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現状:能力

 翌朝である。

 起きたら実は夢だったんだよね、ということはなく、ついでにチートないのも夢だったんだよね、とか言わないかなーとか思って試してみた。

 朝一で言ったね。火を灯せって。なんならベッドごと燃やし尽くすつもりの怨念を込めて言ってみたけど何にも起きなかった。


 幻惑の瞳を試してみたいが、クレア含めた俺の使用人たちは基本的に効果が薄いだろう。幻惑の瞳って俺のつたない記憶によれば意のままに操れるだったはずだ。

 まあそんなわけで俺は一人になりたいな~とか思いながらも、昨日のクレアの説明を受けたら渋々納得せざる得なく、クレアと一緒にいい実験台いないのかなーと探していたわけだ。

 と、そんなことを考えていると、突然に声がかかる。


「アリシア様も昨日のご様子からですとさぞ自信があるのでしょう」


 あ?

 誰だ、この俺に安い挑発をする男は。

 いいだろう、煽り耐性0のこの俺が相手をしてやるぜ!


「……えーっと、誰でしたっけ」


 うん、覚えてない。

 なんか昨日話したっけ?

 男の顔っていちいち覚えてないんだよな。


「……バルデス家当主、リカルド・デ・バルデスだ」


 家名とか言われてもな。

 そもそもこの湿気たツラなんざ覚える意味もない。

 それならリリィの顔を正確に描けるくらい見てた方がよっぽどましだ。


「昨日、アリシア様を魔族に差し出そうとしているといった……」

「ああ、そいつか」


 ピクリ、とリカルドの頬が吊り上がる。

 やべ、聞こえてたか?

 だがすぐにリカルドのヤツは冷ややかな笑みを浮かべた。

 なるほどな、これが貴族のどろどろヌメヌメを生き抜いてきた百戦錬磨の顔ってやつか。


「アリシア様、あなたのような無能な者が王位に就いている限り、この国に未来はありませんよ。むしろ、私たちが手を尽くさなければ、国が滅びるのは時間の問題でしょうね」


 ほぉ、言うじゃないか。

 こいつはここで言い負かしてやりたい……待てよ、リカルドならもしや『幻惑の瞳』のいいターゲットじゃないか。

 ふ、ここは俺の冷静かつ大人な対応で黙っておきつつ、『幻惑の瞳』を使ってみようじゃないか。

 どうやって使うのかわからないが、まあ瞳ってくらいだしとりあえずリカルドの目でも見て「去れ」とでも唱えておくか。


「……まあ楽しみにしていますよ。せいぜい昨日の発言が無駄にならないよう努力ください、女王陛下」


 あれ、本当に背を向けて去っていくぞ。

 もしかして本当に『幻惑の瞳』が効いたってのか?

 ふ、ふふふはははは!

 やはり俺にもチート能力は備わっていたか。そうに決まってる。俺がこの危機的状況で転生したのには理由があるのだ。

 そう、この国を……救う!

 俺は裏から操る影の勇者として君臨するのだ。

 まずは手始めにリカルド……そして魔族とつながっている貴族をあぶり出し、俺の配下に加えてやる。

 これで俺は一生安泰だ。追放系令嬢? なんだっけそれ、おいしいんだっけ? やっぱり男(?)たるもの影の最強を目指すべきだよな!

 俺のサクセスストーリー、ここから始まる!


「本当に……嫌な奴ですね、リカルドは」

「え? ああ、そうだね」

「アリシア様……本当に気を付けてください。私が思っている以上の何かが見え隠れします」

「わかってるよ」


 適当に返事をしながら俺は考える。

 やっぱりリカルドにもうちょっと『幻惑の瞳』を使っておきたいんだよな。

 どうもうちの優秀な闇情報屋クレアさんによれば、リカルドはかなり過激派に近い。

 つまり、リカルドを押さえておけば芋づる式に俺の逆スパイもしくは奴隷にできるってわけだ。

 

「うーん、やはりもう少しリカルドに近づきたいところだな……」

「な!?」

「よし、リカルドを追いかけ……」


 なんか肩から手が生えていて痛いんだが。

 異世界特有の病か?

 いや違う。わかってる。クレアの手だ。


「何を言っているのですか、アリシア様?」

「えーっと……?」


 なんか怒ってるこれ?

 共感力0の俺でもわかる。

 ちなみに共感力は0でも鈍感力は100だ。


「先ほどおっしゃいましたよね、危険だと」

「でも……」

「でもではありません! 行きますよ!」


 クレアに引っ張られる形で俺はその場を離れたが、心の中ではまだリカルドのことが引っかかっていた。


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