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継承者の旅  作者: kking2
第1章
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出会い

転移した先で見えたのは、小川だった。


川か。

外に出て水浴びをする日が来るとは。

本当に、人生何があるか。

久しぶりに、約450年ぶりに見る川に、子供の頃に無邪気にはしゃいでいた記憶が甦る。


新しくなった自分の体、その体の動きを確かめるように、そして水の感触を思い出すように、体に水をかける。


これまで体についた穢れを落とすように、全身を川の中に沈める。

一呼吸おいてから川から上がり、

魔法を使い体を乾かし、服を着ていく。


とりあえず、今後をどうするか。

対話を完了した今、知識として知らないことは殆ど無いようだ。

それなのに…。

初代…。あきらかに嫌がらせだな。

知らないことを知識から引き出せないようになっている。


救済措置として、単語を聞けばそれに関連する内容が、実際にこの目で見れば、それが何か、そしてそれに関連する知識が自動的に頭の中に開示されるようにはなっているが…。


地球に居たときのインターネットと同じか。

膨大な量の情報。たしかに存在しているが、検索できないとたどり着くことができない。


『全てを知ってしまってはつまらないだろ?』か。

まあ、一理あるが…。


この世界、魔法が普通に存在しており、複数の属性があるようだ。

土・水・火・風・光・闇・空・時の8属性、それに特殊な術として、魔術と妖術がある。

私はどうやら全ての属性と、魔術と妖術も使えるようだ。


属性としては土属性が使える人が最も多く、時の属性持ちが最も少ない。


光・闇・空・時の4つは、現在失われた属性といわれており、使えるものは本当に少ないようだ。

使えたとしてもこの4つの属性は魔力が一定量以上ないと、そもそも発動すらせず、発動したとしても制御するのはもっと困難な属性らしい。

慣れるまでは大変そうだな。


そして、魔術と妖術については、現在仕えるのはごく一握りの特殊な一族だけになっていると。

一族以外では、まれに遺伝的に適正があるものがごくわずかに生まれてくるようだ。


唐突に頭の中に、ついさっき会った8代目の継承者の声が響く。


『この声を聞いているということは、歴代の継承者との対話が成功したようだね。まずはおめでとうと伝えておく。

私には…、成し遂げることができなかったことだから。

新しく継承者となった君に、1つだけ強制をさせてもらった。それは…。』


先代からの突然のメッセージの内容は、とある一族の保護だった。

今私が立っている場所の近くに、彼が保護していた一族の集落がある。

その集落が居る森林全体に結界を張っていたが、継承の儀式と共に結界が消えるので、その結界を張りなおすと言うものだ。


その言葉を聞いたため、結界に関する膨大な知識のロックが外れ、関連する知識が頭の中に流れ込んでくる。

ただ、何故その一族を保護していたかとか、目の前に広がるこの大森林の持つ意味と言ったような踏み込んだ内容は一切分からなかった。


依頼内容自体は、今の私からすれば特に難易度の高いものではなかった。

着る服を能力を使い作り出し、

着替えをしながら先代からの依頼を実行する。


マントを羽織り、どうしようかと考えていると、裾に何か触れた気がした。


視線を落とす。

その先には、6才ほどの子供の女の子が居た。


「なんだ、お前は?」


「………」


返事が返ってこない。この子供、口がきけないのか?

こちらを見上げて口を動かそうとしている。

その右手は、マントの裾を掴んだままだ。


「………」


「こんなところに1人でどうしたのかな?」


相変わらず裾を引っ張ってくるその手を振り払うため、マントを引き寄せる。


「あ………。」


「ここで会ったのも何かの縁か。しょうがない。

私が保護してやろう。」


無視して置いていこうかと思っていたのに、出た言葉に自分でも驚いた。

初めての出会いでいきなり見捨てるのは、自分のなかで何か引っかかるものがあったのだろうか。

言ってしまったからにはしょうがない。

その子供をマントの中に居れ、肩に抱き抱える。これまでの経験からだろうか、体が震えている。


それに長期間水浴びもしてなかったのか、体が臭い。

それにいろいろ汚れている。これはダメだな。


「おい。一緒に来るなら、常に清潔にしておけ。今回は特別に風呂に入れてやろう。」


能力を使い、即席の五右衛門風呂を作る。

風呂に必要なものを出せないか、魔法関連の知識を探っていく。

と、ちょうどよいものがあったので、試してみることにした。


足元に赤い魔法陣が出現する。

熱湯を作り出し、ちょうどよい湯加減を整える。

まあ、自然に囲まれての朝風呂も悪くない。


驚いて固まっているソイツを抱き寄せ、来ているものを脱がす。

この年齢で、この傷。それにこの褐色の肌。

間違いない。ココルク族。昔ならいざ知らず、今の時代によく生きてたな…。


「少し傷が痛むかもしれないが、我慢しろ。」


そう言い聞かせ、震える体を抱きかかえつつ、釜に入る。

ざぶん、そんな音が聞こえてきそうな入り方。声にならない声を上げている。この傷ならしみるだろうな。

腕の中で震えている。


「我慢、できるね?」


抵抗しても無意味と悟ったのか、とりあえず我慢する気にはなったようだ。

相変わらず震えているがな…。


風呂から出て、改めて体の傷を見る。どう考えても、自然にできた傷ではないな。何かから逃げてきた傷か。

そんなことを思いながら魔法で体の傷を一気に治療していく。

私の能力で作った服を着せる。


驚いて固まっているちびを無視し、とりあえずしゃべれるようにするため、魔力をこめようとした時、何かがこちらに来る気配がした。


-------


こっちに向かっているのが4人。先行が3人、後ろに1人か。

この魔力量からして、それなりの使い手のようだが。この緊張感。久しぶりだね。


さて、私を見つけてどのような行動にでるかな。

それなりに好戦的なようだが。


まあ、戦闘になるならなるで。

こちらの世界のやり方に慣れておくとするか。


どうやら、こちらにも気づいたようだ。

これはこちらに下りてくるな。


「こんにちは。」


できるだけ普通を装い、こちらに降りてきた者達に声を掛ける。


「おいおい。あの裏切り者を追ってたら、思わぬものを見つけたぜ。ココルクのガキだ。こいつはいい。俺様のペットにしてやるぜ。おい、人間のガキ。そのガキをこっちに寄こせ。そしたら、ここは見逃してやる。」


なるほど。自信がある者らしく、それなりに強気だね。

見たところ、さしたる特徴もないようだが…。

そう思ってみていると、右の手の甲に紋が出ているのが目に入る。


この紋は…。


「おい、聞いてるのか人間。」


「君達、もしかしてリプカ一族か?」


私のその言葉に全員の魔力が高まるのが分かる。戦闘態勢に入るまでの早さ、魔力の練度といい、一族の中でもそれなりの者達のようだ。


そして、首にしがみつきながら、ちびが震えているのが分かる。どうやら、この4人組と彼女にはなんらかのつながりがあるのかな?


集落を襲ったといったところか。それにしても裏切り者とはいったい??

思考の海に入りそうなところを、後方から追いついてきた者から声がかかる。


「なぜ人間がその名前を知っている?貴様いったい何者だ!?」


「名乗るならそちらからが礼儀なのでは?

私は君達には特に興味もありませんが。」


「なめた口を。後悔しながら死んで逝け。脆弱な人間が。そのココルク族のガキともども灰になれ。」


そう言うやいなや、炎が放たれる。


ほぉ。この威力を無詠唱とは。

私に炎が着弾すると、大きな火柱が上がる。


自分の能力を隠蔽するために作り出した遮断結界のため、今の私は、魔力が微量に存在する普通の人間に見えているはずだ。


着弾を確認し、この場を離れようとするリプカ族。


いきなりの攻撃とは。こちらに対する敵意は十分とみなし、反撃させてもらおう。


「どこに行くのかな?いきなり攻撃してきたお礼がまだ済んでいないぞ。」


「馬鹿な。貴様いったいな」


最後までしゃべり終わる前に、こちらが放った炎が直撃し、灰も残さずに4人のリプカ族を消し去る。

なんでもそうだが、要らないものは消し去るに限る。

それに…。


近くに同族が居るな。とりあえず、事情を聞いておくか。

それにしても、この魔力。こいつ死にかけてないか?


魔力を辿り、居場所を特定する。魔法陣を発動させ、ちびを抱きかかえた。

転移で移動した先には、瀕死の状態で横たわる、1人の女性が居た。



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