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第8章 生徒会(子世代の学生生活)

第8章 

 

 ガイヤール公爵とザンムット公爵が、他の側近達と共に将来に向かって着々と善後策を取り始めてから三年後……

 

 十三歳になった第一王子は、側近達と共に学院に入学した。

 王族は入学すると、従来なら自動的に生徒会に入ることになるのが通例だった。

 ところが、第一王子シャルール=コーギラスはそれを拒否した。

 王族以外の生徒会役員には入学試験の上位成績者が入るのが慣例になっていたのだが、第一王子は次席合格者のベティス=モンターレと一緒に役員をすることを嫌だと主張したからだ。

 

「我が国最高峰の王立学院の生徒会に、モンターレ子爵令嬢は相応しくない!」

 

 当初第一王子はこう主張した。そして別の者を代わりに入れるようにと命じた。しかし

 

「彼女が相応しくないのなら、その婚約者である僕も相応しくないので、生徒会には入りません」

 

 と主席合格者のフランドル=ガイヤール公爵令息が言い出した。

 すると、それまで王太子に何一つ反抗してこなった、お淑やかで従順だった婚約者であるララーティーナ=ザンムット公爵令嬢までこう言った。

 

「それなら私も相応しくありませんわね。私、ベティス様とは幼なじみで親友ですもの。殿下のお手伝いができなくてごめんなさい」


 シャルール王子は元々真面目に生徒会活動をする気などはなかった。ただ生徒会長だったというステータスがあれば、いづれ王太子になった際に格好が付くと思っていただけだ。

 仕事は優秀な自分の側近候補のフランドル達がやればいいと。

 それに婚約者のララーティーナも自分が命じれば、自分のフォローをしてくれるだろうと。

 

 自分は華やかで美しい婚約者や、やはり美形の他の生徒会メンバーに囲まれ、彼らを堪能しながらお茶でも飲んでいればいいのだと。

 それなのに、その美しい絵画のような景色をぶち壊すようなモンターレ子爵令嬢の存在が許せなかったのだ。

 ところが、子爵令嬢を外すと、自分と並びうる美の持ち主である、ララーティーナ公女とフランドル公子までが参加しないと宣った。 

 

(彼らに続く成績上位者は……駄目だ。子爵令嬢とどっこいどっこいの連中ばかりじゃないか! 

 いくら先輩方がそれなりに美形が揃っているとはいえ、とてもそんな生徒会室の中で優雅なお茶は楽しめない)

 

 シャルール王子は母親である王妃になんとかして欲しいと訴えたが、さすがの王妃でもそれは無理な話だった。

 王家には王立学院に口を挟む権限などなかったからだ。

 そのため、結局シャルール王子の方が生徒会入りを断念せざるを得なくなったのだ。

 そのことに一番安堵したのは、生徒会の先輩方だったに違いない。期待していた三人が無事に入ってくれることになって。

 しかも頭痛の種になりそうだった人物が入らずに済んだのだから。


 先輩方も全員、第一王子の側近候補として既に色々な仕事を任されていた。

 そのため、この生徒会活動をしている時だけが、彼のお守りしなくて済む、心穏やかに過ごせる貴重な時間だったのだ。

 それを死守することができて本当によかったと、皆一様にホッとしたのだった。

 

 その後生徒会の役員達は、せっせと通常の生徒会の仕事をしつつ、将来の国造りに対しても侃々諤々と議論し合った。それは彼らにとって、とても楽しく有意義な時間であった。

 その一年後にフランドル公子、さらに二年後にララーティーナ公女が他国へ留学してしまった後も、新たに優秀な第二王子や、公子の従兄弟らが加わったことで、生徒会は身分差なしで活発な意見交換ができる、そんな貴重な場であり続けた。

 


 まあそれでも、時々は論争が白熱し過ぎて険悪なムードになることもあった。

 しかし、個性の強いメンバーの性格を全て把握し、それを的確に指導し、まとめ上げるリーダーがいたことで、彼らが仲違いすることはなかった。

 そのリーダーこそ、地味子のベティス=モンターレ子爵令嬢だった。

 

 彼女は炯眼(けいがん)(物事の本質をを見抜ける力)の持ち主だった。

 しかし、別にその力を使っていたわけではない。その力がなくても、ベティス嬢は頭がかなり良かったし、普通に洞察力に優れていた。

 彼女はその人の言動、そして家族構成や育った環境などを把握することで、ある程度個々の人物像を見抜けることができたのだ。

 生徒会メンバー達はそんなベティス嬢を信頼し、好意を寄せていた。

 しかし、言葉使いにだけはかなり注意を払っていた。

 それは彼女に対して、異性としての好意があると捉えられるような発言をしてしまうと、フランドル公爵令息からどんな目に遭わされるかわからないからだ。 

 もちろん、それは悪意に対しも適応される。そしてそこには、たとえ仲間だろうと先輩だろうと、お目こぼしなんてものはなかったのだった。

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