主人公<ヒロイン
HR終了後の教室。
私はざわついた空気の中とりあえずクラスの知人である、翔也君の元を訪ねた。
「翔也君、私はどうしていればいいですか?」
「あ、凛ちゃん、えっとね、次の授業がそのまま麻友先生の授業だから俺の友達が交渉に行ってるところだからもうちょっと待っててね」
交渉?
何を交渉するような事があるのでしょうか?
私は少し疑問に思いつつも待っている時でした。
「あ、あのさぁ…一ノ瀬さん」
「はい?」
とっさに名前を呼ばれた私は声のする方向を見る。
そこには髪の毛を後ろの後頭部に束ねた生徒、いわゆるポニーテールの女性が立っていた。
「本当に……翔也君とはなんでもないの?」
そう言って不安そうな顔でこちらを見てくる。
「先程言ったとおり同棲しているだけですよ?」
「家族としてだけどね」
私が彼女に対して言うと、食い入るように翔也君が言い足す。
「そう……なんだ」
そう呟いた後、
「なーんだ、なら心配いらないね」
胸をなで下ろした様な仕草をしてポニーテールの彼女は笑顔を見せる。
「えっと、あなたは?」
私は疑問に思っていたことを口にした。
「あ、ごめんごめん、私、三ツ矢彩夏、みんなからはこんな名前だからサイダーって呼ばれてるんだ、これからよろしくね凛ちゃん」
そう言って手を差しのべる三ツ矢さん。
「よろしくお願いします」
私が手を握り返すと。
「なんだなんだーもう転校生と仲良くなったのかサイダーは」
「女子って本当に仲良くなるの早いよなー」
「マサがインキャなだけじゃないの?」
と話しながら私達の周りを三人の生徒が囲むようにしてやって来る。
「なんだよー俺は普通だよな、翔也」
「どうだろうな」
等のやりとりに私がどのように対応するべきかわからずに少し困っていると、
「ちょっと!凛ちゃん引いちゃってんじゃん!」
「マサがグイグイくるからだな」
三ツ矢さんと翔也君が話を広げてくれた。
「ちょ、俺まだそんなにグイグイやってねーべ」
翔也君にマサと呼ばれた人が周りに訴えるように言う。
「初対面でマサのこと引かなかったのは翔也だけじゃない?」
「ちょっとーそりゃねーよー」
場の雰囲気が盛り上がっていく感じがヒシヒシと伝わる。
翔也君は友達が多く皆の中心的存在で流石ですね。
「あ、でも皆にまだ凛ちゃんを紹介してないから皆の事まだわかってないんだろ」
翔也君が困ってる私に助け舟を渡す。
「はい、まだ名前も分かっていないので」
私は正直に意思を伝える。
「だよねー、よし!今から紹介するな」
「まず、そこの眼鏡が……」
「初めまして、俺は渡辺周司、部活はサッカーやってんだ、よろしくな!」
そう言って翔也君と同じ位の眼鏡をかけた男の人が自己紹介をする。
「そんでもってあたしが松山莉奈、サッカー部のマネージャーでシュウと付き合ってまーす」
松山さんがシュウと呼ばれた渡辺さんの腕に抱きつく。
「あーくそ!人前でいちゃつくなリア充め!」
先程からマサと呼ばれいじられている人は少し怒っているみたいだった。
「いいからマサも自己紹介しろよ」
渡辺さんが自己紹介を促す。
「それだからいつまでたっても彼女いないんだぞー」
松山さんも横から首をつっこむ。
「余計なお世話だっつーの、えーと俺は安田将大、見とて通りムードメーカーだからよろしく!」
私に向けてウインクしながらピースをする安田さん。
「あんたの場合、ムードクラッシャーの間違えでしょ」
「うるせーよサイダー!お前も彼氏いないくせに!」
「いーの私には翔也君がいるからー」
ねーと言いながら翔也君の手を取る。
「あはは、とまぁこんな連中だけどよろしく頼むよ、凛ちゃん」
「こちらこそよろしくお願いします」
私は正直に思いを伝え深々とお辞儀をする。
「そんかかしこまらなくたっていーのに、なぁ?」
渡辺さんが周りに問うように言う。
「うーん、まぁまだ距離があるのは当然だろうな」
「そうだ!なら、今日みんなで歓迎パーティーやらない?」
「お、いいなそれ!サイダーナイスアイディア!」
「凛ちゃんは放課後空いてる?」
「いえ、一通り終わってるので空いていますよ」
「よーし、そうと決まればどこでやる?」
安田さんが手をポンとたたき皆に聞く。
「場所的に翔也君の家でいいんじゃない?」
「そんな事言っても家にはあいついるよ?」
そう言って翔也君は大輝の方を指さす。
なにやら三人で賑やかに話しているらしく少し楽しそうにしている。
「別によくね?むしろ和田にも来てもらってムードクラッシャーはクビにしようぜ!」
「ちょ、だから俺はムードメーカーだっていってんだろー」
「あはは、まぁ皆がいいなら構わないよ、後は先に準備する人なんだけど、俺もマサも部活だし、陸上部もサッカー部も普通にあるんだろ?」
「私もシュウも部活」
「陸上部は大会近いしねー」
「お、サイダー大会かー頑張れよー」
「そっかーでもパーティーの主役が働くのはなー」
うーんと考え込む翔也君。
すると少しの間の沈黙を破って、
「なら大輝にも一緒にやらせれば?」
と三ツ矢さんが提案する。
「まぁあいつどうせ暇だろうしいいんじゃね」
翔也君が賛成すると
「いいんじゃない?」
「働かざるもの楽しむべからずって言うもんな」
「マサ、それを言うなら食うべからずだよ」
「よーし!そうと決まればあいつらに頼みに行こうぜ!」
「それなら私が行ってきますね」
私は大輝にまだ挨拶をしていないことに気が付き、ついでにお願いすることにした。
「お、悪ぃな、頼むよ」
と翔也君が手を振る。
私は
「行ってきますね」
とだけ言うと、ワイワイと仲良さそうな三人組の元に向かった。
「あーうん、なんとなくそんな気がしてたよ」
俺は凛から事情を伺った後思わずため息をついていた。
相変わらずややこしい言い方をするやつだ。
「なんだーいきなり泥沼の三角関係になったのかと思ったよー」
「おい、前田、凛はわかるが後一人は誰のことだ」
「やだ、そんなの私の口から言わせないでよ」
ポッと言いながら顔を赤らめる前田。
知ってるよ!どうせお前の脳内では翔也と俺は付き合ってんだろ!絶対に現実にはさせないからな!
「やーだ、付き合ってるんじゃなくて突きあって」
「そこまでだ変態!」
「な、お前一ノ瀬さんと突きあって」
「お前も乗っかってくんじゃねーよ!」
「大輝」
「あ、なんだよ」
「突きあうってなにをですか?」
「お前も純粋に聞き返すんじゃねーよ!」
くそ!今日は厄日か!
前半登場しなかったつけでもまわってきたのかよ!
「はぁ、まぁなんだ、買い物だったら付き合ってやるよ」
俺は話を戻し買い物に付き合うことを約束する。
「よろしくお願いします」
ぺこりと凛が頭を下げるとすぐに翔也達の元に帰っていく。
なんだったんだあいつは……。
まるで嵐みたいだな。