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継承者の旅  作者: kking2
第1章
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砂浜にて

「………ということだ。」


サファイアからこれまでの事情を聞く。おおかた想像していた通りだが……。

普通、魔族はそこまで強い権力志向はもってはいないはず。どこか、人間臭い行動だな。


「とりあえず、やることを済ませておこう。」


「やること?」


「覚悟はしたと思うが。君が精霊を持ち出したことで、不利益を被った連中は黙っているようなタマではない。仕返しが始まる前に、残っている者は救っておきたい。」


「それは…。それはありがたいが、何故そんなことをする?」


何故、ね。まあ、こちらの都合で物事を進めておいた方がいいし、それに…。


「よく言うだろ?人には親切にしておけってね。」


彼女に笑いかける。あからさまに疑っている表情をしているが…。

タダより高いものは無い、とも言うし、これ以上何か質問されても困る。急ぐとするか。

とりあえず転移が完了すれば、ある程度の安全は確保できるしね。


「時間も無いし、こっちに来てくれるかな?」


そういってサファイアを呼ぶ。彼女の額に手を当て、生き残っている人々の気配を探る。

全部で14人か。どうやら、まだ始末されていなかったようだが…。

各個体を補足し、転移魔法陣を発動させる。


「こちらも移動するとしよう。サクラ、こっちにおいで。」


サファイアの魔力核に封印されていた精霊と遊んでいたサクラを呼ぶ。精霊にも気に入られているようだ。追いかけっこをしている。体力がないのでよたよたしているが…。ひと段落したら何か狩るか。追いかけっこの勢いそのまま、こっちに走ってくるのを抱きかかえる。


「それじゃあ、移動することにしよう。」


魔法陣が発動し、服が風に揺れる。あとが辿れないように、一定時間後に発動する魔力拡散の術式を組み上げる。

忘れ物が無いことを確認し、サファイアを抱き寄せ、転移した。


---------


転移先に選んだのは、淡路島ほどの大きさの無人島。それなりに強力な魔物もいる島だが、いろいろと都合がいい。

転移する先に選んだ場所は、白い砂浜。遠浅で風が気持ち良い。


先に転移させておいた14人もここに集めてある。何が起きたか戸惑っているようなので、サファイアに説明させる。まず、彼女が生きていたことに驚き、そしてその髪の色に驚き、最後にこちらを見て驚いている。魔力核の創造に、呪いの解除、連れているのがダークエルフと…。


1人の壮年の男性が近づいてくる。


「初めまして。レーニスと申します。今回、我々の呪いを解除して頂きありがとうございました。」


「礼には及びません。私の都合で行ったことですからね。」


「お話はお嬢様からお伺いしました。今は、サファイア様、でしたかな。」


「まあ、成り行きでね。責任もって后にするので、そこは安心して頂いていいですよ。」


ニコニコしながら答える。彼は何者かな?

そんなことを考えながら、目の前の男性を眺めてみる。


最初からそうするつもりだったのか、レーニスの雰囲気が変わる。

魔力が一瞬にして高まり、こちらへの開放に向けて手が上げられようとして―


「そこで止めておいたほうが良い。悪いが男には手加減しない性分でね。死ぬことになるよ。」


「なるほど。」


そこで、攻撃的な魔力が止まり、緊張が緩和していく。こちらを伺っていた方々も安心したようだ。

「あなたと向き合って、生き残るのは中々に厳しいようだ。」


今の一連の動作でも分かるが。間違いなく、彼がこの集団で最強の使い手だ。

サファイアを追っていた4人程度なら苦戦せずに殺せるだけの力量はあるはずだが。

疑問に思ったので、尋ねてみる。


「あなたが居れば、このような事態は防げたのでは?」


「そうあるべきだったのですがね。お嬢様に、滅びの炎を埋め込まれた時点で、我々としてはできることも限られてしまいまして。なんとか、お嬢様を逃がすだけで精一杯でした。私も闘いたかったのですが、残った者達も人質に取られまして…。後は―」


それにしても、ますます魔族らしくない行動だな。まあ今は劣後してもいいか。

必要な状況になったら、サファイアを連れて真相解明に出向くとしよう。


「何の話をしている?」


そんなことを考えていると、サファイアがこちらに寄ってくる。


「サファイアをいつ后にするか、という話だよ。」


「な!?」


「キサキって?」


そこにサクラが割って入ってくる。両手を挙げていたので、抱き寄せて肩に乗せる。

ここが気に入っているのか、肩に乗っている時はニコニコしている。

后とは何か、についてサクラにヒソヒソと説明する。


サクラが驚いてサファイアのほうを見る。

サファイアがこっちを睨んでくる。反応が面白い。


「まだ仇を討っていない。」


ぼそっと呟く。仇か。


「それは、機会を見てからだな。」


「何故だ!?」


案の定、噛み付いてくる。気持ちはよく分かるが。闇雲に突っ込んでいってもまず勝ち目は無い。

というよりも、この思考の方が、魔族っぽくて笑える。

どう納得させるか…。


「こんな言葉がある。『歳月は忍耐を教える。先が短いもの程、長く待つことができる』」


「なにが言いたい。」


「機会を待てって事さ。レーニスさんの許可が出たら殴りこみに行くとしよう。それまで、その日のために刃を問いでおくことだ。それに、私の考えている通りなら、遅かれ早かれ激突することになる。」


そこまで言って、一息つく。いったん彼女からの視線を切って、周りを見渡す。


「この話はもうおしまい。これからの事を説明することにするよ。」


そういって、今後のことについて説明に取り掛かった。

読んで頂きありがとうございました。

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