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兄より優れた弟の存在を俺は絶対に認めない  作者: 酒井彼方
嘘よりも不安定な笑顔の存在を俺は絶対に認めない
33/40

覗き<のぞき


「それで?お前は何でここにいるんだ?」


なんとか落ち着きを取り戻した俺は出会い頭にイタズラをかましてきた不届き者に尋ねる。


「えーとね、見覚えある二人がお店の窓をストーカーみたいに覗き見してたら誰だって気になって話しかけると思うよ?」


ふむ、一理ある。


というか俺達は傍から見たらそんなに気色の悪い姿してんのか……、少し気を付けないとだな。


「ご忠告ありがとう、これから警察に通報するところだからご心配なさらず」


「だから通報するのはまだ早いから、もう少し状況を把握しないと駄目だろ」


「ほう、つまりお前は蘭さんがあんなおっさんと付き合ってると言われて信じるのか」


「信じるも何も目の前で少なくとも会ってるところは見てるからそれは事実なんだろう?」


「……なんか面白そうなことになってる?ニーナも一緒にやる!」


俺達の謎なやり取りのどこをどう解釈すれば面白そうなことと思えるのかについては一切分からないがニーナは新しいオモチャを貰った子どものように純粋な目で俺達に言った。


「いいかニーナ、俺達は別に遊んでるわけじゃ」


「よし、とりあえずケータイで俺と通話しながら店の中に入ってあそこの人の側に座るんだ、ニーナは蘭さんと顔を合わせたことがないからスムーズに事が進むだろう」


「は!了解したであります!」


「うむ、検討を祈る」


「落ち着けって、一応はデートなんだから邪魔するのはダメだろう」


そう、いくら心配だからといって蘭さんがデートと言った以上俺たちは邪魔することだけはしてはいけない。


「じゃあ俺たちは一体どうしていればいいって言うんだよ!」


「そうだよ!この溢れ出る思いはどうすればいいのさ!」


拓夢はともかくなんで蘭さんと面識がないニーナがこんなに熱くなってるんだよ……。


「分かったよ、絶対に邪魔をしない約束でだったら外から見ていればいいんじゃないか?」


「は!わかりましたであります!」


ニーナが敬礼の姿勢をとる。


……何一つ向こうの条件は飲んでいないのに浮かれている。扱いが楽で助かったな。


その頃一方ではそんなやりとりなどおかまいなしに拓夢はベストポジションで中を見物していた。


後を追うように横でニーナも覗き込む。

一体俺たちは何をやってるのだろう……。




不意に肩を叩かれてその場で振り返るとそこには凛と翔也が立っていた。時間を確認するとだいぶ経過していたらしい。


「ありがとうございます、お姉ちゃんの様子はどんな感じですか?」


「ああ、ここに到着してからずっと見てるけどお互いに笑いあってるようなところがまだ無いんだよね」


そう言って俺は自分のいた場所を凛に譲る。


「そうですね……あんまり楽しそうには見えないですね」


凛はそう言いながらじーっと店の中を覗き続ける。


まぁなんだ……客観的に見たら三人の男女が店内を覗き見ている……その後でその三人を見守る男二人、完全に通報ものだな……。


「って本当に通報されてたら洒落じゃすまされねーよ!もしかしたら俺たちの今の状況って結構やばくないか?」


今更になってから急に危機感を覚え始める。この感じ……テストまでまだまだ余裕あるから大丈夫だろと勉強せずにいたら気がついたら明日がテストだったかのような感覚だろうか。


「ああ、大丈夫だ許可なら既に取ってあるから」


拓夢がこちらを向きもせずに平然と答える。


「……許可って誰に?」


「さっきお店の人が出てきた時に事情を説明したらOKしてもらった」


「……それでよく許可が降りたな」


これが巷で話題の神対応とでもいうのだろうか……。


「許可があろうとなかろうとやっていることはあまり褒められたことじゃないけどね」


翔也が苦笑しながら言った。


「そう言えば何で翔也がここにいるんだ?」


俺はふと頭に浮かんだ疑問を本人に訪ねてみた。


「部活が終わった後に帰ろうと思ったら凛ちゃんがいて話を聞いてみたら蘭さんがデートって聞いて心配になって見に来たんだよ」


まぁそんな感じだと思ってはいたけどな。あの地図からして凛が一人でここに来れるわけがないから一応感謝しないとだな。


「凛ちゃんちょっと上失礼するよー」


そう言って翔也は凛の頭上から中をのぞきこむ。

そして数秒その場に固まると、


「……ごめん、ちょっと具合悪いから先に帰ってる」


そう言って足早にこの場を去っていく翔也。


「一体なんだったんだろう?」


「わかりません、私が用事を終えて合流してからは普通にしていたのですが……」


ニーナが言った言葉に凛が返事する。

……あの反応は、あの男をあいつは知っている……そう考えるのが一番自然な反応だろう。帰ったら何か聞いてみるのもありか。


「ところでさ凛ちゃんは何の用事があって遅れてきたの?」


拓夢がそのまま店を見ながら凛に尋ねる。


「学校で補習を受けていました」


「へー、それで遅れた……のって補習!?」


「ちょ、ちょっとまって、補習ってテストの結果何点だったのさ」


「……135点」


「平均27点じゃねーか!これ何があっても女子チームに勝ってだだろ!」


「ふっふっふっ、実は私がこっそりとチームの助太刀をしていたのさ」


ユラユラとその場に立ち上がり決めポーズを取るニーナ。


「……因みに何点なんだ?」


「ふ、五教科合計97点!」


「より酷いじゃねーか!」


まさか蘭さん、凛が想像以上に低いから凛の得点無視して勝敗を決めやがったな。罰ゲームが決まる前で助かった。


というか

「じゃあ何で凛より点数が低いお前がここにいるんだ?本当なら今頃ようやく開放されたぐらいじゃないのか?」


「分かりきったことを言わないでよーサボったに決まってるじゃん」


「ダメだこいつ……早くなんとかしないと……」


「……それでは罰ゲームはどうなるのですか?」


「当然無効になるだろ……何も一日メイド服で蘭さんの完全奴隷を押し付けるわけじゃないさ」


まぁ裏を返せばこのままこの事に気が付かなければさせられていたんですけどね。


「これは蘭さんにも要相談なんじゃないのか?」


「ついでに今日のデートのことも聞けば一石二鳥」


「落ち着け変態、どうするんだよ結局」


「それに関してはみんなと相談しないといけませんよね……」


みんながその場で考え込む。ただの一人を除いては。


「よし!プール行こう!プール!」



「…………はい?」


気がつけば三人全員ニーナをのぞき見ていた。

ニーナはその場でいつものように笑うのだった。


「にしし」

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