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兄より優れた弟の存在を俺は絶対に認めない  作者: 酒井彼方
俺より優秀な弟の存在を俺は絶対に認めない
10/40

感謝<理不尽

 昼休み終了の鐘が鳴る。


 凛の転校から何事も……なくは無いが、数日がたち凛も学校に少しは慣れたようだった。


 今日はもう授業がなく、LHRを残すばかりだったため、クラスのテンションもいつもより若干高い。


 それに、今日のLHRはいつもの進路に関することではなく……。


「はぁーい、今日のLHRは来週の月曜日からのキャンプの班決定を行いまーす、みんな仲良く決めてくださいねー」


 担任の麻友先生が声を大きくして言った。


 そう、うちの学校の二年生は修学旅行の予行を兼ねてキャンプをするらしい。

 横浜見学や東京見学でなく近場の川でキャンプというのだから珍しく学校だ。

 それでもキャンプ場はしっかりしていて、うちの学校の生徒内では恋愛成就の木なんていうともあるらしい、俺には関係の無い話ではあるが。


「言い忘れたけど行動班は三人、就寝班は五人だよー、仲間はずれはダメですよ!」

 麻友先生は頬を膨らませながらぶりっ子独特の甘ったるい空気を漂わせながら言った。


 麻友先生は正確な年齢は教えてくれないものの二十代と本人は言っている。

 正直、三十代で見た目がBBAだったら担任として以前に人として終わってる気もする、その点麻友先生は若々しくて声も高くて、なんと言うか……。


「ロリ体型って言うんだよ」


 いつの間にかに隣にいた拓夢が俺に言った。


「お前、心でも読めんのかよ」


「フ、美少女好きが不可能なことなど、ドナ○ドがケン○ッキー食べる位ありえないのだよ」


「ちょっとその例えは分からないのでスルーさせてもらいますわ」


「まぁ冗談はそのへんにしておいて、独り言ダダ漏れだったぞ」


「な、まじかよ」

 気をつけなければと心に誓い、俺は恐る恐る拓夢に聞いてみた。


「ち、因みになんて言ってた?」


「は?俺が美少女に関係ない話を一々覚えていると思うのか」


「デスヨネー」


「凛が転校してきてうんたらかんたら」


「バッチリ聞こえてんじゃねーか!」

 俺はツッコミを入れつつ頭を叩く。


「そこでラブラブしてるところ悪いんだけどさー」


「ラブラブしとらんわ!」「そこまでラブラブしてない!」


 ん?


 俺は同時に前田に反応したもう一人の方を向く。


「おい、どうした相棒よ、そこまでってどういった意味だ?」


「……ポッ」


「ポッじゃねーよ!ネタだよな!ネタだって言ってくれよぉぉ!」


「そうだよ!大輝は翔也君と突きあってるんだから!」


「収集つかねーーーー!」


 とまぁ、俺達は相変わらず馬鹿やっていた。



「そんで?そろそろ本題に入るぞ」


「本題も何もこの三人でいいだろ」


「異議ないよー」


「さっきまでのコントはなんだったんだよ……」


「ほら、お約束ってやつだよ」


「そんなお約束はいらん」


 俺はこれから下校しか残されていないとはいえ疲れはてるのはごめんだったため、切り上げるタイミングを見計らっている時。


「拓夢ー、就寝班俺達と一緒でいいっしょ?」


 向こうから拓夢を呼ぶ声がする。


 このおちゃらけた声は間違いなく翔也達のグループから発せられた物だった。


「別にいいよーどうせ俺ら余るんだろうし、いいべ?大輝」


「別にかまわねーよ」

 俺も拓夢も、片手間で返事を返す。


「おっしゃ、俺達はもうこれで終わりだな、大富豪やろーぜ!」


 向こうは勝手に話を切り上げ挙句、勝手にトランプまで、始めだした。


 とはいえ、俺達もこれで決まったため、後は放課の時間をただ待つだけと……。


「そういえば前田は決まってるのか?」


「うん、女子の間なら就寝班が決まるのなんて一瞬だからねー」


「そんなもんなのか」


 というわけで本格的にやることがなく、ひたすらさっきまでの感じで駄弁っていた。



 こうして、授業が終わり、放課後。


「さて、帰るか」

 俺はそうつぶやき、教室から出ようとすると俺の目の前を一人の女子生徒が進行方向を塞ぐ。


「はぁ、今度はなんのようだ?」

 俺は見慣れた天然少女の顔を見ながら言った。


「部活動見学一緒に来てもらえませんか?」


「部活見学?なんでまた?」


「私、ようやく、この学校にも慣れてきて余裕が出来てきたので青春の一ページとして部活動に取り組もうかなと思いまして」


「あーうん動機はわかった、そんでもって本題だ、なんで俺を誘うんだ?」


「私と仲が良くて部活動に未所属なのは大輝だけなんですよ」


 たしかに、俺は部活動はやっていない。

 中学時代俺はバリバリの運動部であるバスケ部に所属していた。

 もちろん、そこでも普通よりは出来ていてギリギリスタメン入りするほど頑張っていた。

 それは俺が転校する前の話。

 俺達兄弟が、一ノ瀬家に居候することになり、転校してきた学校で俺は当然バスケ部を選んだ。


 すると、転校前の学校では部活をやっていなかった翔也が唐突にバスケ部に入ってきたのだ。

 まぁ正直、前の学校でもスタメンをとっていたし、翔也なんて目じゃないと思っていた。当然だがあの頃の俺は頭がおかしかった。

 あっという間に翔也に追い抜かれ、ヘタレ兄貴の完成であった。


 それ以降、部活という活動自体に少しのめんどくささを感じでしまい、部活は入っていないのだった。


「俺は部活はやらねーよ」

 少し嫌なことを思い出してしまった俺は少し冷たい態度を取ってしまった。


「いえ、一緒にきて回ってもらうだけでいいんです、一人だと少し恥ずかしいので」


「はぁ、まぁそのくらいだったら」


「引き受けてくれますか?」


「校内で迷子になられても困るしな」


「迷子の件は謝ったじゃないですか」

 少ししょんぼりする凛。


「冗談だよ、感謝しろよ?、ほら最初はどこに行くんだ」


 俺は渋々、凛と一緒に教室を後にした。



「で、俺達はなんで校庭にいるわけ?」


 校庭ではサッカー部、陸上部、野球部、ハンドボール部が練習をしている。


 もちろん女子もいるわけなのだが……


「お前、運動できるの?」

 素朴な疑問を口にする。


「何をおっしゃるんですか出来るわけがないじゃないですか」


 デスヨネー。

 いつもより敬語が深くなってるってことは相当苦手なんだろうな。


「じゃあなんで俺達は校庭に出てきてるんだよ」


「部活動には運動しないのに運動部に所属している人がいるじゃないですか」


「マネージャーか、ん?それだと俺はなんていって見学してればいいんだよ」


「あ、凛ちゃんと大輝じゃん、おーい!」


 陸上トラックの方から声がかかる。


「三ツ矢さーん見学に来ましたよー」

 凛も小さいながらも遠くのサイダーに、対して声をかける。


 おかげさまで俺の質問はスルーされてしまったが。


「見学って大輝も?」

 走ってこちらまで来たサイダーは俺を見ながら言った。


「はい、私はマネージャーとしてですが大輝は選手です」


「おい、何勝手に走らせようとしてるんだ」


「ちょうど良かった男子が少し足らなくて月末の合同練習で男子リレーが出来そうになかったんだよ頼んだよ大輝」


「は?丁重にお断りします」


「丁重にお断りし返します」


「大丈夫ですよ、仮にも翔也君のお、お兄ちゃんなんですから」


 うわー。

 多分この子弟って言おうとして無理やり変えてきたよ。


 天然に気遣いされるって俺はどんだけ惨めなんだよ……。


「距離は?」


「二百メートルぐらい」


「はぁ、負けても知らんぞ」


「よし、決定!こういうのは何事も経験だって」

 ポンとサイダーに肩を叩かれる。


 なんてめんどくさいことに巻き込まれるはめになったんだ……。



「因みにお前は?」


「私は月末は用事がありますので、頑張ってくださいね、大輝」



 理不尽とはこのことである。

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