男性<家族
それからの数日間、俺は凛にそっけない態度をとってしまっていた。
理由なんてものはシンプルで、拓夢のせいで変に意識させられてしまっていたからだろう。
俺が少し避けぎみに接しているのは恐らく凛は気がついている。
初日に嫌われているんじゃないかと心配したほどだ、恐らくそのへんのことには敏感なんだろう。
お互い微妙な空気感の中。
ついにキャンプの当日がやってきた。
うちの学校からキャンプ会場まではそう遠くなく、学校から送迎バスに乗って二十分近く揺られると会場に到着する。
その間は間違いなくどんちゃん騒ぎになるわけで……。
「よっしゃー、プチカラオケ大会じゃー!」
「イエーイ!」
「ルールは簡単、サイダー率いる女子チームと我らが翔也率いる男子チームでカラオケ勝負!ただし、時間の都合上みんな知ってるかつ短い曲縛りで行うからみんな盛り上がっていくぞ!」
バスでは安田を中心にもり上がっていた。
と言ってもその声を荒らげる安田の横にはもちろん翔也がいる。
あくまでも発案は翔也グループなのだろう。
「なんか面倒なことになってんな」
俺の隣に座る拓夢が頭を掻きながら言う。
「お前がこういうもり上がるイベントを面倒なんて言うなんて珍しいな」
「考えてもみろって、女子が童謡歌うんだぞ?そんなので興奮するなんてマニアックにもほどがあるだろ」
「なぜ興奮するしないがお前の盛り上がる判断基準なのか小一時間、問いただしたいんだが」
「あ、でも女子がぞうさん歌うのはいいかな」
「あ?ぞうさん?」
「だってお鼻が長いのよ(意味深)だぞ!」
「そこまででーす」
俺は続きを言おうとする拓夢の口を抑える。
「それを考えるとぞうさん作ったやつは【さくし】だな」
「誰がうまいこと言えと言った」
「ちょっと上手かったべ?」
「それとこれとは話が別だ、とりあえず次言ったら一週間下ネタ禁止だからな」
「な、俺に窒息しろと!」
「なぜそうなる!」
お前にとって下ネタは呼吸と等しいのかよ。
「まぁやっと元気でたみたいだな」
「ん?」
「だってよ、ここ最近のお前なんかびっくりするぐらい元気なくてさ、ちょっと心配したんだぜ?」
「……心配してたのか?」
「おう!親友だろ?」
「そのまま手を握って向き合って!」
突然後ろから声がかかる。
「断る、お前の辞書には自重って言葉は無いのか」
「えへへ」
俺に言われた前田は照れくさそうに頭をおさえる。
別に褒めてないけど黙っておくか、面倒臭いし。
「前田、もうこれで十分だろ」
「しょうがないなーこれで勘弁してあげる」
「二人して何言ってるんだ?」
「賭けしてたのよ」
「そうそう、凛ちゃんに大輝のことどう思ってるか聞いて、そんで凛ちゃんが大輝のこと好きかどうかで賭けてたんだよ」
「……は?」
一瞬頭が働かなかった。
こいつら俺のいないところでなにしてくれてるんだ。
「で、拓夢はどっちに」
俺が結果を聞こうとした時、
「はい、つぎ大輝の番だよ」
サイダーがマイクを差し出しながら俺の横に立っていた。
「えっと、なんで俺?」
咄嗟にサイダーに聞き返す。
「なんでって、くじ引きでアンタの名前が出たからでしょうが、ほら、さっさと向こうで選曲して来なさいよ」
背中を押され無理やり前の方に移動する俺。
仕方がなく曲を選ぶ。
何を選んだかだって?
そんなものぞうさんに決まってるじゃないか。
とまぁそんなこんなで俺達は明るい雰囲気の中進んでいった。
因みにカラオケ対決は凛が歌い、女子チームの圧勝となった。
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【今日の前田さん】
背中を押され去っていく大輝をよそに私はため息をつく。
「残念だな……」
「何が残念なの?」
隣に立っていたサイダーが私の隣に座ってくる。
「いや、ちょっとね」
私は悟られないように話をごまかす。
「凛ちゃんに大輝のこと好きかどうか聞いてたんだよな」
私達が話す前の席から拓夢が話に参加してくる。
「へーそうなんだ、で?どうだったの?」
「それがさー」
「なぁなぁ、凛ちゃん」
「はい?何ですか?」
「凛ちゃんって正直大輝のことどう思ってるの?」
「どうと言われましても……」
「大輝のこと好きなの?」
「好きですよ?大切な家族ですし」
「あーうん、そういうことじゃなくてさ大輝のことは男として見てないわけ?」
「大輝は家族ですよ?」
「というわけで何度聞いても家族ですよの一点張りだったわけ」
「あはは、なんか凛ちゃんらしいね」
「振り回される大輝も見てて面白いけどな」
「まぁそれもそうね、じゃあ私は席に戻るから」
「じゃあなー」
そうして別れた後歌い終わった大輝が戻ってくる。
「なぁさっきの続き教えてくれよ」
「大輝が翔也君とイチャイチャしないと教えない」
「くそ、墓場まで秘密を隠し通すつもりか」
「そこまでイチャイチャしたくないの!?」
「当たり前だアホ」
「は!もしかして拓夢ともう一生を託し合う中にまで」
「いっとらんわ」
とまぁそんなこんなで私達は楽しげなムードの中キャンプ場に着いたのでした。
「私の妄想が見たかった人すみません次こそは必」
「絶対させないからな!」




