
「まあ!」
かくして、私たちが様々な思いを抱く中ジュリア様が不承不承ながらご理解を示したことで、王国始まって以来無口な護衛騎士が誕生したのである。
告白シーンやラストなどのゴールは既に考えついてるので、あとは道を創っていくだけなんですが……。遅々として進みませぬ。