蜜柑
「お前、手を離せよ。」
「嫌。アンタこそ手を離しなさいよ。」
こたつに入り、ゆったりとテレビを眺めていた男女が喧嘩を繰り広げていた。こたつに入って寝ようとしていたのに、それのせいで夢心地が覚めて少し不機嫌なボク。
「言っておくが、俺が先に触ったんだからな。」
「私が先に触ったのよ。」
うぐぐ~っと睨み合う彼ら。ボクからしてみれば、何ともまぁ小さい事で喧嘩しているんだろうと馬鹿馬鹿しく思う。彼らが取り合っているもの――――それは、最後の一つとなってしまった蜜柑であった。
「お前、もう5個も食ったんだからいいだろ?!」
「私は、まだ食べたいの!!アンタも結構食べていた癖によく言うわ!!」
(――――このままだといつまで経っても、寝ることが出来なさそう。)
そう思ったから、行動を起こすことした。
2人の手が置いてある蜜柑を手に入れる為に、まず手を伸ばして爪を立てる!
「いてっ!」
「きゃっ!」
よし、手を離した。その隙にボクは蜜柑を取る。
「あっ、こら!」
「ちょっ、持っていかないでよ!!」
ギャーギャーと賑やかな声を無視して、ボクは蜜柑を持ってママの所へ急ぐ。
「あら?蜜柑を持って何処にいくの?」
台所にいたママはボクが蜜柑を持ってるのに驚いた顔をする。ボクは台所に入り、持っていた蜜柑をママにグイグイと押し付けると
「私にくれるの?ふふっ、ありがとう。」
そう言って蜜柑を受け取り、頭を撫でてくれた。
その直後、蜜柑の取り合いをしていた2人が台所に入って来た。
「何で母さんに蜜柑をやったんだよ!」
「ふつう私達のどっちかでしょ?!」
そうは言われても、2人のどっちかにあげたら煩くなりそうだったし。ボクは、そっぽを向いて彼らから視線を外す。
「私にって、持ってきてくれたのよリリちゃんが。まぁ、大方貴方達が蜜柑を取り合って、リリちゃんの寝る所でわーわーと煩くしていたのでしょう?」
「うぐっ……。」
「うぅ……。」
やっぱりママはすぐに分かってくれる。だから好き。
「リリちゃん、煩くしないようにこの子達に言っておくから戻って寝てていいよ?」
本当?うるさくされたから、さっきから眠いんだ。
「じゃあ、またね。」
フラフラとなりながら、こたつのあるリビングへと向かう。
「ニャー……。」
(うん、疲れた。今度こそ静かに寝られればいいなぁ…。)
こたつの中に入り込み、丸まる。これがボクの冬の過ごし方で、たまに起きる蜜柑の取り合いの仲裁はこたつに入る為と割り切って、そろそろ寝ることにしよう。
おやすみなさぁい……。




